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第1章 学院入学編
19話
しおりを挟む「皆さん急な招集に応じてくれてありがとうございます」
生徒会室にある円卓にそれぞれのネームの所に座り俺は円卓とは別に用意された椅子に座り始まりを迎えていた。
「急な招集はいいとして何故グラスティスがいる?」
不機嫌さをまるで隠さずそう言い俺に視線をおくるニグブル先輩である。
俺の風紀委員としての態度が気に食わないのか委員会中も色々と小言を言ったりと面倒だ。
「今回の招集の件と直接関わるから彼にも同席してもらいます。では早速本題に入ろうと思います。昨日男子生徒が魔道具を使い魔力暴走暴走を起こした件です」
メンバーは昨日騒ぎがあったのは知っていただろうが魔力暴走を起こしていた事は知らなかったのか大半の先輩方は驚いていた。
そして先輩は昨日俺から聞いた事を自分なりの言葉で説明していく。
反貴族に掲げる学生運動には反貴族主義を掲げ自由主義を謳う革命軍が裏で糸を引いていること。
革命軍には皇国だけでなく王国まで支援していること。
今回使われた魔道具は、王国が以前の戦役で使用したT兵器の技術が用いられてること。
メンバーの反応は様々だ。
「平民が革命軍なぞに唆されて調子にのっているだけじゃないか」
「この学院で貴族の身分をふりかざす貴族にもこの溝を深めた責任があるのではないのですか?」
ドベールの発言に直ぐに異を唱えたのは副会長のララムである。
「学生運動なんかに参加してる生徒は排除すればいいわ」
「カレンさん排除とは過激ですよ。彼らの中にも行き過ぎた行いをする生徒もいますが主張は身分による差別の撤廃平等な学院生活という学院の理念同じであって尊重されるべきこと。そして私たちの中にも貴族身分をいい事に他生徒へ色々と強いる方もいます。片方は抑えつけ片方はそれをしないのは大変不平等ではありませんか」
カレンの吐き捨てるようなセリフに少し語気を強める会長に今度はオルタが問いかける。
「会長、今回のこの騒ぎを起した男子生徒の処分は如何されるつもりですか?もちろん退学処分ですよね?」
「処分については現在保留中です。幸い人的被害も無かった事ではあるし重い処分にはなるだろうけど退学は考えていません」
──ドンッ!
「退学はないですと!?」
いきなり机を叩き怒りを露にしたのはドレクである。
「ドレク君今回の被害者の女子生徒が貴方の妹なのは知っているわ」
「そうです!その生徒はうちの領内の民のようで話も聞かず妹に父の非難だけでなく暴力を振るったようではありませんか!その非難も全くの言いがかり!父は領民を愛しています先月起きた大規模災害時も素早く対応し今だって私財を投げ打って領民第一に考えています!」
まずいな──
ドレクは皇帝派の貴族だ。いくら皇帝派と言えど実害が平民からもたらされたとすれば怒りに任せて貴族派につく可能性もある。
「会長、ドレクの怒りは最もではありませんか?その男子学生はまるで飼い主に噛み付く狂犬です。帝国の敵である革命軍に組みし更には王国の違法魔道具マナンスアッパーまで使用し、下手をすれば魔力暴走により学院でT兵器が爆発する所だったんですよ。貴方のこれまでの生徒間の融和という甘い対応が招いた結果ともとれませんか?」
オルタがここぞとばかりに会長に強気な批難を行う。生徒会のバランスも拮抗が崩れ貴族派に偏ってきた事はここにいるみんな感じてきていた。
オルタ率いる貴族派は口角を釣り上げ得意げに会長を攻めに入りだす。
だが、何かひっかかる。
なんだこの違和感は───
リリスは会話に入っていないが特にオルガに視線が固定されている。
そしてルディ先輩、なぜそんなに他人事みたいな顔をしてるんですか…あ、今欠伸したし。
これでは2対4の皇帝派に不利な構図になる
だがそれだけではない。
俺が入学してから皇帝派、貴族派、平民その均衡は危うくも保たれていた。でも今の状況は──
貴族派による平民への圧力それによる反貴族運動の活性化そしてそれを通しての生徒間の溝の深まり。ドレク先輩を見れば分かる皇帝派の貴族へも被害が皇帝派からの貴族派の勢力拡大、学院の理念どころではなく会長の求心力まで低下している。
──貴族派も絡んでいるのか?
それからしばらく生徒会メンバーでの応酬は続く。
「何か早急に手を打たなければならないのは事実ではありますね。それに来週には生徒総会も開かれます」
来週には生徒総会が開かれる。だが今の現状での生徒総会は決して無事に済むとは誰も思ってはいないだろう。
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