その火遊び危険につき～ガチで惚れたら火傷した模様～

２０

「何で泣いている？」

「うん……。ごめん」

　別に謝らなくてもいいが、突然泣き出されたら俺が何かしてしまったのかとそわそわしてしまうではないか。

「寂しいのか？」

「俺って誰にも必要とされていないのかなぁ……」

　いや、九条くじょうさんがいるんじゃないのか？

　……と思ったけれど、それは何だか非常に不愉快な気持ちになってしまって、何故不愉快なんだろうかと再び自分に問うてみる。

　別に真夜まやが九条さんとどうこうなっていようが俺には関係のない話だし、深入りするつもりも毛頭ない。

（けれど、腹が立って仕方がないのは何故だ……）

「お前には九条さんがいるだろう……？」

　結局、我慢できなくて九条さんのことを訊いてしまう程度には俺も余裕がなくて、二人の関係性をはっきりさせて欲しかったのかもしれない。

「九条さんは……違うから」

「違うって何が？」

　真夜が少しだけ俯いて「九条さんとの関係は確かに大切だけど……それだけじゃ埋まらなくて、宇大うたくんの思ってるような想いとはちょっと違うんだ」とポツンと呟いた。

（ちょっと違うとはどういう意味だ？　おおむねは愛人で正解ってわけか……？）

　……と、やはり真夜が九条さんとの関係は曖昧に濁すから、俺はますますイライラを募らせてしまうのは何故だろう。

　真夜が再び俺の肩に頭を載せて――。

「九条さんが俺に向けてくれる愛情は種類が違うから。俺が纏わりついても何だかんだ身体以外でも付き合ってくれるのは……宇大くんだけだった。だから、火遊びでいいから一時でも俺を見てくれないかな。ずっとなんて望まないから……」

　なんて言いながらまたぐすりと鼻を啜すすり始めるから。

　その音が鼓膜に到達したと同時――。

「俺を居場所にすればいいだろう」

　言葉と一緒に、真夜の唇を己のそれで塞いでいた。