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突然知らない女性に〝時也のハニー〟だなんて言われて声も出せずに戸惑っていると、電話の向こうの女性が一つ溜め息を吐いた。
『初めまして、時也の母です。時也から、『俺に何かあったらハニーに電話して心配すんなって伝えて』って、あなたの電話番号を知らされていたの。まぁ、母親の私でも手に負えないどうしようもない放蕩息子だから、ハニーが男だったとしても全然驚かないけど。あなたのお名前は?』
(時也さんのお母さん……?)
「あ、えっと……神谷 聖です。初めまして。時也さんにはお世話になっていて……その、なんて言うか……男ですみません」
何を言っていいものかわからず戸惑っていると、時也さんのお母さんは電話の向こうで豪快に笑った。
『あー、もうね、時也に関しては何があっても驚かないから心配しないで? 超愛してるハニーちゃんっていう前情報だけで、あの子の真剣さはわかるから。私、これから夜の便で新千歳空港から東京に向かいます。明日、時也の病院で会えないかしら? ICUにいるみたいだけど、家族の同意があれば面会出来るみたいなの。一緒にあの子に会ってくれる?』
「……良いんですか? 俺――」
『〝自称疫病神ちゃん〟らしいけど……。あの子がね、死ぬわけがないの。なーんにも心配してないから、気軽におばさんと茶しばく感覚で会いに来てくれたらいいから。十三時でいいかしら?』
「……は、はい。大丈夫です。あの、病院のどこで?」
『あー、そうね。ロビーでいい? 真っ赤なスカーフの美魔女だからすぐにわかるわ。じゃあ、明日よろしくね? 息子のハニーちゃん』
それだけ告げられて電話が切れてしまったので(なんというかさすが時也さんのお母さん……)と呆然としてしまった。
「聖、誰からだったんだ?」
「……時也さんの、お母さん……。明日俺に時也さんに会いに来いって……」
言ったら、父さんは再び俺の肩に手を置いて「時也さんなら絶対にお前を幸せにしてくれる。信じろ」と囁いた。
「……うん」
少しだけ声が震えたのは、何か彼が無事を予言してくれているような力強さを感じて涙が出そうになってしまったからだけど、唇は笑みの形を刻んだ。
『初めまして、時也の母です。時也から、『俺に何かあったらハニーに電話して心配すんなって伝えて』って、あなたの電話番号を知らされていたの。まぁ、母親の私でも手に負えないどうしようもない放蕩息子だから、ハニーが男だったとしても全然驚かないけど。あなたのお名前は?』
(時也さんのお母さん……?)
「あ、えっと……神谷 聖です。初めまして。時也さんにはお世話になっていて……その、なんて言うか……男ですみません」
何を言っていいものかわからず戸惑っていると、時也さんのお母さんは電話の向こうで豪快に笑った。
『あー、もうね、時也に関しては何があっても驚かないから心配しないで? 超愛してるハニーちゃんっていう前情報だけで、あの子の真剣さはわかるから。私、これから夜の便で新千歳空港から東京に向かいます。明日、時也の病院で会えないかしら? ICUにいるみたいだけど、家族の同意があれば面会出来るみたいなの。一緒にあの子に会ってくれる?』
「……良いんですか? 俺――」
『〝自称疫病神ちゃん〟らしいけど……。あの子がね、死ぬわけがないの。なーんにも心配してないから、気軽におばさんと茶しばく感覚で会いに来てくれたらいいから。十三時でいいかしら?』
「……は、はい。大丈夫です。あの、病院のどこで?」
『あー、そうね。ロビーでいい? 真っ赤なスカーフの美魔女だからすぐにわかるわ。じゃあ、明日よろしくね? 息子のハニーちゃん』
それだけ告げられて電話が切れてしまったので(なんというかさすが時也さんのお母さん……)と呆然としてしまった。
「聖、誰からだったんだ?」
「……時也さんの、お母さん……。明日俺に時也さんに会いに来いって……」
言ったら、父さんは再び俺の肩に手を置いて「時也さんなら絶対にお前を幸せにしてくれる。信じろ」と囁いた。
「……うん」
少しだけ声が震えたのは、何か彼が無事を予言してくれているような力強さを感じて涙が出そうになってしまったからだけど、唇は笑みの形を刻んだ。
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