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第一章 中核都市デン・ヘルダー
第二十五話 貴賓室とラウンジ
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総旗艦ニーベルンゲンの貴賓室にジカイラ達とラインハルトが集まる。
ジカイラが、呆れたようにラインハルトに話し掛ける。
「しかし、派手だな。辺境の自治領主が三千人ばかりで騒乱を起こしたからと言って、帝国の四個方面軍を動員してくるなんて。四個軍団で四十万人、諸兵科を合わせたら動員兵力百万人の大軍勢だ。 ゴキブリ一匹、退治するのに大砲を使うようなものだろう?」
ラインハルトが苦笑いして答える。
「他の港湾自治都市群や諸外国に帝国の軍事力と動員力を見せつけておく必要があるからな。火種は燻っているうちに消してしまわないと。火事になってからでは遅い」
ジカイラが追従する。
「ま、それはそうだがな」
ラインハルトが続ける。
「帝国が港湾自治都市群に軍事介入する口実を探していた事も事実さ。港湾自治都市群による麻薬取引、奴隷貿易、人身売買を見逃すつもりはない。革命党や秘密警察との関係についても同様さ」
ヒナが思い出したように口を開く。
「そう言えば、デン・ヘルダーの港付近の倉庫街に彼等の拠点があったわ」
ラインハルトが答える。
「良く調べてくれたね。ヒナ。詳細は、ジカイラから聞いている。このまま、デン・ヘルダーに向かい、検挙するつもりだ」
ラインハルトから褒められ、照れたヒナの顔が赤くなる。
ティナがラインハルトに尋ねる。
「蜥蜴人たちは、どうなるの?」
「本来なら、デン・ホールンへの襲撃を罰するところだが、今回は事情が事情だけに恩赦するよ。デン・ホールンの遺族には、直轄都市としたデン・ヘルダーの収益から遺族年金を与える」
ケニーもラインハルトに尋ねる。
「海賊の鮮血の涙は?」
「・・・海賊?」
ラインハルトは、そう口にすると、ジカイラの方を見る。
ジカイラは、ラインハルトに目配せする。
「私は、海賊船など見ていない。そういう事だ」
ラインハルトの答えに一同は安堵する。
ラインハルトが続ける。
「昼食を用意した。皆、久しぶりに帝都の味を堪能してくれ」
そう言うと、ラインハルトは貴賓室から退出していった。
ジカイラ達が昼食を取っていると、エリシスが貴賓室にやって来る。
「食事中、失礼するわ」
ジカイラが答える。
「どうぞ」
エリシスは、ルナの近くの席に座り、話し掛ける。
「久しぶりね、ルナ。どう? 元気にしている?」
ルナが明るく答える。
「はい! エリシス様!」
「手紙、ありがとう。港での初デートは、楽しかった?」
ルナは、照れながら答える。
「はい。とても」
「ルナの彼氏というのは?」
ルナは、隣で食事をしているケニーの腕をとって、エリシスに紹介する。
「この人です! エリシス様!!」
突然、話しに巻き込まれたケニーは、驚いて狼狽える。
「え!?」
エリシスは、ケニーを眺めて、呟く。
「貴方がルナの彼氏?」
(・・・小柄で、なんだか、あんまりパッとしない男ね)
ケニーがエリシスに答える。
「はい」
ルナが、エリシスに力説する。
「ケニーたんは、とても強くて、ルナに優しくて! ルナは、ケニーたんが好きです!!」
エリシスが二人に優しく微笑む。
「そう。ルナは素直な娘だから、この子の事をよろしくね」
ケニーは、緊張気味に答える。
「判りました」
ケニーの答えを聞いたエリシスは、貴賓室から退出していった。
帝国四魔将は、士官用ラウンジのバーに集まっていた。
ヒマジンがアキックスに話し掛ける。
「こんな辺境の些事に、百万の軍勢を動員するなんて。陛下は、やり過ぎじゃねぇのか?」
アキックスがヒマジンを諭す。
「『帝国の確固たる意思』を諸外国や港湾自治都市群に示す『示威行為』だろう」
ナナシもヒマジンを諭す。
「そのとおりだ。『新皇帝の帝国は、辺境の些事も見逃さず、本気で事に当たる』と、帝国内外に示す絶好の機会だ」
三人が話していると、エリシスが上機嫌でラウンジにやって来る。
アキックスがエリシスに話し掛ける。
「どうした? エリシス。随分とご機嫌だな」
エリシスが微笑む。
「ルナに彼氏ができたのよ」
アキックスも目を細めて微笑む。
「ほう? あの娘も青春しているようだな」
ヒマジンがエリシスに尋ねる。
「その彼氏って、誰なんだ?」
エリシスが答える。
「陛下の御友人よ。同じ小隊だった小柄なスカウトの」
