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「……父さん」

 病院に着くと美聖みさとはICUに入っているらしく面会時間は二十時までで、俺はロビーで父さんと合流した。

「……ああ、ひじり。久しぶりだな」

 父さんは仕事で家に帰らない日がほとんどなので、最後に会ったのは一ヶ月以上前だろうか、その面差しは憔悴しているように見えた。

「美聖の容態は……? 大丈夫なんだよね?」

「市販の咳止め薬を大量に睡眠薬とアルコールで飲んだみたいで……胃洗浄したんだが、発見が遅かったらしくてな。意識が戻らない。目覚めない可能性もあるし、目覚めても臓器に後遺症が残るかもしれないらしい」

「……そんな……」

「――なぁ、聖……」

 父さんは俺の瞳をじっと覗き込んで吐息のように声を滑らせた。

時也ときやさん……って人を聖と美聖は奪い合いをしていたのか? また……聖の周りで不幸が起こっているのか? 美聖の遺書に『時也の心は聖から私が連れていく』と書いてあった。時也さんは誰なんだ? 聖の恋人なのか?」

「時也さんは……美聖が熱心に貢いでたホストで……。美聖に紹介されて俺も会って……恋人になった。美聖とはそれっきりこじれたままだったんだけど……時也さんが美聖に俺との関係を優先する発言をしてたらしくて……。そしたらショックを受けてたって聞いて以来会ってなかったんだけど……まさかこんなことになるなんて……。ごめん、父さん。また俺が疫病神だったせいだ……」

 父さんは力無く笑って「……そうか」と項垂れてしまったので、俺は自分のしてしまったことの罪の大きさを痛感させられて立ちすくんでしまった。

「……父さん……俺が死んだらみんな幸せになれるかな?」

「縁起でもないことを言うのはやめてくれ。美聖だけでもどうしたらいいのかわからないのに、お前にまで死なれたら父さんは一生後悔する。仕事の忙しさにかまけて美聖と聖を森山もりやまさんに任せっきりで……美聖がホストに入り浸ってることすら知らなかったんだから……。父さんがちゃんとお前たちに目をかけてやれば、こんなことにはならなかったかもしれない……」

「違うよ、悪いのは全部俺だよ……。もう誰も愛さないって決めたのに……ごめん」

(ごめん、父さん、美聖……時也さん――)
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