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「母は娘の気持ちになりたい」

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うちの娘が非行に走っている。
高校生なのに、派手な化粧をして、髪を明るく染めて、スカートは短くして……。
いつも、夜遅く帰ってくるし、スマホは繋がらないし、学校もサボってる時があるみたいだし……。
私……もう、どうしたら……。
 小さい頃は、こんなじゃなかったのに……。
私が、反抗期もない、真面目で平凡な人間で生きてきたから……あの子の気持ちが分からない……!!!

……あ、そうだ……これよっ!!

(娘が家に帰ってくる)
「はぁ……。だる。家に帰んのもめんどい……」
「おかえり~!」
「……何それ……」
「あ、これ~?ギャルメイクしてみたんですけど~?どう~?似合ってたら嬉ぴよ~🎵」
「……何その言葉……。キモいんだけど」
「キモいって言われて、マジぴえんっ。卍~」
「卍って今、流行ってないから」
「そうなの~?おけまる水産~🎵」
「その言葉も流行ってないし、キモいからやめて」
「教えてくれて、あざまる水産~🎵」
「キモい!!本当もうやめてよ!!ウザイ!!なんなのもう!!」
「……お母さんね、ずーっと真面目に生きてきたの。だから、美香の気持ち少しでも分かろうとして、こんな格好して、今の若者っぽくしてみたの。ふふ……結構楽しいね、これって。似合ってないんだろうけど……。美香とも久しぶりにこんなに話せて、嬉しかった」
「……別に似合ってなくはないんじゃない……?」
「え……?」
「確かに、普段メイクしないから、化粧の仕方は下手だけど、ちょっと整えたら、良くなるんじゃないの……」
「あ……ありがとう……。あ、違った!あざまる水産~🎵まじ卍~」
「だから、それ誰も使ってないって」

そうして私は娘と久しぶりに笑いあったのだった……。


【娘からの後日談】
家庭訪問の時も、母がギャルの格好をしていた。
「え、先生のネクタイ可愛い~♥️あげ~🎵」
「頼むからやめて……」
「あ、間違った~。あげぽよ~🎵」
「いや……言い方が違うんじゃなくて……」
「楽しいお母様ですねっ」
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