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夏休み
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大学は長い夏休みに入った。
しかし職員は休みではない。
図書館司書の幹もほとんど仕事だった。
夏休み期間中でも学生はレポートや課題の資料集めに図書館にやってくる。
それでも学食は休みになるので、代わりに売店でサンドイッチやシュークリームなどを買って昼食を済ませていた。
中庭でそれらを食べていると、何人かの男女が前を通りすぎた。
女の子達がチラチラ幹を見ていく。それに気付き、あぁ、そんな時期かと頷く。
オープンキャンパスが始まり、高校生が全国からやって来る。施設を見学したり、体験学習を受けにやって来るのだ。
そう言えば、事務所の方から午後から封筒詰めを手伝ってほしいと言われていた。オープンキャンパス用の資料を大学の封筒に詰める仕事だ。
幹は封筒詰めは苦手だ。
仕事的には楽だし、何も考えずにできる。でも封筒に詰めるときささくれができたり、紙で指をきったりすることが多いからだ。
「やりたくねーな」
紙パックのグレープフルーツジュースを飲み干し、くしゃっと潰すと他のゴミと一緒に紙箱に放った。
「こんにちは」
「えっ、こんにちは」
いきなり爽やか系に男子に声をかけられた。彼もオープンキャンパスに来たのだろう。
「教室の場所ですか?」
「いえ、幹さんですよね」
首から下がった名札を指され頷く。
「そうですが、私に何か」
少し警戒する。最近変なやつ多いからな。どっかの小説家とか。
「オレ森川です。森川治」
「森川?森川君の弟さん?」
「はいっ」
「初めまして、幹雅司です」
自己紹介すると、治は少し笑った。引っ掛かる笑い方ったが、流すことにした。
「ここ第一希望なの?」
ベンチの隣を勧めると、治は座って持っていた炭酸を一口飲んで、
「まだ迷ってんですよ。兄からはここの良さ?ってのは聞いてるんで。でももう一つ見たいのあって」
「君も建築士なりたいんだ?」
「そうですね、今んとこはそうかな」
変わるかもだけどと笑った。
治は兄の森川と違って、あまり人見知りせず、柔らかい雰囲気の男の子だった。
18だもんな、男の子って感じだよな。
一人納得してると、治がいきなり聞いてきた。
「幹さんからして兄はどんな人に見えますか?」
「えっ、オレから見て?」
変な質問だと思ったが真面目な顔で聞かれたので、考え考えか答えた。
「森川君は真面目な人だと思うよ。普通だったら放り投げるようなことでも考えて考えて答えを探す。見つからなくても自分の納得する答えに近いものを探す」
じぶんでも変なことを言ってるのを自覚して、幹は笑って答えた。
「上手く言えないけど、いい人だと思うよ。信じられる人っていうか」
兄を誉められ満足したのか、治は嬉しそうにありがとうと言った。
「いい人だね。幹さんって」
「オレが?」
ふと疑問を感じて尋ねてみた。
「森川君は俺の事なんてなんて言ってた?」
「幹さん?とっても世話になってる人って。ここの先輩なんだよね」
「そうだけど。オレは別に世話なんて」
下の世話か?まさかな。下世話過ぎた。反省する。
「どっちかって言うとオレの方が食事の世話になってるけど」
「もしかして幹さんって甘党?」
「そうだけど?」
「あんこなんて好きだったりする?」
「なんでわかんの?」
そこへ少しナンパな感じのイケメンがやってきた。
「森川、そろそろ時間」
「あ、そっか。今行く」
「来年お世話になるかも。その時は宜しくね、幹さん」
「ああ、こちらこそ宜しく」
手を振ると、嬉しそうに手を振り返す治。その隣でイケメンが誰?知ってる人?とか聞いていた。
幹は2人に背中をむけて背伸びをした。
「よしっ」
また館長にこき使われるか。
あと半日頑張ろうっ。
しかし職員は休みではない。
図書館司書の幹もほとんど仕事だった。
夏休み期間中でも学生はレポートや課題の資料集めに図書館にやってくる。
それでも学食は休みになるので、代わりに売店でサンドイッチやシュークリームなどを買って昼食を済ませていた。
中庭でそれらを食べていると、何人かの男女が前を通りすぎた。
女の子達がチラチラ幹を見ていく。それに気付き、あぁ、そんな時期かと頷く。
オープンキャンパスが始まり、高校生が全国からやって来る。施設を見学したり、体験学習を受けにやって来るのだ。
そう言えば、事務所の方から午後から封筒詰めを手伝ってほしいと言われていた。オープンキャンパス用の資料を大学の封筒に詰める仕事だ。
幹は封筒詰めは苦手だ。
仕事的には楽だし、何も考えずにできる。でも封筒に詰めるときささくれができたり、紙で指をきったりすることが多いからだ。
「やりたくねーな」
紙パックのグレープフルーツジュースを飲み干し、くしゃっと潰すと他のゴミと一緒に紙箱に放った。
「こんにちは」
「えっ、こんにちは」
いきなり爽やか系に男子に声をかけられた。彼もオープンキャンパスに来たのだろう。
「教室の場所ですか?」
「いえ、幹さんですよね」
首から下がった名札を指され頷く。
「そうですが、私に何か」
少し警戒する。最近変なやつ多いからな。どっかの小説家とか。
「オレ森川です。森川治」
「森川?森川君の弟さん?」
「はいっ」
「初めまして、幹雅司です」
自己紹介すると、治は少し笑った。引っ掛かる笑い方ったが、流すことにした。
「ここ第一希望なの?」
ベンチの隣を勧めると、治は座って持っていた炭酸を一口飲んで、
「まだ迷ってんですよ。兄からはここの良さ?ってのは聞いてるんで。でももう一つ見たいのあって」
「君も建築士なりたいんだ?」
「そうですね、今んとこはそうかな」
変わるかもだけどと笑った。
治は兄の森川と違って、あまり人見知りせず、柔らかい雰囲気の男の子だった。
18だもんな、男の子って感じだよな。
一人納得してると、治がいきなり聞いてきた。
「幹さんからして兄はどんな人に見えますか?」
「えっ、オレから見て?」
変な質問だと思ったが真面目な顔で聞かれたので、考え考えか答えた。
「森川君は真面目な人だと思うよ。普通だったら放り投げるようなことでも考えて考えて答えを探す。見つからなくても自分の納得する答えに近いものを探す」
じぶんでも変なことを言ってるのを自覚して、幹は笑って答えた。
「上手く言えないけど、いい人だと思うよ。信じられる人っていうか」
兄を誉められ満足したのか、治は嬉しそうにありがとうと言った。
「いい人だね。幹さんって」
「オレが?」
ふと疑問を感じて尋ねてみた。
「森川君は俺の事なんてなんて言ってた?」
「幹さん?とっても世話になってる人って。ここの先輩なんだよね」
「そうだけど。オレは別に世話なんて」
下の世話か?まさかな。下世話過ぎた。反省する。
「どっちかって言うとオレの方が食事の世話になってるけど」
「もしかして幹さんって甘党?」
「そうだけど?」
「あんこなんて好きだったりする?」
「なんでわかんの?」
そこへ少しナンパな感じのイケメンがやってきた。
「森川、そろそろ時間」
「あ、そっか。今行く」
「来年お世話になるかも。その時は宜しくね、幹さん」
「ああ、こちらこそ宜しく」
手を振ると、嬉しそうに手を振り返す治。その隣でイケメンが誰?知ってる人?とか聞いていた。
幹は2人に背中をむけて背伸びをした。
「よしっ」
また館長にこき使われるか。
あと半日頑張ろうっ。
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