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翌朝──。
時雨さんの腕の中で目覚め、口付け合ってからベッドを出て、二人で朝食を囲みながら時雨さんが唐突に言った。
「春、今日は病院においで?」
「え、でも俺もう治りましたよ?」
俺はキョトンと時雨さんを見つめる。
時雨さんと恋人になってから俺に精神的不調は何もない。陰鬱とした気持ちもないし、夜だって眠れているし、食欲だってある。
「会いたいんだ、春に」
真剣な目で真っすぐ見つめられて俺の頬に熱が集まる。
こんなに毎日会っているのに、会いたいと言ってくれるのが嬉しくて、赤くなった頬を見られたくなくって俯いてボソボソと喋った。
「わかりました……受診します」
「うん。じゃあ行ってくるね」
時雨さんを「行ってらっしゃい」と見送って俺は病院に電話をかけた。
前回すっぽかしてしまったから予約がないからだ。
「もしもし? すみません、八神と申しますが、今日、紅夜先生に受診出来ますか?」
電話に出たのは、また外来看護師の女性だった。
『紅夜先生から聞いています。大丈夫ですよ。14時に来られますか?』
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。失礼します」
俺は電話を切ると一通り部屋の掃除を済ませて昼食にトーストを食べ部屋を出た。バスに乗って病院へ向かう。
寒さで手を擦りながら病院の中へ入っていく。
診察券を出すとロビーに座って呼ばれるのを待った。
その時──。
時雨さんの診察室から見知った顔が出てきて、それが間違えようもない、あの日会った泰史さんだとわかった。
俺は胸がざわざわしてしまい、でもまたすっぽかすのはダメだと思って順番を待った。油断したら、瞳から涙がこぼれてしまいそうだ。
やがて「八神さーん、診察室へどうぞ」と呼ばれて診察室に入った。
時雨さんの顔を見たら、すぐにボロボロと涙が流れて来て。
「近藤さん、ちょっと外してもらえるかな?」と時雨さんが看護師を退けた。
「見ちゃったかな?」
時雨さんが真剣な声で問いかけてくるから、俺は涙が止まらなくなった。
時雨さんの腕の中で目覚め、口付け合ってからベッドを出て、二人で朝食を囲みながら時雨さんが唐突に言った。
「春、今日は病院においで?」
「え、でも俺もう治りましたよ?」
俺はキョトンと時雨さんを見つめる。
時雨さんと恋人になってから俺に精神的不調は何もない。陰鬱とした気持ちもないし、夜だって眠れているし、食欲だってある。
「会いたいんだ、春に」
真剣な目で真っすぐ見つめられて俺の頬に熱が集まる。
こんなに毎日会っているのに、会いたいと言ってくれるのが嬉しくて、赤くなった頬を見られたくなくって俯いてボソボソと喋った。
「わかりました……受診します」
「うん。じゃあ行ってくるね」
時雨さんを「行ってらっしゃい」と見送って俺は病院に電話をかけた。
前回すっぽかしてしまったから予約がないからだ。
「もしもし? すみません、八神と申しますが、今日、紅夜先生に受診出来ますか?」
電話に出たのは、また外来看護師の女性だった。
『紅夜先生から聞いています。大丈夫ですよ。14時に来られますか?』
「はい、大丈夫です。よろしくお願いします。失礼します」
俺は電話を切ると一通り部屋の掃除を済ませて昼食にトーストを食べ部屋を出た。バスに乗って病院へ向かう。
寒さで手を擦りながら病院の中へ入っていく。
診察券を出すとロビーに座って呼ばれるのを待った。
その時──。
時雨さんの診察室から見知った顔が出てきて、それが間違えようもない、あの日会った泰史さんだとわかった。
俺は胸がざわざわしてしまい、でもまたすっぽかすのはダメだと思って順番を待った。油断したら、瞳から涙がこぼれてしまいそうだ。
やがて「八神さーん、診察室へどうぞ」と呼ばれて診察室に入った。
時雨さんの顔を見たら、すぐにボロボロと涙が流れて来て。
「近藤さん、ちょっと外してもらえるかな?」と時雨さんが看護師を退けた。
「見ちゃったかな?」
時雨さんが真剣な声で問いかけてくるから、俺は涙が止まらなくなった。
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