29 / 85
29
しおりを挟む
「時也さん、お疲れ様です」
朝五時丁度に時也さんのマンションに迎えられるなり挨拶すると、玄関の土間で靴も脱がずに抱きしめられた。
「聖ちゃん。ごめんな?」
「……え? 何がですか?」
俺が真夜くんに不幸を招いてごめんなさいと謝りにきたはずなのに、時也さんに開口一番に謝罪されてしまって瞠目してしまう。
「俺、忙しくて聖ちゃんと会えなくて不安にさせちまったよな……。聖ちゃんをこんな風に朝呼び出すの申し訳ねぇーって思って我慢してたんだけど、離れるとか言い出すくらい不安にさせてたなんて思わなかった。マジでごめん」
「ち、違います! 離れるって言ったのは俺のせいで真夜くんが怪我して……時也さんの周りを不幸にしてる疫病神だって思ったからで……。時也さんと会えないことが不安とかじゃなくて……」
――ああ、俺は嘘吐きだ。
本当は時也さんを俺だけのものにするにはどうしたらいいか……そんなどす黒い感情にまみれていただなんて言ったら、時也さんは迷惑なだけだろう。
(俺は物分りのいい従順な存在だと思われたい。時也さんに醜い感情を知られたくない……)
「なぁ、聖ちゃん。真夜の事故は聖ちゃんのせいじゃねぇよ。たまたまだ。変な思い込みはやめろ。そんなんで俺のそばから離れるとか言わないでくれ。玄関でいきなり悪いな。まぁ、上がってくれ」
時也さんはもう眠る時間なのに、俺のせいで迷惑をかけているのなら申し訳ないと思いつつ、甘い何かを期待している自分に気が付いて溜め息が出る。
ソファに並んで座ると時也さんは俺の肩に頭を載せて「ふぅー」と小さく吐息を落とすから、(時也さん、疲れてるんだ……)と心配になってしまう。
「なんかさ、色々あるよな。折角聖ちゃんと求め合えたのに全然会えねぇし、女抱くのも疲れてきた。聖ちゃんと出会うまで苦痛じゃなかった……つーか、当たり前の使命だったのに最近はホント駄目だ」
「時也さん……俺たちって恋人……ではないですよね?」
恐る恐る訊ねると時也さんは「……は?」とわけがわからないと言った声を出すので、俺はたちまち怖くなってしまった。
(やっぱ、違うんだ――)
朝五時丁度に時也さんのマンションに迎えられるなり挨拶すると、玄関の土間で靴も脱がずに抱きしめられた。
「聖ちゃん。ごめんな?」
「……え? 何がですか?」
俺が真夜くんに不幸を招いてごめんなさいと謝りにきたはずなのに、時也さんに開口一番に謝罪されてしまって瞠目してしまう。
「俺、忙しくて聖ちゃんと会えなくて不安にさせちまったよな……。聖ちゃんをこんな風に朝呼び出すの申し訳ねぇーって思って我慢してたんだけど、離れるとか言い出すくらい不安にさせてたなんて思わなかった。マジでごめん」
「ち、違います! 離れるって言ったのは俺のせいで真夜くんが怪我して……時也さんの周りを不幸にしてる疫病神だって思ったからで……。時也さんと会えないことが不安とかじゃなくて……」
――ああ、俺は嘘吐きだ。
本当は時也さんを俺だけのものにするにはどうしたらいいか……そんなどす黒い感情にまみれていただなんて言ったら、時也さんは迷惑なだけだろう。
(俺は物分りのいい従順な存在だと思われたい。時也さんに醜い感情を知られたくない……)
「なぁ、聖ちゃん。真夜の事故は聖ちゃんのせいじゃねぇよ。たまたまだ。変な思い込みはやめろ。そんなんで俺のそばから離れるとか言わないでくれ。玄関でいきなり悪いな。まぁ、上がってくれ」
時也さんはもう眠る時間なのに、俺のせいで迷惑をかけているのなら申し訳ないと思いつつ、甘い何かを期待している自分に気が付いて溜め息が出る。
ソファに並んで座ると時也さんは俺の肩に頭を載せて「ふぅー」と小さく吐息を落とすから、(時也さん、疲れてるんだ……)と心配になってしまう。
