婚約者のことが大大大好きな残念令息と知らんふりを決め込むことにした令嬢

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番外編

30.その時、彼と彼女に何があったのか② ミルフィオーレ

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「ですが、品種改良はわたくし一人で行えたことでは決してないです。むしろ研究者たちの頑張りのおかげ。それに、殿下だって、たくさん協力してくださったではありませんか」

 特に、気候や地理の分野に明るい専門家を遠方より招致してくれたのは、クリストファーである。さすがのミルフィオーレでも、ありとあらゆるところまで、コネクションは持ちえなかった。
 けれども、クリストファーは首をゆるりと振る。

「謙虚だなあ。でも、やはりみなミルフィがいてこそだと、口を揃えて言うだろう。誇って欲しい」
「……っ」

 自分が長らくやり続けてきたことが、こんなところで認められ褒められた。不意打ちが過ぎる。嬉しくて、ぐっと胸が熱くなってしまう。

「私が王太子として積み上げてきた功績、ぐうの音も出ないほどのミルフィの国への貢献、そして今回のエドワードのやらかしはとどめだ。まあ、あの子は後々救いの手を差し伸べるとして、これで公爵も黙らざるを得ないだろうさ」
「……そのために、わざわざあんなパフォーマンスを?」

 くくく、とクリストファーが悪い顔で笑っている。
 数多の貴族子弟を虜にした卑劣な魅了魔法に、クリストファーが囚われなかったのは、ひとえに心から愛する婚約者ミルフィオーレの存在があったから。
 そう強く印象付けられたし十二分に見せつけたから、政略と思われていた二人の純愛の噂は、貴族ばかりだけでなく市井にも瞬く間に轟くであろう。特に下々の者は、そういったゴシップや恋物語が大好きだ。
 渦中のクリストファーに側妃を召し上げる話など出ようものなら、愛し合う二人の仲を引き裂くだなんてと、反発がくること必至。イメージ戦略が絶大なモノを言うのを、クリストファ―はよくわかっている。
 何が起きるかすら不透明だったあの園遊会の場で、そこまで見通し狙って演出したのだとしたら、大した策略家だ。末恐ろしい。

「いや、あれは単純にエドに君を貶められて、めちゃくちゃイラっとしたから、ついカッとなって」
「殿下……」
「やーあれがいい方に転んだね」

 ミルフィオーレは、思わず額に手を当てた。そういうところだ。はあと重々しくため息をつく。

「どうして、もっと早く打ち明けてくださらなかったのですか……。そうしたら、わたくしは……」

 こんなに想いを燻らせて拗らせることもなかっただろうし、素直にクリストファーの言葉に耳を傾けていられただろうに。少しばかり恨みがましく思う。
 せめて、事情だけでも共有できていたら、また違ったのかもしれない。
 そんなミルフィオーレのじとっと責めるような視線などどこ吹く風で、クリストファーはいけしゃあしゃあとのたまった。

「うーん、それはそうなんだけどね。困ったことに、私にくってかかって普段は気高くツンとしたミルフィが、囁き一つで赤くなったり、わたわたしたり、取り繕った表向きの態度にしょんぼりしたりと私に翻弄されている姿が、どうしようもなく可愛くて可愛くて、ついつい虐めたくなってしまったんだよ」
「なっ!? 殿下!? 悪趣味が過ぎますわ!!」
「うわべを取り繕っていたときはともかくとして、プライベートで君に捧げた言葉は全て偽りのない本心だが、まあ、うん、趣味が悪いといわれたらそれまでの態度をしていたな」

 ふつふつとした怒りが腹の底から湧いてきて、ミルフィオーレはぎっと眉間に皺を寄せクリストファーをねめつけた。
 やはり、揶揄われている疑惑がどうしても払拭できないのは、クリストファーの自業自得な気がするのだがいかがなものか。
 クリストファーは視線をいなしつつも、両手をぱっと開いて肩まで上げて、降参のポーズを取りながら、小さく苦笑を見せる。

