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次の日昼休み、幹はキツネ蕎麦の丼だけをトレイの乗せ空いているテーブルに着いた。
ため息が出た。
もそもそと蕎麦を食べていると、隣に香が座る。
「よっ」
香のトレイにはキチン南蛮定食が乗っていた。
「どうしたの?蕎麦なんて珍しいね」
「調子わりーの」
胃がムカムカする。
普通ならキチン南蛮好きな幹が選ばないわけはないんだが、今日だけは食指が進まない。
「変なの拾い食いでもした?」
香りが入り口の方に手を上げて合図をした。木皿と森川が来て、二人の向かいに座った。
「オレは野良犬野良猫じゃないから」
二日酔いかなと呟く。
「そんなに呑んだの?強いのに珍しいね」
「ソルティードック二杯だけ。やっぱりモンブランとの食い合わせが悪かったかな」
「普通ケーキと呑まないでしょ」
「メニューにあったんだからいいだろーが」
「どこよ。その店」
と聞くので、大型書店の名前を言った。
「そこの近く。花に偶然会って連れてかれた」
「花?相変わらずでしょ、あの子」
「あいつは結婚しても変わらねーな」
そこで香は悪代官みたいな顔で笑った。
「元カノの結婚式にお呼ばれする気持ちってどうよ」
近くを通りかかった女子学生がびくりとして幹を見た。幹は全く気付かず、
「別に。なんもないな」
木皿がびっくりしたような顔をしているので、なに?と目で聞く。
「いえ。普通付き合った子が結婚するのって複雑じゃないかと…」
「経験者?」
「違います!」
慌てて言って、香の様子を伺うように見た。
「元カノったって、友達の期間の方が断然長いし」
「そういうもんですか」
「旦那になる先輩も花も同じくらい好きだし」
今まで黙って下を向いていた森川が、
「古平さんも居ましたよね、昨日」
「古平さんって、晶さんの方?」
「うん。本屋でサイン会あったんだってさ。花と呑んでたとこに割り込んできた」
「あれ?森川くんもそこにいたの?」
香が気付いて尋ねると、
「従兄弟の結婚式に呼ばれて、年の近い従姉妹達と二次会やってました」
ふうん、あのワンピースの女子は従姉妹なんだ。
幹は立ち上がった。
「どうしたの?」
香に聞かれ、
「デザート買ってくる。蕎麦だとやっぱ足んねー」
売店に向かいながら、ちらっと思う。
でも、従姉妹同士って結婚できたよな。
仕事に戻り、幹が返却の本を戻していると森川がやって来た。
「なんか探してんの?」
「いえ」
森川はじっと幹を見つめて、
「今日食事作りに行っていいですか?」
「うち?」
幹は全て本を棚に戻したので立ち上がった。
「何を作ってくれんの?」
「幹さんが好きなもの言ってくれれば」
「じゃあさ、前に言ってたビーフシチューとクリームコロッケがいいな」
「時間掛かりますけど」
「オレ、今日は6時までだから帰るの7時前くらいだよ」
「時間掛かりますけど平気ですか?」
「腹減ってるだろうから帰って直ぐ食いたい」
「それじゃあ無理ですね」
がっかりしたように下を向く。
「待ってて」
幹は台車を押しバックヤードに入っていった。
「はい」
赤い革製のキーホルダーを森川にわたす。
「えっ」
「勝手に鍋とか使っていいから。帰ったら食べれるように頼むよ」
「これ…」
キーホルダーには鍵が一つ着いていた。
「うち、覚えてる?」
「勿論!」
「じゃあ、後で」
幹は少し照れたように笑って、
「腹空かして帰るからよろしく」
「はい。任せてください」
森川はキーホルダーを握りしめて図書館を離れた。
ため息が出た。
もそもそと蕎麦を食べていると、隣に香が座る。
「よっ」
香のトレイにはキチン南蛮定食が乗っていた。
「どうしたの?蕎麦なんて珍しいね」
「調子わりーの」
胃がムカムカする。
普通ならキチン南蛮好きな幹が選ばないわけはないんだが、今日だけは食指が進まない。
「変なの拾い食いでもした?」
香りが入り口の方に手を上げて合図をした。木皿と森川が来て、二人の向かいに座った。
「オレは野良犬野良猫じゃないから」
二日酔いかなと呟く。
「そんなに呑んだの?強いのに珍しいね」
「ソルティードック二杯だけ。やっぱりモンブランとの食い合わせが悪かったかな」
「普通ケーキと呑まないでしょ」
「メニューにあったんだからいいだろーが」
「どこよ。その店」
と聞くので、大型書店の名前を言った。
「そこの近く。花に偶然会って連れてかれた」
「花?相変わらずでしょ、あの子」
「あいつは結婚しても変わらねーな」
そこで香は悪代官みたいな顔で笑った。
「元カノの結婚式にお呼ばれする気持ちってどうよ」
近くを通りかかった女子学生がびくりとして幹を見た。幹は全く気付かず、
「別に。なんもないな」
木皿がびっくりしたような顔をしているので、なに?と目で聞く。
「いえ。普通付き合った子が結婚するのって複雑じゃないかと…」
「経験者?」
「違います!」
慌てて言って、香の様子を伺うように見た。
「元カノったって、友達の期間の方が断然長いし」
「そういうもんですか」
「旦那になる先輩も花も同じくらい好きだし」
今まで黙って下を向いていた森川が、
「古平さんも居ましたよね、昨日」
「古平さんって、晶さんの方?」
「うん。本屋でサイン会あったんだってさ。花と呑んでたとこに割り込んできた」
「あれ?森川くんもそこにいたの?」
香が気付いて尋ねると、
「従兄弟の結婚式に呼ばれて、年の近い従姉妹達と二次会やってました」
ふうん、あのワンピースの女子は従姉妹なんだ。
幹は立ち上がった。
「どうしたの?」
香に聞かれ、
「デザート買ってくる。蕎麦だとやっぱ足んねー」
売店に向かいながら、ちらっと思う。
でも、従姉妹同士って結婚できたよな。
仕事に戻り、幹が返却の本を戻していると森川がやって来た。
「なんか探してんの?」
「いえ」
森川はじっと幹を見つめて、
「今日食事作りに行っていいですか?」
「うち?」
幹は全て本を棚に戻したので立ち上がった。
「何を作ってくれんの?」
「幹さんが好きなもの言ってくれれば」
「じゃあさ、前に言ってたビーフシチューとクリームコロッケがいいな」
「時間掛かりますけど」
「オレ、今日は6時までだから帰るの7時前くらいだよ」
「時間掛かりますけど平気ですか?」
「腹減ってるだろうから帰って直ぐ食いたい」
「それじゃあ無理ですね」
がっかりしたように下を向く。
「待ってて」
幹は台車を押しバックヤードに入っていった。
「はい」
赤い革製のキーホルダーを森川にわたす。
「えっ」
「勝手に鍋とか使っていいから。帰ったら食べれるように頼むよ」
「これ…」
キーホルダーには鍵が一つ着いていた。
「うち、覚えてる?」
「勿論!」
「じゃあ、後で」
幹は少し照れたように笑って、
「腹空かして帰るからよろしく」
「はい。任せてください」
森川はキーホルダーを握りしめて図書館を離れた。
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