81 / 85
81
しおりを挟む***
それから一年が経って――。
俺は時也さんのマンションで一緒に暮らしながら、フリーのモデルに転向して、本格的に多岐に渡ってこの道一本でやっていくことを決めた。
時也さんはホストを引退して起業し、今はエステサロン『グリティア』の代表取締役を務めている。
「聖ちゃんさぁ……」
情交の後、シャワーを浴びて時也さんとベッドでくっついていたら、彼は俺の右頬を撫でながら艶っぽく笑んで見せた。
時也さんは、ホストを辞めて昼職になってからというもの、神秘的な白髪だった髪の毛を、今はトーンを落としたグレーアッシュにしていて、グレーの瞳と相まってますます魅力的になったと思う。
「なんですか? 時也さん」
胸に顔を埋めて、時也さんの愛用するスパイシーで、それでいてフルーティでもある、甘い毒のような彼にピッタリの香水の匂いを鼻腔に吸い込む。
「今日さ、来年……『グリティア』が都内に新たに三店舗展開されることが決まったんだ」
「本当ですか?」
「ああ、聖ちゃんの内助の功のお陰ってわけ。そんでさ、訊きてぇんだけど、〝疫病神〟ってなんだっけか?」
その言葉に俺はパチパチと瞳を見開いていると、シャワーを浴びてほこほこと温かい耳朶を食まれるから、まだ鎮火したばかりで微かに火種を残す身体がびくっと震える。
(そう……俺は疫病神だったんだ……)
「見事にさ、俺、疫病神追い払っちまったみてぇだな? 聖ちゃんと結納してから、幸せなことばっかだ。疫病神とか言ってた卑屈ちゃんは今は何を考えてる?」
「卑屈ちゃんって……事実だったんですから。でも――」
「……でも? 今は?」
(時也さんと一緒にいるようになって俺は……)
22
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
ホスト異世界へ行く
REON
ファンタジー
「勇者になってこの世界をお救いください」
え?勇者?
「なりたくない( ˙-˙ )スンッ」
☆★☆★☆
同伴する為に客と待ち合わせしていたら異世界へ!
国王のおっさんから「勇者になって魔王の討伐を」と、異世界系の王道展開だったけど……俺、勇者じゃないんですけど!?なに“うっかり”で召喚してくれちゃってんの!?
しかも元の世界へは帰れないと来た。
よし、分かった。
じゃあ俺はおっさんのヒモになる!
銀髪銀目の異世界ホスト。
勇者じゃないのに勇者よりも特殊な容姿と特殊恩恵を持つこの男。
この男が召喚されたのは本当に“うっかり”だったのか。
人誑しで情緒不安定。
モフモフ大好きで自由人で女子供にはちょっぴり弱い。
そんな特殊イケメンホストが巻きおこす、笑いあり(?)涙あり(?)の異世界ライフ!
※注意※
パンセクシャル(全性愛)ハーレムです。
可愛い女の子をはべらせる普通のハーレムストーリーと思って読むと痛い目をみますのでご注意ください。笑
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる