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 胸の突起をつまんだまま固まってしまった俺に真夜まやが熱っぽい視線を流し目で寄越しながら「もっと触って? 宇大うたくん……」などとぬかしながら俺の手をホールドした。

「なっ……違う。これは違う。誤解だ。そこに山があったから登った的な心理で触っているにすぎない」

 ……といいながら指を離そうとしたら、「とかなんとか言っちゃって……。痩せ我慢はよくないよ? 宇大くんは絶対に素質あると思うんだよね?」

(ゲ、ゲイの素質⁉ ない! ありえん!)

「馬鹿を言うな。俺は男になど興味はない。真っ当な人間なんだ」

「それってゲイは真っ当な人間じゃないっていう差別発言?」

「べ、別に偏見も差別もしているつもりはないが……。俺は真夜を抱くことは出来ん。ありあまる性欲は他所よそで発散してくれ」

「ね、宇大くん……ベッド行こ?」

(コイツ、人の話聞いてんのか?)

 言いながら、そこらの女よりも綺麗な顔が上目遣いで見つめてくる様は、店のキャストのノンケたちももしかしたら堕ちるのかもしれない。

 しれないが――。

(俺は絶対に堕ちん! 今日ここに真夜を入れたのだって、俺は絶対にコイツには屈しないという意思表示だ!)

「ベッドには一人で行け。生憎あいにく一人が長いんで客用の布団などない。お前にベッドを貸してやる。俺はソファで寝る」

「折角泊りに来たのに……相手にしてくれないわけ?」

「話になら付き合ってやるが身体には付き合えんぞ」

 真夜がねた口調で「ビールもう一本」と強請ねだってくるので、やっと解放された指が離れる摩擦にも感じ入ったのか再び「んっ……」と吐息をこぼされて。

(待て! 待て待て! 何故腰にクるんだ俺!)
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