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「おかえりなさい、りょうさん」

 俺は毎日仕事から帰ってくる涼さんを待って、鎖を引きずりながら玄関まで出迎えると、すぐに抱きしめられて「ただいま、あずさ」と耳朶じだに唇を押し付けられる。

「んっ、涼さん……寂しかったです。ずっと一人で……早く抱いて?」

 俺は毎日、涼さんに抱いて欲しいと強請ねだった。

 現実から目を背けたいみたいに、ただただ涼さんと溺れている時間が幸せで仕方がなくて、昼間、一人でいる浮き漂う時間が怖くて仕方がなくて。

 優しい瞳で俺を見つめた涼さんが、すぐに腕を引いてリビングをくぐり寝室の扉を開けてベッドに身体を押し付ける。

「僕、先にシャワー入りたいんだけどな?」

「いいんです……俺、涼さんの匂い大好き……。早く俺の中、いっぱいにしてください……も、我慢できない……」

 覆い被さってきた涼さんのネクタイを引き抜くと、剥き出しの内腿をさすられて、熱くなっていく身体に従うまま涼さんを求める。

「あずさ……愛してる」

 言いながら、首筋に唇を寄せられて囁かれる、その呼び名にどこか虚しさを覚えながら、それでも俺はまくり上げられていくTシャツの下の裸身らしんを露わにしていく。

 涼さんのスーツの上着を脱がせて、シャツのボタンを開けて、スラックスのベルトを外して下着の中からおすを取り出して自ら口にくわえ込んで。

 徐々に膨張を始める硬く熱い脈から溢れる蜜と、俺の口の中から分泌されるグチャグチャの涎を口端からだらしなくこぼしながら、なりふり構わず涼さんを昂らせていく。

 俺が、涼さんを振り向かせる方法は。
 俺が、涼さんに存在を示せる方法は。
 俺が、涼さんに必要とされる方法は。

 他には何一つないから。

 ただただ、己の身体を捧げることで、姉さんではなくて〝なつめ〟を見てはもらえないだろうか──。

 そう切願しながら、ひたすらに毎日、くこともなく涼さんを求めて。

 そうして、空虚に苛まれるんだ。
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