愛なんか知らない

47

恋人になった日。初めての夜。
森川は結局終電には間に合わず、幹の部屋へ泊まった。本人が意図していたことは幹は気付いていない。
変なところ負けず嫌いの幹は、されるだけなのは嫌なので何度か反逆、襲撃したが、結局森川に反撃を受けた。それも倍返し、三倍返し。
幹はぐったりと横たわる。
「あー、心臓やばい」
ドクドク音が聞こえてきそうだ。
幹は森川に背中を向けた。
「幹さん？」
森川の声が心配そうに聞こえた。
幹は小さく、
「ぎゅっとしろよ」
と言うと、森川はクスッと笑い、姫の望み通りに後ろから幹を抱き締めた。
「一番これが好きだな」
「複雑な心境です」
腕に力を込める。
「このまま寝れたら気持ちいいな」
本当に寝てしまいそうな声だった。
ふと気付いて幹は森川から離れようとする。でも森川はがしっと離さない。
「おいっ」
「離しません」
「当たってる！」
「分かってます」
森川はうなじに顔を埋めて、腰を幹の尻に押し付けた。
「ぜってー無理」
「幹さん」
「トイレか風呂場で一人で抜いてこい」
森川はぐっと体全体を抱き締めて、
「このままでいいです。寝てください」
「寝れるわけないだろーが」
行けと森川の腕を外そうとしたが、益々力を入れて抱き締められる。
「付き合いきれねー」
結局のところ幹はワンコには待てができないのだった…