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第2章 建国祭編

32話

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「お前ら揃ってるなぁ?五人組の班を作れ」

俺たちは帝都から北に馬車で3日行った所にあるロトムという街の奥にあるカナリアという森にクラスとガバーロ率いる補助の教師達と来ていた。

今からこの森を使った実践形式の演習を行うとの事らしい。

カバーロの指示でどうやら五人組の班を作らなければならない。

「五人組って言われてもな~」

自然とエド、エミリヤ、リリスの4人で固まっていた。
入学して一ヶ月も経てばそれなりにグループは出来上がっており周りを見渡せばチームは殆どでき始めている。

「別に四人でもいいじゃない。私達なら問題ないでしょ」

リリスさんや、このクラスは三十人だから先生は組みやすいように五人って指示したんですよ…
問題があるないの話じゃないと思うだけどな。

色々と可哀想でしょ!残された一人が!!

俺は誰かいないかと更に見渡していくと一人の男が目にはいる。
周りはチームの交渉等をしてるのにそいつだけは何もせず俯きただ突っ立っていた。

「よっ。まだチームは組んでないのか?」

「誰も僕とは組みたがらないから…」

「俺たちと一緒に組めばいいぞ。別に気にしたりしないから」

確かに彼はクラスでも浮いてる方だった。特に親しく話す人もおらず一人でいる事をよく目にしたっけな。

「五人組だろ。俺たち四人じゃ足りないし他の奴らはもうほぼ固まってるから、こっちからお願いするわ」

誘っても渋っていた彼にそう言い無理やりみんなも元に連れていく。

「お待たせ、一人確保してきたぞ」

「お、レイが誰か連れてきた」

エドは俺が連れてきた男を覗き込む。

「えっと…誰だっけ?」

あ、俺も誘ったけど名前知らなかった…

「あ、その、えっと…カグラ」

「なんか女みてぇな名前だな」

エド失礼すぎないか

「ちょ、ちょっとエド君!ごめんねカグラ君。エド君がいきなり失礼な事言ってしまって」

カグラに向かって何回も頭を下げながら謝るエミリヤは本当に良い子だなと思う。

改めて俺たちもカグラに自己紹介をする。

「ほんとに僕何かで良かったのかな?その…ぼく、無能だし」

無能?確かにクラスの奴がそう呼んでるのを聞いた事があるような。

「僕、無属性しか使えないし本当はこの学院に入れなかったんだ。たまたま入学前に欠員が出て補欠で僕は入ったんだ」

「別に無属性しか使えなかろうが、補欠でたまたま入学できただろうが別にいいじゃねぇか!これから強くなればよ」

エドは笑いながらカグラの背中をバシバシと叩く。
こういう時エドのこの明るさは長所だなと思う。

「よーしお前ら、組は出来上がったか?」

各々、組が出来上がったのを見計らった様に確認をカバーロがとる。

「これからお前らには、この森でサバイバル演習を行ってもらおうと思う。クリア条件はこの森の中心にある祠に置いてある、この玉を持って帰ってくること。タイムリミットは明後日の日没だ。食料は自分達で確保、五人組で協力し合ってゴールしてくれ」

ガバーロは水色の手のひらサイズの玉を掲げみんなに見せ分かったかと確認をとる。

この森の中心まで行き帰ってくるのに明後日の日没までなら距離的にはそう難しい事ではない。座学で学んだサバイバル術を活かしグループでの協調性等を実践で学ばせたいのだろうと俺は思った。

「俺はここに残るが、補助の教師達には森の中で待機してもらう。もし何か問題が起きた時は、今から渡す発煙弾を打て。そうすれば近くの教師が助けにいく。森には災害ハザード級だが魔物がいるから気をつけて演習に臨んでくれ。では演習始め!」

魔物のランクには災害ハザード級、厄災ディザスター級、災禍カラミティ級、天災カタストロフ級の四級に分けられる。

ここには魔物ランクでは最下級の災害級しか生息していないみたいだ。

ガバーロ先生の合図と共に班毎にそれぞれ森に入っていく。

「よし、俺たちも行くか!」

エドの元気な出発の合図に俺たちも森の中に向かっていく。

「野宿なんて冗談じゃないわよ」

リリスは不機嫌である。
野宿もそうだが、虫が大嫌いなリリスは森に入るのを心底嫌がっていた。

「昔、森で修行したのを思い出すな」

「あんなの思い出したくもない記憶だわ」

リリスにはトラウマになってるようで軽く鳥肌が立っていた。

森でのサバイバル演習が始まったのである。



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