【完結】元社畜の付与調律師はヌクモリが欲しい

綴つづか

文字の大きさ
上 下
74 / 126
オルクス公爵領ダンジョン調査

74.団長、初めてのお弁当ときのこのピリ辛スープ

しおりを挟む


 まだ雪の残る泥道を、僕たちはオルクス公爵領に向けて軽快に進んでいく。
 思っていたよりも、進行が早い。これなら、問題なく夕方までに領都に到着できそうだ。
 当初、体力のないカナメが足を引っ張るかと思いきや、エアスケーターというびっくり魔道具を平然と出してきて、遅れもなくすいすい僕たちと並走している。揺れがなさそうな分、馬よりもかなり楽そうだ。いいなあ。魔力の消費、エグそうだけど……。

 いやはや、カナメは本当に面白いし、とんでもない。
 面白いけれども、突拍子もなく高性能なものをひょいっと作るから、誰か手綱を握っておかなくちゃいけないのにねえ。ヒースさん(でいいと言われたので、遠慮なく!)も魔女サンも、カナメには甘々だよね。本人の自覚が薄いのも厄介だ。

 視線をやれば、カナメがきょろきょろと辺りの風景を、物珍し気に眺めながら走っているのが見える。
 僕たち以外に、こんなトンチキな乗り物に乗っている女性が見えていないっていうんだから、僕が真顔で脅してしまったのも仕方ないでしょう。
 こんなヤバい魔法気軽に使って、悪用されたらたまったもんじゃない。カナメにしか使えなさそうっていう点で、安心したけれども。
 念のため、後で父さんと兄さんにも報告を上げておかないと。

 何というか、びっくり箱みたいな女性だね。学生時代に破天荒なことをやらかしていた、ユエル・レイン先輩を思い出す。あの人も、転生型の『界渡人わたりびと』だったもんなあ……。
 ユエル先輩の場合、シリウス宰相補佐がいたからマシ…………かと思ったけど、そんなことはなかった、充分暴れてたよ。思い出美化による錯覚だ。
 流れのままふと学生時代を思い起こしていると、ついつい笑いが漏れた。隣を走っていたカナメが、きょとんと目を瞬かせて僕を見る。

「ディランさん、どうしました?」
「ああ、いや、そろそろお腹空いたなあって」
「そういえば、そうですね。私もぺこぺこです。お昼にしますか?」
「とはいえ、このあたりだと村もないしなあ……」

 時折休憩を交えながら走り、今はユノ子爵領とオルクス公爵領の境界辺りまで来ている。
 朝早くの出立だったから、そろそろ補給したいところなんだけど、もう少し行かないと食事処がある村がないんだよねえ。タイミングが悪いね。
 きゅうとお腹が音を立てる。この程度は慣れっこだから、我慢できなくはないけれども、カナメは果たしてどうだろう。

「ああ、それなら大丈夫ですよ。私、お弁当作ってきたんです」
「お弁当?」

 はて。お弁当、とは?



* * *



 街道脇にある森の中の開けたところで、僕たちは馬を降りた。知る人ぞ知る休憩所として利用されている場所だから、そこそこ整備されている。
 今日は、僕たちの他に利用者は誰もいないようだ。寒空の下、食事をしようとは思わないものねえ。
 地面は、溶けかけの雪でドロドロしている。僕は、地魔法の≪乾燥ドライ≫を展開して、ささっとぬかるみを乾かした。風魔法の≪乾燥≫と異なり、土に対してしか効果を発しないんだけど、特化型だから瞬時にさらさらになる。

「おおー、便利だ」

 ぱちぱちぱちとカナメが拍手してくれるので、ちょっと照れるな。

 カナメはリュックから大きな布を取り出すと、丁寧に地面に広げた。≪撥水アクアリペレント≫と≪清浄クリーン≫の魔法が付与された布だ。騎士団でも採用されている付与の組み合わせで、多少汚れても問題がなく使い勝手が良い。確か、≪撥水≫は、昔どこかの国の聖女がもたらしたとかなんとか。
 カナメが、敷布にごく低温の≪伝熱サーマル≫の魔法をかける。うん、あったかいな?
 ヒースさんが魔法で、吹き付ける北風の制御はしてくれているが、接地面が温いのは純粋に嬉しい。北だから、底冷えするんだよねえ。
 付与魔法エンチャントって、補助特化だったから、今までさほど重要視されてなかったけれども、カナメが使うとあれこれ至れり尽くせり快適になるのだから不思議だ。何にしても使いようなのかもしれないね。

 靴を脱いで敷布の上にあがると、カナメはショルダーバッグから手慣れた仕草で、保存容器やらカトラリーやらを次々出してくる。
 そうして、保存容器に指先を触れて、≪伝熱≫とわずかばかりの≪ミスト≫を付与していった。

「ピクニックぽいな……」
「ああ! 言われてみれば、ピクニックみたいなものですねえ。もうちょっとだけ、座ってお待ちください」

 そう促され、カナメ以外の人はブーツを脱がずに敷布へと腰を下ろした。すぐ動けなくなるとマズいからねえ。
 ピクニックは、籠にサンドウィッチなどの軽く摘めるものや、飲み物を詰めて持っていくのが定番だけど、お弁当とは更に凄いな。
 食器とフォークを渡され、数分待っているとカナメが保存容器の蓋を外す。ふわりと良い匂いと共に、湯気が立った。なるほど、蒸気で温めたのか。

「おお……! これは凄い」
「まさか、こんなところで温かい食事が出てくるとは思わなかったなあ……」
「ご飯係を任されたのですからね、頑張りましたよ」

 僕とシラギくんの感嘆と称賛に、カナメがえへんと胸を張った。
 お弁当とは、冷えても美味しくいただけるそうなのだけど、寒いから温かいほうがいいだろうという、カナメのちょっとした心遣いが泣ける。
 確かに、外での食事は、暖かな陽射しの下以外は、進んでしたいものじゃないからね。

「今日はおにぎりか」
「はい。もち麦も混ぜてますけど。冷凍の鮭が手に入ったので、焼いた鮭と昆布を煮て刻んだのが具です」
「カナメの弁当はいつも旨いから楽しみだ」

 カナメが、各保存容器の中を説明してくれる。
 白い穀物のようなものが三角になったのがおにぎり、卵を焼いて巻いた卵焼き(出汁と甘いのの2種類あるらしい)、ホロホロ鳥のてりやきとつくね、人参とごぼう(ヒースさんが根っこっていうから、カナメとちょっと揉めてた)を甘辛く煮つけたきんぴら、トマトときゅうりのマリネ。
 それらが、容器にみっちりと詰まっている。戦闘を生業とする男の食欲を、よくわかっている量だ。
 彩りは茶色くちょっと地味だけど、漂ってくる匂いが空腹を直撃し、テンションがあがる。しかも、種類も豊富ときた。

「今日の汁物は、きのこのピリ辛スープですよー」

 そして、手渡されたのは、水筒よりもでっぷりとした形状の食器。曰くスープボトルといって、蓋を開けたら温かなスープが入っていた。素直に感動した。
 昨日、シラギくんと一緒に寒い中、さして美味しくもない携帯食を食べながら、街道を走り抜けた記憶が頭をよぎる。え、何、この食事の差、温度の差……。今、自分たちはそこそこ距離のある移動をしているんだよな?と、疑問を覚えてしまう。

 いただきますと言って、早速食事に手を伸ばしたカナメにつられ、僕もスプーンで茶色いスープを掬う。
 ゴマだろうか。ふんわりと香ばしい香りが、唾液を促進する。
 匂いに誘われるがまま口に運ぶと、こりこりしたキノコの触感と、少しとろっとしたしょっぱく深みのあるスープが、疲れた身体に染み渡る。具は、3種類のキノコと、玉ねぎ、人参。後から口腔内にぴりっと走る辛味も、アクセントにいい。
 食べたことのない味だが、なかなかに旨い。スプーンを運ぶ手が止まらない。うちの料理人が作る食事とは、異なる味付けだ。舌先に、複雑な深みのある味が広がる。一体何を使えばこんな味になるのか、見当もつかない。面白いなあ。
 しかも、冷えた身体が芯から温まってくるようだった。
 肩の力がすっと抜け、ほわと気の抜けた息が漏れた。

「はぁ……あったかくて幸せー……」
「でしょう。みんなで一緒に食べると、より美味しく感じられますよね」

 にへっとカナメが笑った。

 おにぎりを食べれば、米が中の海鮮の具とマッチして、食べる手が止まらない。米は初めて食べるが、噛むとほのかな甘みがあり、もちもちしていて、パンとはまた違った旨さがある。

 シラギくんが頬ばっているホロホロ鳥も、大変に旨そうだ。てらてらと輝くタレがまた米に合って、おにぎりを食べる手が進むと、シラギくんが興奮気味だ。
 ヒースさんは、卵焼きを幸せそうに食べている。この人、実は甘いものが好きか。

 カナメに聞けば、お弁当全般にショーユをふんだんに使っているらしい。あの、ミクラジョーゾーで、大銀1もするお高い調味料である。
 興味本位で舐めさせてもらったことがあるけれども、しょっぱすぎるし黒いし何だこれと敬遠したものだが、まさか使い方次第でこんなに極上の味になるとは。

 きんぴらも、ヒースさんが散々に根っこって言うけれども、触感ががりがりとしていて面白い。これもおにぎりに合う……というか全般的に米との相性がいいおかずで、考えられているのだろう。
 野菜のマリネは、しょっぱくなった口の中を、さっぱりさせてくれる。柑橘が混ぜられているのか、味も香りも良く食べやすい。
 どうしても遠征中は、食事のバランスが悲しいほどに偏りがちになるが、カナメはその辺の配慮も忘れていない。

「はぁ……美味しい。カナメ、僕と結婚しよう」
「お断りします」

 懲りずにちょっかいをかけてみるが、カナメにいい笑顔でばっさりあしらわれた。うーん、これは本気でとられていない顔!
 でも、お隣から殺気が漂ってきて、恐い恐い。

 それにしても、これでダンジョンにおける食事は安泰だなあ、自分の≪予兆オラクル≫はやはり完璧だなんて、悦に浸っていると、隣に座っていたヒースさんが、ちょいちょいと肘鉄を食らわせてきた。ちょいちょいという割に、地味に威力が強くてやってられないねー。

「ディランダル君、これに慣れてしまうとね、遠征に行くのが本気で嫌になりますよ」
「全くだ……」
「確かに士気はあがりますが、その後を考えると落差が酷い……」

 ふ、とちょっとアンニュイな顔をして、ヒースさんが忠告してくれる。
 ああ、そうだろうともね。キミはたんまり美味しい料理を食べて、既に胃袋ごとカナメに陥落してそうだものね。
 でも、言われてみると、通常の遠征の食事を思えば悲惨な気持ちになるし、カナメの食事と比べてしまうな、これは。
 いいのか悪いのか。
 男衆3人は、はーとため息をついた。



 食後のお茶を忘れてたと慌てるカナメをとどめ置き、男どもで協力してお湯を沸かし、感謝のお茶を淹れた。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...