いつか本当の俺を見てくれますように~たとえ身代わりだとしても、恋情に溺れて~

ちろる

文字の大きさ
上 下
19 / 59

19

しおりを挟む
 布団を剥ぎ取られたかと思えば左足を持ち上げられて、ジャラッと鎖の音がするその足枷あしかせに鍵が差し込まれて、カチリと音が鳴って枷が外れた。

りょう……さん……?」

「キミは誰? あずさはどこ?」

 言いながら、剥き出しの下肢かしの中心を握られると力強く、乱暴に扱かれて息が乱れて、涼さんの背にぎゅっと抱き着く。

「ぁっ……ん、ゃ……涼さ……」

 涼さんに飼いならされている身体はすぐにその快楽を享受して、次々先走りの液が流れて、涼さんの胸に額を押しつけて、でも痛いくらいに直截的ちょくせつてきに握られた性急な扱き方に眉をしかめる。

「あずさは……こんな身体じゃなかった。ねぇ、キミは誰? こんなのあずさじゃない!!」

 叫んだ涼さんが最後に鈴口をえぐった衝撃で、涼さんの指の中に粘液を吐き出してしまう。

 涼さんがそれをじっと見つめて、再び涙を流した。

「はっ……っ……涼さ……」

 達した余韻で荒い呼吸を繰り返すと、涼さんが俺の剥き出しの太腿に、何か忌まわしいものを拭き取るように白濁を塗り付けた。

 仄暗ほのぐらい目で俺を見下ろした涼さんが「出て行って」とポツリとこぼした。

「キミはあずさじゃない。出て行って」

 嫌だ。俺は涼さんと一緒にいたい。

 涼さんが俺を見ていなくたって一緒にいたい。
 このまま永遠に、涼さんと溺れていたい。

「嫌……です……。私は……俺は出ていきません。ちゃんと繋いでください。俺を繋いでてください……。涼さんの傍にいさせてください」

 けれど、涼さんはもう俺に足枷を嵌めてはくれなくて、ただ黙って倒れ込むようにベッドに横になって、力なく項垂うなだれた。

 そっと、背後から涼さんを抱きしめると肩が震えていて、その口から嗚咽のようなものが聴こえて、俺の瞳からも涙がこぼれる。

 姉さん、どうしてこうなっちゃったのかな?
 どうして、涼さんの夢の中に出てきたのかな?
 俺が涼さんを繋いだことに怒ったのかな?

 でも、お願い許して。
 俺は、涼さんと一緒にいたい。

 涼さんの傍にいることを許して──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

さよならの向こう側

よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 ※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。 ⚠️不倫等を推奨する作品ではないです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...