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「面白ぇじゃん。俺、そういうの俄然燃えるんだよな。聖ちゃんが疫病神なんだったら、俺が守護神になってやるよ。女は数しれず泣かせてきたけど……男を泣かすにはどうしたら良いんだ? 教えてくれるか?」
「……後悔しますよ? 俺は時也さんを殺したくない」
時也さんは何も言わなかった。
ただ、全てを覚悟したのだと言わんばかりに熱く唇をさらい、荒々しいのに濃やかな舌の動きは、激しく求められているのだと刻みつけられているようで、閉じたまぶたが感極まりそうになってぴくぴく震える。
胸の奥にまで触られた気がした――。
「もし、俺が死ぬんだとしたら……聖ちゃんも一緒に連れていってやる。俺は絶対に聖ちゃんを置いていったりしない。物は試しで俺に賭けてみないか? きっと悪いようにはならない」
「――時也さんは、男を抱けるんですか?」
「衝撃の一目惚れと、衝撃の導きとくりゃあ、性別なんて関係ねぇよ。聖ちゃんが欲しい。欲しがったら駄目か? 無理矢理はしたくない。もしOKなら、姫のキスをくれないか? 秒で火が点くから」
――俺に委ねるなんて卑怯だ。
一目で魅了された時也さんが、疫病神の俺を求めてくれるなんて、そんな甘美な誘惑をどうすれば断れるって言うんだろう。
「……本当に、後悔しないでくださいね?」
言って、自ら時也さんの唇に己のそれを重ねたら、すぐに体重を乗せた深いキスに呑み込まれて、意識がそちらに散っているうちにニットの裾から手が忍び込んできてゆっくり腰を撫でられる。
今、この手を拒めばまだ間に合う――。
けれど、肌を這う手のひらがやけに冷たく感じるのは、俺の身体が先に火を点し熱くなっているからだと自覚してしまったら、もう後はなし崩しだった。
「時也さんが……欲しい……」
「くれてやるよ。聖ちゃんが受け止めきれねぇくらい、アイツを守れなかった分まで守ってやる。疫病神だなんて二度と言うな」
(この人のことを、信じてみたい――)
「……後悔しますよ? 俺は時也さんを殺したくない」
時也さんは何も言わなかった。
ただ、全てを覚悟したのだと言わんばかりに熱く唇をさらい、荒々しいのに濃やかな舌の動きは、激しく求められているのだと刻みつけられているようで、閉じたまぶたが感極まりそうになってぴくぴく震える。
胸の奥にまで触られた気がした――。
「もし、俺が死ぬんだとしたら……聖ちゃんも一緒に連れていってやる。俺は絶対に聖ちゃんを置いていったりしない。物は試しで俺に賭けてみないか? きっと悪いようにはならない」
「――時也さんは、男を抱けるんですか?」
「衝撃の一目惚れと、衝撃の導きとくりゃあ、性別なんて関係ねぇよ。聖ちゃんが欲しい。欲しがったら駄目か? 無理矢理はしたくない。もしOKなら、姫のキスをくれないか? 秒で火が点くから」
――俺に委ねるなんて卑怯だ。
一目で魅了された時也さんが、疫病神の俺を求めてくれるなんて、そんな甘美な誘惑をどうすれば断れるって言うんだろう。
「……本当に、後悔しないでくださいね?」
言って、自ら時也さんの唇に己のそれを重ねたら、すぐに体重を乗せた深いキスに呑み込まれて、意識がそちらに散っているうちにニットの裾から手が忍び込んできてゆっくり腰を撫でられる。
今、この手を拒めばまだ間に合う――。
けれど、肌を這う手のひらがやけに冷たく感じるのは、俺の身体が先に火を点し熱くなっているからだと自覚してしまったら、もう後はなし崩しだった。
「時也さんが……欲しい……」
「くれてやるよ。聖ちゃんが受け止めきれねぇくらい、アイツを守れなかった分まで守ってやる。疫病神だなんて二度と言うな」
(この人のことを、信じてみたい――)
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