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「――で、時也ときやさんが美聖みさとの婚約者ってどういうことなんですか?」

「俺が美聖さんの婚約者!?」

 時也さんが目を丸くするので、俺はやっぱり美聖の思い込みだったかと思わず盛大な溜め息が出る。

「えー! 何よ時也その反応! 私たち婚約したじゃない!」

「あー、前回来た時、美聖さんかなり酔ってたもんなぁ。俺みたいな奴と結婚したら苦労するよー? 何せこの美貌……他の女が放っとかないかもしんねぇよ?」

 ほら、やっぱり美聖の思い込みだ。

 こんなに綺麗で口が上手くて包容力もありそうな人、どこか一箇所に留まれるような人じゃないだろう。

「やっぱ美聖の思い込みか。そんなことじゃないかと思ってたよ。時也さん、こんな奴の相手しなくていいですから。時間の無駄です。時也さんって、何だか凄いオーラですね」

「俺? うーん、まぁな。麗しの容姿に女性には全て平等に……使ってくれる金の多い少ないに問わずフェミニストな根っからの女ったらしだしな」

 豪快に笑う時也さんに美聖は面白くなさそうに唇を尖らせるから、思わず『馬鹿め……』と内心で毒づく。

「俺、時也さんみたいなタイプの人に初めて出会いました。なんだか新鮮です」

ひじりちゃんも今度一人で来いよ? うちは男の飲み客も歓迎してんだ」

 なんて、屈託なく笑う時也さんの瞳はどこまでも慈愛に満ちていて、本当にいい人なんだなぁとますます興味が湧いてしまう。

(……一人で、か)

 間違っても恋心は抱いてはいけないけれど、過去にした苦いそれに似たように胸が高鳴って、時也さんのことをもっと知りたい、もっと近付きたいという衝動を抑え切れない。

「美聖、明日は撮影だよな?」

「そうだけど? 聖、明日は一人でここに来ようとか思ってないでしょうね?」

「残念だけど、そうしてみようかな。俺も時也さんに興味湧いた」

 そんな姉弟のやりとりを時也さんは笑いをこらえるように見つめていたけれど、やがて我慢できないと言った様子で口を割り込ませてきた。

「おーおー、まさか姉弟で俺の奪い合いされるとは思わなかったぜ。まぁ、どっちの美人でも俺は大歓迎だからな?」

 その言葉に二人揃って頬に朱が浮かんだのは、やはり姉弟……惹かれるタイプが似ているということなのだろう。
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