「それに、君に自由を与えたかったのもある」
「自由?」
「ああ。この後、私は君を王妃という名の窮屈な鳥籠に閉じ込めてしまうから。今なら飛び立ってしまっても、それがミルフィの選択なら、仕方ないとも腹を括っていたんだ」

 ああ、もう。さっきから好き勝手ばかり言って。
 何て、傲慢。腹が立つ。
 そのくせ、どことなく寂しげにミルフィオーレを手放す算段があったことを呟くのだから、ズルいにもほどがある。
 本当に、この人は。
 今まで、内心でどれだけ苦虫を噛み潰してきたような悪態をつきまくってきただろうか。
 ――それでも。

「貴方と共にこの道を進むと決めたのは、わたくしの意志。殿下は、あまりにもわたくしを侮りすぎていませんこと?」
「……うん、すまない」

 くしゃりと、クリストファーの表情が、少年みたいに崩れた。

「どうしてそこで笑うのですか!!」
「だって、誇り高い君なら、絶対にそう言ってくれると思っていたから。いずれ真実を告げたときに、嫌が応にも君を傷つけるだろうという罪悪感で死にそうだった。だけど、君ときたら、こんな曖昧な態度の私を強気で叱りとばしながら、好きで好きでたまらないという顔をしてくるからさ。ああ、これがツンデレというやつかと!」
「はぁあ!? 調子に乗らないでくださいましー!?!?」

 くつくつと喉を鳴らし軽快に笑うクリストファーに、ついついミルフィは反発してしまう。耳慣れぬ単語の意味は分からないが、褒めていないことだけはわかる、絶対に。
 それに、好きで好きでたまらない顔なんて、していない。王子妃教育で、どれだけ感情制御の訓練をやらされたと思っているのだ。していないったらしていない。クリストファーの目が、おかしくなったに違いない。
 もう、さっきから感情の起伏が物凄い。血圧上がりそう。というか、絶対上がっている。

「あはは、照れ隠しでそんなこといって、可愛いなあ、本当。もう、駄目だよね。逃がせなくなってしまった」
「し、信じられませんわ! そうやって、またわたくしを揶揄っているのでしょう!?」
「揶揄っていないよ。うーん、すぐすぐ信じられないのも無理はないとはいえ、いい加減私も限界でね。そろそろ、私がどれだけミルフィに焦がれているか、じっくりと教えてもいいだろうか」
「え?」
「ミルフィ、君に、触れたくてたまらない。信じてもらえるまで、私は君に愛を乞うよ」

 クリストファーの人好きする笑顔の中に宿る剣呑さを察知して、ミルフィオーレは思わず後ずさった。
 すると、彼が距離を詰めてくる。

「なぜ下がるんだい? ミルフィ」
「で、殿下が近寄ってくるからですわ!!!」

 一歩下がると、一歩詰め寄られる。それを繰り返せば、いずれとんと、背が壁に当たる。狭いサロンでは、ろくな逃げ場もない。

「ふぅん。でもね、ミルフィ、逃げられたら追いかけたくなるのが、男の性分というものだよ」

 あっとミルフィオーレが焦ったのも束の間、クリストファーの片手が、静かに顔の脇へと置かれる。ぐっと身体を至近距離まで寄せられて、クリストファーにすっぽりと囲われてしまった。
 ジャスミンが現場を目撃していたら、美男美女の壁ドン!と、興奮を露わにしていただろう。

「やっと、君を捕まえられた」

 歓喜にむせぶ甘やかな声。うっとりとしながらも、とろりと熱を孕んだ蒼の瞳。
 ミルフィオーレは、それを綺麗だなと思ってしまった。

「もう、逃がせない。ごめんね、ミルフィ」

 ああ、もう逃げられない。小鳥は鳥籠に囚われてしまった。
 ――小鳥は、もとより鳥籠から逃げるつもりなんてなかったのだけれども。

「好きだよ、君が好きだ、ミルフィ」

 頤に、クリストファーの長い指がかかって。彼の瞳の中に映る自分の姿が、段々とぼやけて。
 唇に、熱が触れた。
 ほんの一瞬の口づけ。ゆっくりと離れていくクリストファーの顔を、ミルフィオーレはぼーっと見上げた。

