愛なんか知らない

秋

香は９月末日で退職した。
「産休育休取ってから辞めようと思ったんだけどね」
向こうのお母さんが早く来なさいって、嬉しそうに笑う。
向こうってのは木皿の方だろう。
「式は？」
そう聞くと、
「出産してからにしようかと思って。だから来年ね。向こうに落ち着いたら籍を入れて、予定日近くなったら実家に帰って生む予定」
「どっちにしろ動きが有ったら連絡しろよ。お祝い準備しとくから」
「桃果には次のイベントは行けないだろうから色々買っておいてもらうんだ」
それがお祝いかよ。それに次のイベントはって‥その次は行くつもりか？赤ん坊抱いて？
突っ込みたい気持ちを押さえて頷いておいた。
「性別は？」
「生むまで聞かないつもりだったんだけど、先生が言っちゃって。男の子らしい」
「へぇ」
「桃果に言ったら、自分も絶対男の子生むからくっ付けようねって」
この腐女子めらが！？
好きにしろと言いたい。
香は目立ってきたお腹を抱えて、職場を笑って去っていった。



翌年の秋、香は赤ちゃん連れで結婚式をした。
幹も森川も勿論桃果もよばれて、盛大に祝った。その時に幹は姉から妊娠を告げられた。
「でも女の子だって医者が言うの。でも見えてないだけかもだし、2人目に期待するばいいかな」
桃果はなんでかんで男の子が欲しいらしい。
幹は将来生まれてくる甥が気の毒になった。腐女子の母親を持つなんて‥