その火遊び危険につき~ガチで惚れたら火傷した模様~

ちろる

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 自慢じゃないが俺――明空みよく 宇大うた――は二十二歳でこの世界に飛び込んでから三十一歳になるこの歳まで(ナンバーワンになったことはないが)不動のナンバーツーとして君臨していた。

 それを真夜まやに三ヶ月で追い越され、あまつさえ何故か目をつけられて、毎日のように誘惑されている。

 しかし、言い方は悪いが真夜はビッチだ。

 ナンバーワンの時也ときやさんに迫ったという噂も耳にしたし、マネージャーの中川なかがわさん(こちらも男)と出来ているという噂もあれば、オーナーの九条くじょうさん(やっぱり男)の愛人だという噂まである。

 要するにおおっぴろげにゲイを公表していて店内のあちらこちらのキャストやバーテンダー、ボーイたちをその色香で誘惑しているらしい。

 それがついに俺にも飛び火しているわけである。

 真夜いわく、『この仕事はハッキリ客って割り切れるからゲイやバイも多いよ』という話なのだが、果たしてそれはどうなのだろうか?と思う。

 実際に俺はゲイでもバイでもないが客は客と割り切っているし、アフターや同伴はしない主義で通しているが、こうしてナンバースリーには留まれている。

 俺は誓ってノンケなので真夜がいくら迫ってこようと、そしてそこらの女よりも綺麗な顔をしているからと言ってそう簡単になびくわけがない。

 ないのだが――。

「ねぇ、宇大くん。今日アフター入ってる?」

 先輩ホストを〝くん〟呼びしてくるのもタメ口なのもどうなのだろうか?とも思うが、真夜の奔放ほんぽうさにはもうこの三ヶ月で慣れてしまったのでわざわざ指摘するのも面倒だ。

「俺はアフターも同伴もしない主義なんだ」

「ほんと? 俺と一緒じゃん。じゃあこの後、宇大くんの部屋に遊びに行っていい?」

「は? 何故だ?」

「うーん、色仕掛け?」

「ありえん。家になど入れるか」

 真夜がつまらなさそうに唇を尖らせた。

(なんだ……その可愛らしい顔は……。やめろ……やめてくれ……。もしかしたら俺もほだされかけているんじゃないか?)

 だが、何度でも言うが俺は真っ当なストレートなので男など相手に出来ん。

「えー! いいじゃーん! 泊めてよー! あ、もしかして泊めたら欲望がセーブ出来なくなっちゃうとか? 宇大くん実は俺に秘めたる想いがあったりする?」

「ふ、ふざけるな! 欲望などあるか!」

「じゃあ泊めてよ。でしょ?」

 いや、お前とは十一も歳が離れている上にホストの経歴から言っても先輩と後輩であって決して男友達なんて気心の知れた仲ではないと思うのだが――。

 しかし、ここで引き下がってこちらが真夜を意識しているのかと思われるのもしゃくだ。

 俺はどんな色仕掛けをされても男に堕ちることはないのだと思い知らせるいい機会なのかもしれないな。

「わかった。俺が男など興味がないということ、その色仕掛けとやらに屈しないところを見せてやろうじゃないか」

 真夜が面白そうに口の端を吊り上げたかと思えば、邪気のない瞳をクリクリと光らせて見つめてくるので若干どきりとしてしまう。

「本当? やったー!」

(俺は屈しないぞ……今晩で俺のことは諦めさせてやる)
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