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 時雨さんを見送ったあと、俺も借りていた合鍵で玄関を閉めて部屋を出た。
 大家さんは同じマンションの一階に住んでいるのでそこに行けばいい。

 部屋の中の物はどうしようか……。

 特に持ち帰りたい物もないから処分してしまってもいいのだけれど、少し着替えを増やそうと思って俺は久しぶりに自分の部屋の鍵を回した。

 回して、異変に気付いた。

 鍵が閉まったのである。
 俺はもう一度鍵を開けて部屋の中に入ってみる。

 そっとリビングに進むと「よう」と声をかけられてヒッと声が出そうになった。

「彰成……なんで……」

「お前がどこにいるか分からなかったから、ここで暮らしてた。その内帰って来るだろうと思って」

 すぐに手首をぎゅっと掴まれる。
 咄嗟にその手を振り払おうとするも、強い力で握られて敵わなくて。

「放せっ」

「お前、今どこにいんだよ」

 俺はキッと彰成を睨みつける。

「そんなの彰成に言う必要ないだろ」

「俺たち恋人だろうが」

 恋人? 笑わせるなよ。そんなのもうとっくに解消されてる。
 今の俺の好きな人は時雨さんだ。
 時雨さんだけなんだ。
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