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幹は疲れていた。
授業が再開され、学生が大学に姿を見せるようになった。
レポートや卒論の締め切りのため、参考図書や資料を借りにいつより図書館を利用する学生が多くなった。
いつもはのんびり仕事ができたが、返却された本を戻す作業で毎日残業までする始末。
そちらが落ち着いたかと思ったら、棚卸しの為やっぱり残業が続いた。昼休みも食堂へ行く時間もなく、コンビニ弁当かカップ麺で済ませている状況だった。
やっと3月になり図書館も本当に落ち着いたが、幹は毎日だるく疲れきっていた。
昼休みも菓子パンを缶コーヒーで流し込み、図書館の隅のベンチで昼寝をしていた。
(カールに会って癒されたい)
そう思いながら、ベンチで丸くなって眠っていた。
首筋がさわっとなって、びくりと目を覚ました。
目の前の顔にビックリして跳ね起きた。
「な、なに」
苦笑して晶が幹の首筋に触れていた手を離した。
「ぐっすり寝ていたから」
「寝てたって勝手に触らないで下さい」
冷たい表情と声色を作って言う。
「可愛かったから、つい」
「なんであなたがいるんですか?」
「有田さんが今月僕のイベントしてくれるって連絡くれたから」
「あぁ」
毎月やっている“今月のおすすめ本”を古平慶でしたいと有田が言っていた。
昨日その準備で幹も手伝わされた。去年の講演会から余り時間を置かないでやった方がよいとの館長の判断だった。
「有田さん、カウンターにいませんでしたか?」
「話したよ。そしたら君がたぶんここにいるだろうって聞いてきた」
嬉しそうに笑って、
「そしたら君が落ちてたから拾おうかと思って」
「落ちてません。落ちてたとしても持ち主に返してください」
「お礼1割貰えるかな」
「1割ってどの位だろう」
にやりと笑って
「今受け取って良い?」
「は?」
なんのことやら考えてると晶の手が幹の後頭部に伸び、いきなりキスされた。
温かい舌が唇を割って来ようとするのを体ごと引き離す。
「なにすんだ、てめー」
怒鳴り付けると、晶はクスリと笑って人差し指を幹の唇に立てて当てる。
「静かに。ここは何処だっけ?」
悔しくなってベンチから粗っぽく立ち上がった。
行こうとする幹の手首を捕まえ、
「今夜のお誘いに来たんだよ」
幹は学生がこちらのコーナーに入ってきたのを見つけ、晶の手を振り払って、
「絶対行きません」
にっこり作り笑顔で言った。
そして失礼しますと優雅にお辞儀をしてそこを離れる。
後ろから晶の声が追ってきたが聞き流す。
「無理だと思うよ」
授業が再開され、学生が大学に姿を見せるようになった。
レポートや卒論の締め切りのため、参考図書や資料を借りにいつより図書館を利用する学生が多くなった。
いつもはのんびり仕事ができたが、返却された本を戻す作業で毎日残業までする始末。
そちらが落ち着いたかと思ったら、棚卸しの為やっぱり残業が続いた。昼休みも食堂へ行く時間もなく、コンビニ弁当かカップ麺で済ませている状況だった。
やっと3月になり図書館も本当に落ち着いたが、幹は毎日だるく疲れきっていた。
昼休みも菓子パンを缶コーヒーで流し込み、図書館の隅のベンチで昼寝をしていた。
(カールに会って癒されたい)
そう思いながら、ベンチで丸くなって眠っていた。
首筋がさわっとなって、びくりと目を覚ました。
目の前の顔にビックリして跳ね起きた。
「な、なに」
苦笑して晶が幹の首筋に触れていた手を離した。
「ぐっすり寝ていたから」
「寝てたって勝手に触らないで下さい」
冷たい表情と声色を作って言う。
「可愛かったから、つい」
「なんであなたがいるんですか?」
「有田さんが今月僕のイベントしてくれるって連絡くれたから」
「あぁ」
毎月やっている“今月のおすすめ本”を古平慶でしたいと有田が言っていた。
昨日その準備で幹も手伝わされた。去年の講演会から余り時間を置かないでやった方がよいとの館長の判断だった。
「有田さん、カウンターにいませんでしたか?」
「話したよ。そしたら君がたぶんここにいるだろうって聞いてきた」
嬉しそうに笑って、
「そしたら君が落ちてたから拾おうかと思って」
「落ちてません。落ちてたとしても持ち主に返してください」
「お礼1割貰えるかな」
「1割ってどの位だろう」
にやりと笑って
「今受け取って良い?」
「は?」
なんのことやら考えてると晶の手が幹の後頭部に伸び、いきなりキスされた。
温かい舌が唇を割って来ようとするのを体ごと引き離す。
「なにすんだ、てめー」
怒鳴り付けると、晶はクスリと笑って人差し指を幹の唇に立てて当てる。
「静かに。ここは何処だっけ?」
悔しくなってベンチから粗っぽく立ち上がった。
行こうとする幹の手首を捕まえ、
「今夜のお誘いに来たんだよ」
幹は学生がこちらのコーナーに入ってきたのを見つけ、晶の手を振り払って、
「絶対行きません」
にっこり作り笑顔で言った。
そして失礼しますと優雅にお辞儀をしてそこを離れる。
後ろから晶の声が追ってきたが聞き流す。
「無理だと思うよ」
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