俺の専属精神科医の治療法は身体!?

ちろる

文字の大きさ
上 下
43 / 47

43

しおりを挟む
「ど、して……泰史さんが、来てたんで、すか?」

 俺は嗚咽でまともに喋れない中、時雨さんを涙に濡れた瞳で見つめる。

「泰史がね、僕とヨリを戻したいって言いに来たんだ。今、フリーらしくて、この間、僕と再会したら情が戻ったって」

 その言葉を聞いて俺はしゃくりあげるように泣いた。
 時雨さんは泰史さんの元へ戻ってしまうんだろうって思って。

「時雨、さ、戻りたいって、思って、るんですか?」

 そう言うと時雨さんが座席から立ち上がって俺をぎゅっと抱きしめた。
 まるで初診のあの日の様に。

「そんなの、断ったに決まってるでしょう? 僕が好きなのは春だけだ。それとも春は、こんなおじさん嫌かな?」

 俺は時雨さんの腕の中でブンブンと頭を横に振った。

「俺は、しぐ、れさんと居たい。泰史さんと……元に戻らないで、時雨、さ……」

 時雨さんが俺の後頭部をグッと肩口に抱き寄せた。
 そのままフッと触れるだけの口付けを額に落とす。

「春、信用して? 僕は春を裏切らない。ここでね、初めて春を見て一目惚れしたのは本当だけど、浮気で裏切られたって聞いて他人事だとは思えなくて。だから春を好きになったんだ。そんな僕が、春を裏切るようなことをすると思う?」

「時雨さん……」

 すると時雨さんが席に戻って「八神やがみさん」と呼んだ。

「え?」

「夜は眠れてる?」

 突然医者と患者モードになってしまった時雨さんに俺は何事だろうと思う。
 夜に眠れてるかなんて、時雨さんが一番知っているくせに。

「眠れてます」

「もう眠剤はいらないかな?」

 クスっと時雨さんが笑う。

「愛してる人が……愛している人が一緒に眠ってくれているのでもう眠剤は要りません」

「愛してる人って?」

 俺は座席を立ちあがった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...