「なんかさ、色々あるよな。折角聖ちゃんと求め合えたのに全然会えねぇし、女抱くのも疲れてきた。聖ちゃんと出会うまで苦痛じゃなかった……つーか、当たり前の使命だったのに最近はホント駄目だ」
「時也さん……俺たちって恋人……ではないですよね?」
恐る恐る訊ねると時也さんは「……は?」とわけがわからないと言った声を出すので、俺はたちまち怖くなってしまった。
(やっぱ、違うんだ――)
23
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
溺れる鳥〜ノンケだった彼女もちDDが友人の彼氏とセッ×スしたことでハマっていく話〜
ルシーアンナ
BL
ノンケだった彼女もちDD×ゲイな友人の彼氏が、セックスしたことでハマっていく話。
ノンケ攻め,ゲイ受け,大学生,NTR,浮気,全編通して倫理観なし
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
九年セフレ
三雲久遠
BL
在宅でウェブデザインの仕事をしているゲイの緒方は、大学のサークル仲間だった新堂と、もう九年セフレの関係を続けていた。
元々ノンケの新堂。男同士で、いつかは必ず終わりがくる。
分かっているから、別れの言葉は言わないでほしい。
また来ると、その一言を最後にしてくれたらいい。
そしてついに、新堂が結婚すると言い出す。
(ムーンライトノベルズにて完結済み。
こちらで再掲載に当たり改稿しております。
13話から途中の展開を変えています。)
最愛の幼馴染みに大事な××を奪われました。
月夜野繭
BL
昔から片想いをしていた幼馴染みと、初めてセックスした。ずっと抑えてきた欲望に負けて夢中で抱いた。そして翌朝、彼は部屋からいなくなっていた。俺たちはもう、幼馴染みどころか親友ですらなくなってしまったのだ。
――そう覚悟していたのに、なぜあいつのほうから連絡が来るんだ? しかも、一緒に出かけたい場所があるって!?
DK×DKのこじらせ両片想いラブ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
※R18シーンには★印を付けています。
※他サイトにも掲載しています。
※2022年8月、改稿してタイトルを変更しました(旧題:俺の純情を返せ ~初恋の幼馴染みが小悪魔だった件~)。
一年前の忘れ物
花房ジュリー
BL
ゲイであることを隠している大学生の玲。今は、バイト先の男性上司と密かに交際中だ。ある時、アメリカ人のアレンとひょんなきっかけで出会い、なぜか料理交換を始めるようになる。いつも自分に自信を持たせてくれるアレンに、次第に惹かれていく玲。そんな折、恋人はいるのかとアレンに聞かれる。ゲイだと知られまいと、ノーと答えたところ、いきなりアレンにキスをされ!?
※kindle化したものの再公開です(kindle販売は終了しています)。内容は、以前こちらに掲載していたものと変更はありません。
【完結】そっといかせて欲しいのに
遊佐ミチル
BL
「セックスが仕事だったから」
余命宣告を受けた夜、霧島零(21)はひったくりに合い、エイト(21)と名乗る男に助けられる。
彼は東京大寒波の日なのになぜか、半袖姿。そして、今日、刑務所を出所してきたばかりだと嘘とも本気とも付かない口調で零に言う。
どうしても人恋しい状況だった零はエイトを家に招き入れる。
過去を軽く語り始めたエイトは、仕事でセックスをしていたと零に告げる。
そして、つけっぱなしのテレビでは白昼堂々と民家を襲い金品を奪う日本各地で頻発している広域強盗犯のニュースが延々と流れていて……。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる