21 / 59
21
しおりを挟む
まだ解放されない熱の苦しさと、ダッチワイフだなんて言われた虚しさと、色んな感情が込み上げて涙がこぼれた。
涼さんが下肢を拭う様を横目に見遣りながら俺は自身を握りしめて指を滑らす。
半達き状態だったそれは、すぐに「っ……んっ!」と、制御すら不能な吐息と共に掌に精を吐き出し、一人で達したやるせなさと脱力感と共にシーツに沈み込む。
奥を濡らされた白濁を掻き出しにシャワーに行こうと立ち上がると、ベッドの隅に座った涼さんがポツリと呟いた。
「もう……こんなの限界だ……」
その瞳は生色を宿しておらず、どこか儚げで、このままでは涼さんが消えてしまうのではないかと焦って抱きしめる。
「涼さん……大丈夫です。俺が傍にいますから。俺に傍にいさせてください……お願いだから……。どこにも行かないでください……涼さん……」
「キミは……一体何? 僕の何?」
何だろう。
俺は涼さんの何だろう。
「何者でもいいです。涼さんの傍にいられるなら……姉さんでも、性道具でも……何でもいいです。涼さんが狂うなら、俺も道連れにしてください」
涼さんの瞳からまた綺麗な涙が伝って、それを指で拭ってあげたら、後頭部を引き寄せられて掠めるように唇を塞がれた。
「そういえば……なつめは元気かな? あずさのたった一人の弟だ……僕が傍にいてあげなくちゃ」
なつめは、ここにいるよ。
ちゃんと涼さんの傍にいるよ。
「なつめはちゃんと涼さんの傍にいます。涼さんがわからないだけで、ちゃんと傍にいます。姉さんのように離れて行ったりしません。だから安心してください。涼さん」
抱きしめる腕に力を込めると、涼さんは静かに涙を流し続けた。
俺は、涼さんを一人にしないから安心して?
涼さんが俺のことを誰なのかわからなくても、俺はちゃんと涼さんの傍にいるから、ナニモノにだってなるから、安心して?
涼さんが壊れるなら俺も一緒だよ?
──どこまでも、道連れにして?
涼さんが下肢を拭う様を横目に見遣りながら俺は自身を握りしめて指を滑らす。
半達き状態だったそれは、すぐに「っ……んっ!」と、制御すら不能な吐息と共に掌に精を吐き出し、一人で達したやるせなさと脱力感と共にシーツに沈み込む。
奥を濡らされた白濁を掻き出しにシャワーに行こうと立ち上がると、ベッドの隅に座った涼さんがポツリと呟いた。
「もう……こんなの限界だ……」
その瞳は生色を宿しておらず、どこか儚げで、このままでは涼さんが消えてしまうのではないかと焦って抱きしめる。
「涼さん……大丈夫です。俺が傍にいますから。俺に傍にいさせてください……お願いだから……。どこにも行かないでください……涼さん……」
「キミは……一体何? 僕の何?」
何だろう。
俺は涼さんの何だろう。
「何者でもいいです。涼さんの傍にいられるなら……姉さんでも、性道具でも……何でもいいです。涼さんが狂うなら、俺も道連れにしてください」
涼さんの瞳からまた綺麗な涙が伝って、それを指で拭ってあげたら、後頭部を引き寄せられて掠めるように唇を塞がれた。
「そういえば……なつめは元気かな? あずさのたった一人の弟だ……僕が傍にいてあげなくちゃ」
なつめは、ここにいるよ。
ちゃんと涼さんの傍にいるよ。
「なつめはちゃんと涼さんの傍にいます。涼さんがわからないだけで、ちゃんと傍にいます。姉さんのように離れて行ったりしません。だから安心してください。涼さん」
抱きしめる腕に力を込めると、涼さんは静かに涙を流し続けた。
俺は、涼さんを一人にしないから安心して?
涼さんが俺のことを誰なのかわからなくても、俺はちゃんと涼さんの傍にいるから、ナニモノにだってなるから、安心して?
涼さんが壊れるなら俺も一緒だよ?
──どこまでも、道連れにして?
11
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~
ちろる
BL
白鳳出版に勤める風間伊吹(かざまいぶき)は
付き合って一年三ヶ月になる恋人、佐伯真白(さえきましろ)の
徐々に見えてきた異常な執着心に倦怠感を抱いていた。
なんとか元の真白に戻って欲しいと願うが──。
ヤンデレ先輩×ノンケ後輩。
表紙画はミカスケ様のフリーイラストを
拝借させて頂いています。
こじらせΩのふつうの婚活
深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。
彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。
しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。
裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる