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「へぇー。じゃあ宇大うたちゃん、その売りやってた子のことが心配になっちゃったんだ」

「まぁ……危なっかしいなって感じですかね」

 四十一歳になる亜美あみさんは元ナンバーワンキャバクラ嬢で現在はアパレルブランド『プリメア』を起業している俺の古くからの太客ふときゃくで、もう何年もの付き合いになる。

 今日も個室のVIPルームでヘルプのホストは付けず俺と二人きりで既に一本十五万のシャンパン『ドンペリニヨン・ロゼ』を五本と十万円のフルーツ盛りを入れてくれている。

 これでも一応ナンバースリーなので順繰りテーブルを周らなければならないが、VIPルームの客には少し長い時間滞在する。

 俺も三十を越えてそろそろ独立を考えていることもあって、亜美さんは客であり姉であり良き理解者のような存在だ。

「宇大ちゃんがそんなに誰かのこと気に掛けるの珍しいじゃん? 客?」

「いや……客ではないんですけど、まだ二十歳のくせに色々抱えているみたいで妙に庇護欲をそそられるというか……。放っておけなくなってしまったんですよね」

「二十歳かぁ……若い身空でねぇ。ま、宇大ちゃんは後輩からも慕われる面倒見のいい子だから、心配なら見守ってあげたら良いんじゃない?」

(――見守る、か)

 確かに俺に出来るのは見守ることだけだし、真夜まやの心も身体も満たしてやることは出来ないだろう。

「自分を大切にしていない節があるんですよ」

「私が夜職やってた時も色々抱えてる子はたくさん見てきたけれど……理解者がいなくて道踏み外した子もたくさんいたよ。私だって宇大ちゃんに癒されてなかったら荒んでたかもしれないし。理解者になってあげなよ?」

「そうですね……。俺に何が出来るかわからないですけど、懐いてくれているうちは面倒見てやりたいかなと思います」

 亜美さんが俺の背中をバシンッと叩いて「頑張れ! 宇大ちゃん!」なんて激励してくるから、俺は(中からは外の様子が見えるようになっている扉から)接客する真夜にちらりと視線を流した。

 ――あんな笑顔の裏によどんだ感情を持っていたなんてな……。
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