灰色ノ魔女

マメ電9

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第一章 白黒から虹色に

第九話 生きろ

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白竜の谷へ着いた。


「霧がまた濃くなってる・・・帰りの時は晴れていたのに」

これじゃあの場所がどこかわからない

その場で立ちつくしていると、突然少し向こうの空が明るくなり、光の柱があがった。


「あそこか!」

光を目印に無我夢中に走る。
もう時間が無い。

光源に辿り着くと、母親の身体がマナに変わっていくところだった。

身体が半透明になっている。

「待って!お願いまだ逝くな!!」

駆け寄ろうとした。

でも、私は足を止めた。

腕の中で眠っていた子ドラゴンがクタっとしていることに気づいたからだ。


「おチビ!ちょっと嘘だろ?!だめ!死ぬな!」

その場に座り込み、急いで魔力供給をしようと魔力を集めるが上手くいかない。


くそ!くそ!なんで!

あの時は出来たのに!


頼む!死なないで!


焦れば焦るほど、魔力集中は困難となり、シロナはパニック寸前だった。

そこへ突然声が聞こえた。





《人の子よ》


・・・っ!

誰?!

当たりを見回すが誰もいない。

そしてその声は肉声では無く、頭に直接話しかけてくる。

《人の子よ、私はその子の母。何故我が子を助けようとする》


ドラゴンのマナから聞こえる声。
この声の主は母親のドラゴンだと気づいた。

《その子は人が嫌う魔物です。何故そんなに必死になっている》




何故かって・・・?



そんなの私が聞きたいくらいだ。


自分自身が一番死にたがってたくせに、どうしてこんなにも、この子を助けたいのか。


こんなにも必死になっているのか。




・・・でも、これだけはハッキリしてる。

私は・・・



「この子を死なせたくない!」






《・・・変わった人の子よ。貴女のような人間に出会ったのは、これで2人目です》

え?ふたり?

《いいでしょう、あなたに私の力を授けます。・・・受け取りなさい》

すると沢山の光の粒が天高く舞い上がり、そのマナは私に向かって降り注いだ。

ドラゴンの魔力が私の中へ流れ込んでくる。

それは、私の中の透明の液体に、綺麗な光り輝く液体が注がれるかのように。

そして魔力が混ざり合う。



その様子を、エレティナから話を聞き、後から追ってきたルークがみていた。

「・・・・・・」


母ドラゴンの魔力は子ドラゴンにも吸収された。
目を覚まし、すっと起き上がる。

「おチビ!・・・・・・・・・良かった・・・ホントに・・・良かった」

思わず目から涙が零れる。

もうダメだと思っていた。

でも


奇跡は起こった。


それをじっと見つめる子ドラゴンは視線を変え、朝シロナに噛んだ場所をぺろぺろと舐めだした。

私のこと許してくれるのか・・・。

頭を撫でようと手を近づけると、自分からスリスリしてきた。

すると、またマナから声が聞こえる。

《これから先、貴女の中で見守り続けています》

《我が子を、そして・・・》





《貴女も》



すると母ドラの身体は完全にマナとなり。そのマナが分散していく。

《人の子よ・・・》






《生きなさい》






マナが消えてもその場をぼーっと見つめていると
手の中に何かがあるのに気づいた。

そこには、羽根とウロコと小さな魔石があった。


「生きなさい・・・か・・・」

後ろから人の足音が聞こえ振り向くとそこにルークが居た。

勝手に一人でここに来てしまったこと、怒ってるかな。

でも、聞いて・・・

「ルーク・・・私・・・」

・・・?あ・・・れ・・・?