「可愛い。愛しているよ」

 ちゅっ、ちゅっと絶え間なく口づけが降ってきて。唇同士が擦り合わさり、クリストファーの舌がぺろりと唾液を舐め取る。微かに立つリップ音が、否応なくミルフィオーレの耳を犯していく。
 恥ずかしい。恥ずかしい。なのに、泣きたくなるくらい嬉しい。悔しい。
 感情は、すっかりごちゃごちゃだ。
 だけど、心臓はどくどくと凄い鼓動を鳴らしているし、内側を巡る血が沸騰してしまったのかのように、全身が熱くてたまらない。クリストファーが触れるところから、じんとした痺れが、歓喜が広がっていく。身体のほうが、よっぽど正直だ。
 ふわふわとした夢見心地のまま、ミルフィオーレはぺちりとクリストファーの両頬を叩くように掌を当てた。

「……っ、殿下は、本当に馬鹿ですわ!」
「うん、知っている」
「自惚れすぎですわよ!」
「うん、君が甘やかしてくれるから」
「もう、本当に、わたくしばっかり弄ばれてばっかりで」
「言葉が悪いなあ。私だってミルフィの可愛さに、何年もメロメロになっているんだよ? 一目惚れだったんだから」
「え? はっ? 嘘……そ、そんな素振り、一度も……!? だって、貴方いつもヘラヘラと……」
「嘘じゃないし、気取られないようにしていたからねえ。君は、私の初恋」
「~~~~くっ……うう、もうっ、散々やきもきさせられたのに、どうして嫌いになれないのよ……!」
「ごめん。だけど、ミルフィに嫌われたら困るなあ」
「わ、わたくしでなければ、貴方に付き合ってなんてあげられませんわ」
「ああ! 君だけだ、ミルフィ。私の隣にずっとずっといて欲しい!」

 次々飛び出してくる爆弾発言に、もう頭は飽和していたけれども。
 腰と後頭部をそれぞれしっかりと抱き寄せて、クリストファーがミルフィオーレに深く執拗に口づける。
 愛を素直に囁けず、結局ツンツンと可愛くない想いを伝えるミルフィオーレも、そのまますべて受け止めて。
 まるで、離さないといわんばかりに。もっと繋がりたいといわんばかりに。自分を囲う檻が、心地よいから。
 だから、ミルフィオーレも、クリストファーの背に手を回し縋った。

「ん……っ」

 クリストファーからの蕩けそうなキスを受けて、霞む思考の中、ミルフィオーレはぼんやりと思う。


 こんな激情、よくも何年も隠しおおせていたものだ、と。











~おまけ~

レイル「殿下、ミルフィオーレ嬢と無事想いを交わせたそうで、おめでとうございます」
クリス「ありがとう、レイル。やー、長年のらくらやってきた甲斐があったというものだよ」
レイル「しかし、あの高潔な彼女が、このちゃらんぽらん殿下に好きと伝えたとは……にわかには信じ難いですね」
クリス「ちゃらんぽらんとは失礼な。あと、好きだとは別に言われていないよ?」
レイル「は?」
クリス「でも、私のことが好きで好きで仕方ないという顔をしているだろう? 可愛いよね」
レイル「はぁ……(目の錯覚では??)」
クリス「だから、別に今急いで言葉を求めなくても十分なんだ。それに……」
レイル(嫌な予感しかしない……)
クリス「ミルフィをどれだけトロトロにとろかしたら、素直に好きだと言ってくれるのか、試してみるのもまた一興だろう? 彼女の頑なな心の鎧を、一枚一枚丁寧に剥いでいく楽しみがたまらないよね(いい笑顔)」
レイル「あーあーあーあー! ご馳走様です……ミルフィオーレ嬢に同情しますね……(ゲンナリした顔)」








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次回はステラリアのお話。
少しバタバタしてるのですが、来週のどこかで投稿できるかと!
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