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本編
第十三話
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「お邪魔します……」
「ああ、遠慮せずに入れ」
僕は今どこにいるかというと、会長の部屋にお邪魔している。
家に帰りたかっただけなのになぜこうなった……。
会長の部屋はワンルームだが、僕の部屋より二倍以上広くて綺麗だ。
オートロックだし、宅配BOXもついていた。
「凄い!」と驚くと、学園都市内ではない方が珍しいと呆れられた。
確かに僕が住んでいるボロいアパートは周りから浮いているもんなあ。
なぜ自分の家には帰らずに会長の家にお邪魔しているかというと、僕の家は色々とまずいことが発覚したから、戻らない方がいいらしい。
昨日会長は「明日引っ越しだ」と言っていたが、どうやら冗談ではなかったようだ。
でもまだ引っ越し先が決まらないので、とりあえず会長のところでお邪魔することになったのだが……他になかったのかな?
会長と一緒にいたら甘えてしまうし、黙々と勉強するには一人がいいんだけどなあ。
すぐに決まるはずだとは言っていたけど、いつになるんだろう。
二、三日生活できるだけの荷物はここに来る途中に持ってきたが、残りのものは学園で預かってくれるというが……。
すべて会長が手配してくれたそうだが、一日でこんなに動きがあるなんて仕事が早い。
やっぱりデキル男だった。
それにしても……シンプルな部屋だ。
最低限の家具しかないし、色は白と黒ばかり。
あまり僕と変わらない気がする……なんて言うと、段ボールを衣装ケース代わりにしていた部屋と一緒にするなと叱られそうだ。
物が少ないのは同じだが、お洒落度は雲泥の差だ。
僕はセンスの良い部屋は落ち着かないことが多いのだが、ここは会長の雰囲気が漂っているからか安心するなあ。
「ほら、水分を摂っておけ」
「ありがとうございます」
不躾にキョロキョロ部屋を見ていると、会長がペットボトルの水を持ってきてくれた。
丁度喉が渇いていたのでありがたく頂いた。あー潤う~。
「?」
視線を感じたので目を向けると、隣に座った会長が水を飲んでいる僕をジーッと見ていた。
「もう大丈夫か?」
「え? あ、はい。すみませんでした」
「いや、何も謝ることはない。それより……貴久と何があった?」
「それは……」
あの部屋で起こったこと、僕が泣いていた原因はあまり口にしたくない。
思い出すのも嫌だ。
俯いて黙っていると、会長の大きな手が僕の頭の上にポンと乗った。
「悪い。言いたくないならいい。ただ、困ったことがあったらすぐに俺を呼べ」
「……はい」
頼ってばかりはいられないけど、自分ではどうすることもできないときはお言葉に甘えようかな。
いや、自分でもなんとかできるように頑張らなければ!
腕力でも対抗できるように少し身体を鍛えようかな?
ガリ弁から脳筋にシフトチェンジもいいかもしれない。
「僕、身体を鍛えて強くなろうと思います! 部屋のノブをガチャガチャしていた奴も撃退できるぐらいにムキムキに……」
「絶対に止めてくれ」
言い終わる前にガシッと両肩を掴まれ、真剣な顔で説得された。……なんで?
「無理だと思ってます? 成績をジャンプアップさせた、この集中力があれば会長にも負けないゴリゴリのマッチョにも……」
「頼むから止めてくれ! お前には似合わない。お願いだ……どうしても鍛えるというのなら、俺が押さえつけてでも止めるからな!」
「ええー……?」
そこまで反対するのは何故だ?
背も高くないし、逞しい体つきが似合う顔はしていないという自覚はあるが……そんなに変かな。
「鍛えないと約束してくれ」
「分かりましたよ……」
会長にお願いされたら断れないけど……。
似合わないと全否定されたようで段々拗ねたくなってきた。
「……こっそり鍛えよう」
「二十四時間監視されたいか?」
「…………」
小さい声で呟いたのに、しっかり聞こえていたようだ。
イケメンは耳まで良いのか。
声に出したのが失敗だったな。
でも、そこまで否定されると反抗したくなる。
諦めたフリをしてこっそり鍛えよう。
「ん?」
心の中で決意したところ何かの電子音が鳴った。
電話? と思ったが違う、あれは……カメラ付きのインターホン!!
「来たか。入ってくれ」
会長が受話器を取り、短い会話をした後玄関に向かった。
誰か来るようだ。
それにしても……ハイテクだなあ。
オートロックも二重になっていて、会長がインターホンについてあるボタンを押し、内側のオートロックを解除していた。
近未来か! と僕は思ってしまうけど、これが普通なんだなあ。
僕の実家は一軒屋で鍵とチェーンだけだった。
インターホンはあるが、映像はなし。
こういうものの存在は知っているけど、身近で見るのは初めてで驚いてしまう。
「邪魔するよーん」
玄関の方から明るい大きな声が聞こえた。
誰だろう……聞いたことない声だ。
目を向けると会長より少しだけ背の低い、赤い髪のイケメンが入って来て……目が合った。
「お、この子が噂の貴久のお下がりちゃん……痛ってええええ!!」
挨拶しなきゃと考えている時に、顔を顰めたくなるようなワードが聞こえた気がしたが……。
僕が反応するよりも早く会長が後ろから見事な蹴りを入れていた。
赤い髪のイケメンは蹴られた勢いで前にビタッと倒れた。
蹴られたお尻と倒れた時にぶつけた顔が痛いようで唸っている。
「……いっきなり何すんだ湊!!」
「死にたいのかお前……ああ!?」
お互い胸倉を掴んで威嚇し合う。
イケメン同士で睨み合っていて凄い迫力だ。
どっちも喧嘩が強そうだし、怖いんですけど-!
この人、見たことあるな……あ、生徒会の副会長だ。
「ああ、遠慮せずに入れ」
僕は今どこにいるかというと、会長の部屋にお邪魔している。
家に帰りたかっただけなのになぜこうなった……。
会長の部屋はワンルームだが、僕の部屋より二倍以上広くて綺麗だ。
オートロックだし、宅配BOXもついていた。
「凄い!」と驚くと、学園都市内ではない方が珍しいと呆れられた。
確かに僕が住んでいるボロいアパートは周りから浮いているもんなあ。
なぜ自分の家には帰らずに会長の家にお邪魔しているかというと、僕の家は色々とまずいことが発覚したから、戻らない方がいいらしい。
昨日会長は「明日引っ越しだ」と言っていたが、どうやら冗談ではなかったようだ。
でもまだ引っ越し先が決まらないので、とりあえず会長のところでお邪魔することになったのだが……他になかったのかな?
会長と一緒にいたら甘えてしまうし、黙々と勉強するには一人がいいんだけどなあ。
すぐに決まるはずだとは言っていたけど、いつになるんだろう。
二、三日生活できるだけの荷物はここに来る途中に持ってきたが、残りのものは学園で預かってくれるというが……。
すべて会長が手配してくれたそうだが、一日でこんなに動きがあるなんて仕事が早い。
やっぱりデキル男だった。
それにしても……シンプルな部屋だ。
最低限の家具しかないし、色は白と黒ばかり。
あまり僕と変わらない気がする……なんて言うと、段ボールを衣装ケース代わりにしていた部屋と一緒にするなと叱られそうだ。
物が少ないのは同じだが、お洒落度は雲泥の差だ。
僕はセンスの良い部屋は落ち着かないことが多いのだが、ここは会長の雰囲気が漂っているからか安心するなあ。
「ほら、水分を摂っておけ」
「ありがとうございます」
不躾にキョロキョロ部屋を見ていると、会長がペットボトルの水を持ってきてくれた。
丁度喉が渇いていたのでありがたく頂いた。あー潤う~。
「?」
視線を感じたので目を向けると、隣に座った会長が水を飲んでいる僕をジーッと見ていた。
「もう大丈夫か?」
「え? あ、はい。すみませんでした」
「いや、何も謝ることはない。それより……貴久と何があった?」
「それは……」
あの部屋で起こったこと、僕が泣いていた原因はあまり口にしたくない。
思い出すのも嫌だ。
俯いて黙っていると、会長の大きな手が僕の頭の上にポンと乗った。
「悪い。言いたくないならいい。ただ、困ったことがあったらすぐに俺を呼べ」
「……はい」
頼ってばかりはいられないけど、自分ではどうすることもできないときはお言葉に甘えようかな。
いや、自分でもなんとかできるように頑張らなければ!
腕力でも対抗できるように少し身体を鍛えようかな?
ガリ弁から脳筋にシフトチェンジもいいかもしれない。
「僕、身体を鍛えて強くなろうと思います! 部屋のノブをガチャガチャしていた奴も撃退できるぐらいにムキムキに……」
「絶対に止めてくれ」
言い終わる前にガシッと両肩を掴まれ、真剣な顔で説得された。……なんで?
「無理だと思ってます? 成績をジャンプアップさせた、この集中力があれば会長にも負けないゴリゴリのマッチョにも……」
「頼むから止めてくれ! お前には似合わない。お願いだ……どうしても鍛えるというのなら、俺が押さえつけてでも止めるからな!」
「ええー……?」
そこまで反対するのは何故だ?
背も高くないし、逞しい体つきが似合う顔はしていないという自覚はあるが……そんなに変かな。
「鍛えないと約束してくれ」
「分かりましたよ……」
会長にお願いされたら断れないけど……。
似合わないと全否定されたようで段々拗ねたくなってきた。
「……こっそり鍛えよう」
「二十四時間監視されたいか?」
「…………」
小さい声で呟いたのに、しっかり聞こえていたようだ。
イケメンは耳まで良いのか。
声に出したのが失敗だったな。
でも、そこまで否定されると反抗したくなる。
諦めたフリをしてこっそり鍛えよう。
「ん?」
心の中で決意したところ何かの電子音が鳴った。
電話? と思ったが違う、あれは……カメラ付きのインターホン!!
「来たか。入ってくれ」
会長が受話器を取り、短い会話をした後玄関に向かった。
誰か来るようだ。
それにしても……ハイテクだなあ。
オートロックも二重になっていて、会長がインターホンについてあるボタンを押し、内側のオートロックを解除していた。
近未来か! と僕は思ってしまうけど、これが普通なんだなあ。
僕の実家は一軒屋で鍵とチェーンだけだった。
インターホンはあるが、映像はなし。
こういうものの存在は知っているけど、身近で見るのは初めてで驚いてしまう。
「邪魔するよーん」
玄関の方から明るい大きな声が聞こえた。
誰だろう……聞いたことない声だ。
目を向けると会長より少しだけ背の低い、赤い髪のイケメンが入って来て……目が合った。
「お、この子が噂の貴久のお下がりちゃん……痛ってええええ!!」
挨拶しなきゃと考えている時に、顔を顰めたくなるようなワードが聞こえた気がしたが……。
僕が反応するよりも早く会長が後ろから見事な蹴りを入れていた。
赤い髪のイケメンは蹴られた勢いで前にビタッと倒れた。
蹴られたお尻と倒れた時にぶつけた顔が痛いようで唸っている。
「……いっきなり何すんだ湊!!」
「死にたいのかお前……ああ!?」
お互い胸倉を掴んで威嚇し合う。
イケメン同士で睨み合っていて凄い迫力だ。
どっちも喧嘩が強そうだし、怖いんですけど-!
この人、見たことあるな……あ、生徒会の副会長だ。
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