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ひじりくん、わざわざ来てくれてありがとうね? 時也さんから聞いたの?」

「いや、俺の姉が時也ときやさんの客で……姉から聞いたんだ。病院は時也さんに訊いたんだけど」

 そう返事をすると、真夜まやくんはこの間会った時のブラウンの瞳から一変して(カラーコンタクトだったのか……)吸い込まれそうな黒曜石の瞳を白黒させた。

「……え? それって聖くんのお姉さんって時也さんと……関係持ってるってこと……? え? 本当に?」

 真夜くんが不思議がるのももっともだろう。

 まさか、姉弟で男の奪い合いをしているなんて聞いたら、(まして美聖みさとは時也さんと身体の関係あり……)驚いて当然だ。

「……うん。実は時也さんと知り合ったのは姉に『ネロック』に連れていかれたのが切欠きっかけで。でも俺たちが恋人になってから敵対しまくり。複雑なんだよね……」

「他の女と寝てるだけでも嫌なのにお姉さんとも……。聖くんが可哀想ー! 時也さんってば本当に罪作りだなぁ。大丈夫? 聖くん」

「大丈夫……かな? 多分。時也さんは俺のことを恋人だと言ってくれてるし、どんな女と寝ても心は俺のものって言ってくれた。――ただ……」

 そこで言葉を切ると、真夜くんは「うん?」と心配そうに顔を覗き込んでくるから、ここに来た目的を話さなきゃ……と重い口を開く。

「真夜くんが怪我したの……俺のせいなんだ」

「は? なんで聖くんのせいなの? 客同士のトラブルに巻き込まれただけだよ?」

「うん……。事故は事故なんだけど、俺が時也さんのそばにいるからこんな事故が起こったんだよね……」

 真夜くんは意味がわからないといった風に「なんで聖くんが時也さんのそばにいたら俺に事故が起こるわけ?」と目をまたたかせた。

「俺、疫病神なんだ」

 ポツンと呟いたら真夜くんはオウム返しのように「疫病神……?」と身を乗り出してくるから、時也さんのことを相談出来るのは真夜くんだけで――。

「俺と付き合う人はみんな不幸になるんだ。過去に二人殺してる。俺のせいで。――だから、俺はもう恋愛しちゃいけないはずなのに時也さんのことが好きになっちゃって……。しかも嫉妬心だらけ。正直、時也さんを不幸にするのも、俺が苦しむのも辛い。……真夜くんなら、時也さんから離れる?」

 問うと、真夜くんは眉根を寄せて俺を見つめた。

「なんで? そんな悲しいこと言わないでよ。不幸になんて時也さんはそんなことさせるような人じゃない。時也さんのこと好きなんでしょ? もっとワガママ言ってよくない? 俺がもし聖くんだったら――ホストなんか辞めてって言う」

(俺は、そんな大それたことを言える勇気がない……)            
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