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『病院から連絡がありました。今日、十七時に一般病棟の個室に移れるそうです。聖ちゃんのことは病院に伝えてあるからよろしくね♡』
朝一で時也さんのお母さんからそんなメッセージが届いたのはあれから数週間後で、美聖も退院し、モデル業に復帰していた。
今日は『プリメア』でのユニセックスな新作を俺たち姉弟が飾るための撮影が昼から入っていて、俺は自室から出るなり慌ててリビングへ向かった。
「美聖!」
「聖、おはよう。どうしたの?」
「今日時也さん一般病棟に移れるって! 撮影が終わったら一緒にお見舞いに行こう!」
「本当!? 時也に会えるんだ!」
嬉々とした美聖に俺も嬉しくなって、ほこほこと幸せに浸っていると、今日はたまたま家にいた父さんが「おはよう、聖」と微笑んだ。
「時也さんに会えるんだな。早く目が覚めるといいな。聖も美聖も早く時也さんに会いたいだろう」
「私の推しパワーで時也目覚めないかなぁ」
「俺の恋人パワーで目覚めるかも?」
子首を傾げたら美聖はやれやれと溜め息を吐いて「はいはい、ラブラブでよろしいことー」と森山さんの作ってくれた朝食の続きを始めた。
(時也さん……やっとまた顔が見られるんだ……)
たとえすぐに目が覚めてくれなくても、これからは毎日顔を見に行けると思うだけで俺の心ははしゃぐように踊った。
***
「美聖! 聖!」
フィッテングルームで美聖と二人、衣装に着替えてカメラマンとの打ち合わせに待機していると、亜美さんが俺たちに声を掛けてきた。
「亜美さん、お疲れ様です!」
にこにこと挨拶すると亜美さんが、「なぁに? 聖なんかいいことでもあった? やけにご機嫌じゃない」と俺の顔を覗き込んでくる。
「今日、時也が一般病棟に移れるんですよ。朝から聖はしゃいじゃって」
と、美聖がやれやれと返事をすると亜美さんがぱぁっと華やいだように笑って「マジ!? やったじゃん!」と背中を叩いてきた。
「亜美さん。亜美さんのお陰で俺、時也さんのことちゃんと信じるって思えたんです。本当にありがとうございます。きっとすぐに起きてくれますよね?」
言ったら、亜美さんは「覇王は恋人を置いていくような真似はしないって。信じなさい。愛のパワーで目覚める!」と豪快に笑った。
(早く時也さんに会いたい……)
『病院から連絡がありました。今日、十七時に一般病棟の個室に移れるそうです。聖ちゃんのことは病院に伝えてあるからよろしくね♡』
朝一で時也さんのお母さんからそんなメッセージが届いたのはあれから数週間後で、美聖も退院し、モデル業に復帰していた。
今日は『プリメア』でのユニセックスな新作を俺たち姉弟が飾るための撮影が昼から入っていて、俺は自室から出るなり慌ててリビングへ向かった。
「美聖!」
「聖、おはよう。どうしたの?」
「今日時也さん一般病棟に移れるって! 撮影が終わったら一緒にお見舞いに行こう!」
「本当!? 時也に会えるんだ!」
嬉々とした美聖に俺も嬉しくなって、ほこほこと幸せに浸っていると、今日はたまたま家にいた父さんが「おはよう、聖」と微笑んだ。
「時也さんに会えるんだな。早く目が覚めるといいな。聖も美聖も早く時也さんに会いたいだろう」
「私の推しパワーで時也目覚めないかなぁ」
「俺の恋人パワーで目覚めるかも?」
子首を傾げたら美聖はやれやれと溜め息を吐いて「はいはい、ラブラブでよろしいことー」と森山さんの作ってくれた朝食の続きを始めた。
(時也さん……やっとまた顔が見られるんだ……)
たとえすぐに目が覚めてくれなくても、これからは毎日顔を見に行けると思うだけで俺の心ははしゃぐように踊った。
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「美聖! 聖!」
フィッテングルームで美聖と二人、衣装に着替えてカメラマンとの打ち合わせに待機していると、亜美さんが俺たちに声を掛けてきた。
「亜美さん、お疲れ様です!」
にこにこと挨拶すると亜美さんが、「なぁに? 聖なんかいいことでもあった? やけにご機嫌じゃない」と俺の顔を覗き込んでくる。
「今日、時也が一般病棟に移れるんですよ。朝から聖はしゃいじゃって」
と、美聖がやれやれと返事をすると亜美さんがぱぁっと華やいだように笑って「マジ!? やったじゃん!」と背中を叩いてきた。
「亜美さん。亜美さんのお陰で俺、時也さんのことちゃんと信じるって思えたんです。本当にありがとうございます。きっとすぐに起きてくれますよね?」
言ったら、亜美さんは「覇王は恋人を置いていくような真似はしないって。信じなさい。愛のパワーで目覚める!」と豪快に笑った。
(早く時也さんに会いたい……)
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