視界がクラっとする。
そして意識も掠れる。

しかし、倒れそうになる私の身体をルークが受け止めてくれた。

「全くしょうが無い助手だな・・・無茶ばっかりして・・・」


「・・・お疲れ様。」



何かルークが言っていたような気がしたけど、意識がボーッとして聞き取れなかった。

そして、私は瞳を閉じた。





あれから何分が経っただろうか。

ゆさゆさと揺れる振動。
何かに運ばれている感覚。
そして、それは暖かい。

ゆっくり目を覚ますと、そこはエレティナの店の前だった。

「起きたか?」

ルークの声が凄い近くで聞こえたので、バッと上を向くとルークの顔がすぐそこにあった。

「・・・???。ルーク・・・?」

そして、ようやく状況を把握した。
私はお姫様抱っこをされていた。

お腹の上には子ドラゴンがスヤスヤと眠っている。

まさか、この状態で谷からずっと歩いてきたのか!!

待って!待って!
これ!
めっちゃ!
恥ずかしい!!!

公然の面前で醜態を晒してしまった事を想像したら、顔が真っ赤になるのが分かった。

今すぐ暴れてやりたい所だけど、子ドラゴンがお腹の上で眠っているので出来ない。

ここは、冷静に・・・

「ルーク・・・恥ずかしいから、早く降ろせ」

偉そうないつものシロナの態度に、ルークは安堵した様子。
「元気そうでなによりだ。無茶娘」
「変な名前をつけるな」

そして私達は店の中へ入った。
すると目の前が突然真っ暗になり、
息が出来なくなった。

エレティナが抱きついてきたのだ。

「シロちゃ~~~ん!大丈夫だったの?!心配したんだから!!」

く、苦しい・・・っ!
息が・・・っ!

もうダメだと思ったその時、シロナのお腹らへんから

「キュ~」

という声がした。

「エレティナそのへんにしとけ、二人共窒息死するぞ」
「あら!ごめんなさい!つい!」

エレティナはようやく解放してくれた。
「ゲホッゲホッ!今ッ死ぬかと思ったッ」

咳き込む私の肩にチョンと子ドラゴンが乗っかってきた。

「クゥン!」

もう元気いっぱいの様子。

「おチビ、ありがと。大丈夫だから」

その光景を見たエレティナはポカーンと口を開けている。

「驚いたわ・・・あんなに弱りきっていたのに。しかもかなり懐いてるし」

私も何が起こったのかいまいち解ってないけど、さっきの出来事をそのまま2人に伝えた。




「ドラゴンのマナと会話もして、それに加え魔力まで・・・そんな事人間には出来ないハズだけど・・・」

エレティナは信じられないようだ。

仕方ない、ちょっとやってみようか・・・
少しだけなら大丈夫だろうし。

私は右手に魔力を練った。
その手を子ドラゴンへ近づける、するとその魔力はドラゴンへ完全に吸収されていった。

「これで信じてくれた?」

目の前で不可能を可能にしてしまったので、もう何も言えなくなった。

「分かったわよ!そんなの見せられたら信じるわ。それで?素材も手に入ったって?」

そうだった!

言われて思い出した私は急いでバッグの中から取り出した。

「どーぞ。羽根とウロコだろ?」

素材を受け取ったエレティナは、鑑定のような仕草で素材を触る。

するとルークがバッグに指を差してこう言った。
「シロナ、あの魔石も渡してやれ」

そう。
私は素材と一緒に謎の魔石も貰ったのだ。
それを言われたとおり、エレティナに渡す。

エレティナの表情が一変する。

「こ、ここここ、これはー!」
それにビクッとする、シロナとおチビ。
「な、何?!いきなり!」

「シロちゃん!これ魔石じゃなくて、魂魔結晶よ!」

はい。また謎な単語が出てきたぞ。
なに?
コンマ結晶?

それをエレティナは察した。

「あ~分からないのよね!えっとね、簡単に説明すると、これは超貴重な物で!魔石の何倍もの力を秘めていて!魔物が死ぬ時に稀に発現する結晶のことよ!」

えっと・・・
とりあえず、超レアアイテムってことか??

エレティナは素材と結晶を持って奥部屋に行こうとする。
「シロちゃん・・・4時間くれる?・・・あなたに合う最高の魔具を作ってきてみせるから!」

エレティナの目は、もはや極みの職人の目をしていた。
これに断る理由は無いだろ。

「よろしくお願いします」

承諾を得ると、親指を立てて合図を返してきた。


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