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結局幹は晶と夜会うことにした。
何が食べたいかと聞かれたので、割り勘で焼き肉と答えた。
晶は苦笑しながらも了承した。フランス料理のディナーのコースを予約していると言われ、デザートに少し心が揺らいだが焼き肉、それもチェーン店の名前を言う。そこならデザートもあったはず。
席につくなり、晶は本を一冊渡した。
「前に言ってた新刊?」
ハードカバーの扉がシンプルなデザイン。タイトルは「運命の糸」
「やっぱりミステリー?」
開くとサインがしてあった。
「オレの名前」
「売らないでちゃんと取っておいて」
「ありがとう。読ませてもらうよ」
笑ってお礼を言うと、晶は赤くなった。
「そういう顔してくれるんだ」
嬉しそうに言われ、苦笑い。
「お礼はちゃんと言うよ」
「図書館にも明日は届くから」
「寄贈ありがとうございます」
少しおどけたように言う。そしてメニューを開き、店員を呼んだ。
食事しながらの会話は晶が話上手になので退屈には感じなかった。幹の仕事の話、曖の話、晶と曖の仕事の仕方。
「ストーリーで喧嘩になったりしないの?」
「どうしてそういう流れになるか話し合うからならないね」
少し考えて、
「たまに衝突はするけど」
「やっぱするんじゃん」
ミキの突っ込みに苦笑して、
「納得するまで話し合う。でないと書けないから」
幹はカルビを焼きながら、
「一人で書こうとは思わない?」
上目遣いで見られ、晶は幹の頬に掌を当てた。
幹は箸でその手を摘まみ、
「そういうの要らないから」
「残念。でも我慢する」
幹は焼き上がった肉を頬張ってそれには答えない。
「これからは分からないけど、今は二人で書いていくつもり」
「ふうん」
「24日は空いてる?」
「なんで?」
「今度こそ美味しいディナーをと思って。クリスマスイブだし」
「面倒だからいい。これで充分美味しいから」
「じゃあ、なんか欲しいのないかな?プレゼントするよ」
「要らない。ついでに言うと面倒な知り合いも要らないな」
幹は店員を呼んで、マンゴープリンを頼んだ。
「古平さんは?」
「僕はアイスコーヒー」
店員が行ってしまうと、幹は眉をひそめ、
「古平さんてMなの?」
「初めて言われたけど」
「オレ、結構失礼なこと言ってるけど怒らないから」
自覚はあった。でも本当に嫌っていたら、こんなふうに一緒に食事したりしないし、会ったりしないだろう。
「幹くんと話すの楽しいし、嬉しいよ。優しくしてくれたら、もっと嬉しいけど」
「セクシャルなのがなければ友達になるんだけど」
「ううん…悩むなそれは。口説いても良い知り合いか、口説けない友達か」
本気で悩む晶に幹は吹き出して、
「変なやつ」
丁度届いたマンゴープリンをスプーンですくった。
晶の言ってたように一緒に食事した翌日新刊10冊、他に図書館に在庫がなかった本が何冊か届いた。
香が新刊をさっそく借りて読んだらしく、幹の所に大騒ぎでやって来た。
「なに、なに、これ」
「オレも読んだ。結構面白かった」
「そうじゃなく!」
そして幹の顔をじっと見て、
「気付かなかったの?」
「何が?」
「この主人公の相手役まんまミキちゃんじゃない」
「はぁ?」
内容を思い出し、
「主人公って探偵役の男だろ?」
相手なんていたか?
