灰色ノ魔女

マメ電9

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第一章 白黒から虹色に

第二話 魔物のルーク

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 また暗闇。
どこまでも深く沈んでいく闇。



私は死んだのか?

手は動く、しかし足は地についておらず浮かんでいる、いや落ちてる?

暗すぎてどこまで落ちていくのか分からない。

これが死後の世界なのか・・・

 そう考えていると前方からボタッボタボタと何かを落としながら近づいてくる気配がした。

暗闇で見えないはずなのに、何故かその気配の生き物だけボヤっと光っていてすぐ確認することができた。

あれは、魔物だ。

獣の魔物。

あの日村で暴れて父さんを殺した魔物に似ていた。

それは何かを咥えてズルズルと引きずりながら私に近づいてくる。

「ッ・・・嫌、来るな・・・ッ来るな!!」
咥えてきたもの、それは父さんだった。
血まみれでぐったりとしている。

あの日の事がフラッシュバックした。

嫌だ、嫌嫌嫌嫌嫌!!!

死んだはずなのにドクドクと脈打ち、体から何かが沸き立ち吹き出そうになる。
 すると血まみれの魔物は父さんから離れ私の首元に噛みついた。

大量の吐血。
死んでも血が出るのか。

私を押し倒し噛みついたまま魔物が話し出した。

「人間・・・よくも、よくも私の大切な娘を・・・殺す、人間殺す!!」

娘・・・?いったい何の・・・話・・・を・・・・・・。

周囲が光に包まれた。

 暖かい。

目を覚ますとそこは死後の世界ではなくベッドの上だった。

どういうこと、私は死んだんじゃ?

ゆっくり体を起こす。
周囲をキョロキョロと見渡すシロナ

その部屋はログハウスの作りで4畳半くらいの広さ、机にイス、本棚もあって小さな小窓もついていた。
その窓からは久しぶりに浴びる日差しが差し込んでいて、とても落ち着く雰囲気だ。

「どうなってるんだ・・・」

取り合えずここを出よう。

そう考え立ち上がった。
そして気づいた

服が変わってる??!

着ていたボロボロのシャツではなく、白いワンピース型の部屋着に変わっていた!

えええ??なんで、いやちょっと待て、髪の毛もなんかサラサラして・・・体も臭くない・・・

あ~ら不思議!風呂なんてちゃんと入れてなかったはずの汚れた体がきれいになっているではありませんか!!

困惑した。
いや普通する。
ビックリどころの話じゃない。
これは事件だ!!

 そして厳重警戒で部屋を出た。
木材のいい香りのする廊下を進むと下に降りる階段を見つけた。
3段ほど降りて1階の様子を確認する。
ここも落ち着く雰囲気で、暖炉があってその近くにソファーもあって、先ほど誰かが作ったであろうスープが二つ机に並んでいた。

あぁいい匂い・・・。

日頃ろくに食事をとっていなかった私にその香りは効果抜群だった。

「あ、起きたか娘」
「!!!」

机の向こう側にキッチンがありそこでゴソゴソしていた人が私に気付いた。

「早く降りてこい」

何となくその指示に従い階段をゆっくり降りていく。
その人は身長高めの青年で、肌は白く紅い瞳で銀髪。
綺麗だった。

でも料理をしていたからか帽子とエプロンをつけていたのでちょっと残念な感じ。

私は恐る恐る口を開いた。
「あの・・・私は何故ここに。この服は・・・」
「あぁ、かなり汚れていたから洗濯した。服は妹が着ていたものしかなくて。まぁピッタリみたいでよかった」
「あ、ありがとうございます」

妹がいるのか、てっきり一人暮らしかと思った。

「ほらスープが冷めてしまう、早く食べろ」

そう言うと彼は私を椅子に座らせた。
色々ありすぎて頭がついてきてないけど、呪われた子と村の人に嫌われ相手にされなかった日々を思うと、この親切さがとても暖かくてこそばゆい。

 そして私はスープを口に運んだ。

・・・めちゃくちゃ美味しい!!!!!!
なんだコレ?
なんだコレ?!

何を入れたらこんな美味しいものが作れるんだ??!
やばい、止まらない!

「そんな急がなくても、おかわりもある」
「すいません、ここ数年ろくに食べていなかったもので・・・こんな美味しいスープまでありがとうございます」

「いや、別に構わないが。昨日いきなり家の前で倒れられた時は驚いたな」

ん?今この人何て言った? 

家の前で?   

待てよ、じゃぁここは・・・


食べ進めていた手をピタッと止め、引きつった顔で彼を見る。

こいつ・・・もしかして・・・




「あんた・・・まさか、魔物か?」



青年は真剣な顔をしてため息をついた。

「魔物ね、まぁ半分はそうだな」
「半分?」

青年は被っていた帽子をとる。そしてぴんと立った獣の耳が現れた。

「俺はハーフ、人と魔物の間の子だ」

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