「相手役って?」
「主人公の友人」
「そっちも男だったよな」
「そうだよ。今回はBLバージョン」
「Bはあったけど、Lはなかったろ?」
香は呆れたように
「あったでしょ。深く読めば」
「あったか?」
なんでもBLにしたいんだな、腐女子は。幹はため息をつく。
しかし、他の人にも友人役が幹をモデルにしてるのではないかと次々に言われ、幹は否定してほしくて晶にメールをした。
直ぐ返信が来た。
「そうだよ。ちなみに探偵は僕ね」
「無断で何してくれてんだよ」
「クレームはメールでなく直接会って承ります」
何が食べたいかと聞かれたので、割り勘で焼き肉と答えた。
晶は苦笑しながらも了承した。フランス料理のディナーのコースを予約していると言われ、デザートに少し心が揺らいだが焼き肉、それもチェーン店の名前を言う。そこならデザートもあったはず。
席につくなり、晶は本を一冊渡した。
「前に言ってた新刊?」
ハードカバーの扉がシンプルなデザイン。タイトルは「運命の糸」
「やっぱりミステリー?」
開くとサインがしてあった。
「オレの名前」
「売らないでちゃんと取っておいて」
「ありがとう。読ませてもらうよ」
笑ってお礼を言うと、晶は赤くなった。
「そういう顔してくれるんだ」
嬉しそうに言われ、苦笑い。
「お礼はちゃんと言うよ」
「図書館にも明日は届くから」
「寄贈ありがとうございます」
少しおどけたように言う。そしてメニューを開き、店員を呼んだ。
食事しながらの会話は晶が話上手になので退屈には感じなかった。幹の仕事の話、曖の話、晶と曖の仕事の仕方。
「ストーリーで喧嘩になったりしないの?」
「どうしてそういう流れになるか話し合うからならないね」
少し考えて、
「たまに衝突はするけど」
「やっぱするんじゃん」
ミキの突っ込みに苦笑して、
「納得するまで話し合う。でないと書けないから」
幹はカルビを焼きながら、
「一人で書こうとは思わない?」
上目遣いで見られ、晶は幹の頬に掌を当てた。
幹は箸でその手を摘まみ、
「そういうの要らないから」
「残念。でも我慢する」
幹は焼き上がった肉を頬張ってそれには答えない。
「これからは分からないけど、今は二人で書いていくつもり」
「ふうん」
「24日は空いてる?」
「なんで?」
「今度こそ美味しいディナーをと思って。クリスマスイブだし」
「面倒だからいい。これで充分美味しいから」
「じゃあ、なんか欲しいのないかな?プレゼントするよ」
「要らない。ついでに言うと面倒な知り合いも要らないな」
幹は店員を呼んで、マンゴープリンを頼んだ。
「古平さんは?」
「僕はアイスコーヒー」
店員が行ってしまうと、幹は眉をひそめ、
「古平さんてMなの?」
「初めて言われたけど」
「オレ、結構失礼なこと言ってるけど怒らないから」
自覚はあった。でも本当に嫌っていたら、こんなふうに一緒に食事したりしないし、会ったりしないだろう。
「幹くんと話すの楽しいし、嬉しいよ。優しくしてくれたら、もっと嬉しいけど」
「セクシャルなのがなければ友達になるんだけど」
「ううん…悩むなそれは。口説いても良い知り合いか、口説けない友達か」
本気で悩む晶に幹は吹き出して、
「変なやつ」
丁度届いたマンゴープリンをスプーンですくった。
晶の言ってたように一緒に食事した翌日新刊10冊、他に図書館に在庫がなかった本が何冊か届いた。
香が新刊をさっそく借りて読んだらしく、幹の所に大騒ぎでやって来た。
「なに、なに、これ」
「オレも読んだ。結構面白かった」
「そうじゃなく!」
そして幹の顔をじっと見て、
「気付かなかったの?」
「何が?」
「この主人公の相手役まんまミキちゃんじゃない」
「はぁ?」
内容を思い出し、
「主人公って探偵役の男だろ?」
相手なんていたか?
「相手役って?」
「主人公の友人」
「そっちも男だったよな」
「そうだよ。今回はBLバージョン」
「Bはあったけど、Lはなかったろ?」
香は呆れたように
「あったでしょ。深く読めば」
「あったか?」
なんでもBLにしたいんだな、腐女子は。幹はため息をつく。
しかし、他の人にも友人役が幹をモデルにしてるのではないかと次々に言われ、幹は否定してほしくて晶にメールをした。
直ぐ返信が来た。
「そうだよ。ちなみに探偵は僕ね」
「無断で何してくれてんだよ」
「クレームはメールでなく直接会って承ります」
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