ヒマジンが思い出したように話す。
「ああ。アイツか」
エリシスがアキックスに話し掛ける。
「皇妃様が陛下と一緒になった時の、あの時の、貴方の気持ちが良く判るわ」
アキックスが微笑む。
「そうか。『親心』というやつだな」
エリシスも微笑み返す。
「可愛がっていた子が、伴侶の元へ行くというのは、嬉しくもあり、寂しくもあるわね」
アキックスが答える。
「そうだな」
ナナシが口を開く。
「『人の営み』というやつだ。生業で身を立て、伴侶を見つけ、子を産み育てる」
エリシスがナナシに答える。
「あの娘の子は、どんな子供になるかしら?」
ヒマジンが口を開く。
「獣人三世と人間の子か。八分の一の混血だと、ほとんど人間に近くなるだろうな」
エリシスがヒマジンに答える。
「どんな子が産まれるのか、今から楽しみだわ」
昼食を終えたジカイラ達は、総旗艦ニーベルンゲンから、デン・ホールンの宿屋へ戻った。
皇帝ラインハルトは、帝国四魔将と軍勢を引き連れ、デン・ヘルダーへと向かう。
ジカイラが、呆れたようにラインハルトに話し掛ける。
「しかし、派手だな。辺境の自治領主が三千人ばかりで騒乱を起こしたからと言って、帝国の四個方面軍を動員してくるなんて。四個軍団で四十万人、諸兵科を合わせたら動員兵力百万人の大軍勢だ。 ゴキブリ一匹、退治するのに大砲を使うようなものだろう?」
ラインハルトが苦笑いして答える。
「他の港湾自治都市群や諸外国に帝国の軍事力と動員力を見せつけておく必要があるからな。火種は燻っているうちに消してしまわないと。火事になってからでは遅い」
ジカイラが追従する。
「ま、それはそうだがな」
ラインハルトが続ける。
「帝国が港湾自治都市群に軍事介入する口実を探していた事も事実さ。港湾自治都市群による麻薬取引、奴隷貿易、人身売買を見逃すつもりはない。革命党や秘密警察との関係についても同様さ」
ヒナが思い出したように口を開く。
「そう言えば、デン・ヘルダーの港付近の倉庫街に彼等の拠点があったわ」
ラインハルトが答える。
「良く調べてくれたね。ヒナ。詳細は、ジカイラから聞いている。このまま、デン・ヘルダーに向かい、検挙するつもりだ」
ラインハルトから褒められ、照れたヒナの顔が赤くなる。
ティナがラインハルトに尋ねる。
「蜥蜴人たちは、どうなるの?」
「本来なら、デン・ホールンへの襲撃を罰するところだが、今回は事情が事情だけに恩赦するよ。デン・ホールンの遺族には、直轄都市としたデン・ヘルダーの収益から遺族年金を与える」
ケニーもラインハルトに尋ねる。
「海賊の鮮血の涙は?」
「・・・海賊?」
ラインハルトは、そう口にすると、ジカイラの方を見る。
ジカイラは、ラインハルトに目配せする。
「私は、海賊船など見ていない。そういう事だ」
ラインハルトの答えに一同は安堵する。
ラインハルトが続ける。
「昼食を用意した。皆、久しぶりに帝都の味を堪能してくれ」
そう言うと、ラインハルトは貴賓室から退出していった。
ジカイラ達が昼食を取っていると、エリシスが貴賓室にやって来る。
「食事中、失礼するわ」
ジカイラが答える。
「どうぞ」
エリシスは、ルナの近くの席に座り、話し掛ける。
「久しぶりね、ルナ。どう? 元気にしている?」
ルナが明るく答える。
「はい! エリシス様!」
「手紙、ありがとう。港での初デートは、楽しかった?」
ルナは、照れながら答える。
「はい。とても」
「ルナの彼氏というのは?」
ルナは、隣で食事をしているケニーの腕をとって、エリシスに紹介する。
「この人です! エリシス様!!」
突然、話しに巻き込まれたケニーは、驚いて狼狽える。
「え!?」
エリシスは、ケニーを眺めて、呟く。
「貴方がルナの彼氏?」
(・・・小柄で、なんだか、あんまりパッとしない男ね)
ケニーがエリシスに答える。
「はい」
ルナが、エリシスに力説する。
「ケニーたんは、とても強くて、ルナに優しくて! ルナは、ケニーたんが好きです!!」
エリシスが二人に優しく微笑む。
「そう。ルナは素直な娘だから、この子の事をよろしくね」
ケニーは、緊張気味に答える。
「判りました」
ケニーの答えを聞いたエリシスは、貴賓室から退出していった。
帝国四魔将は、士官用ラウンジのバーに集まっていた。
ヒマジンがアキックスに話し掛ける。
「こんな辺境の些事に、百万の軍勢を動員するなんて。陛下は、やり過ぎじゃねぇのか?」
アキックスがヒマジンを諭す。
「『帝国の確固たる意思』を諸外国や港湾自治都市群に示す『示威行為』だろう」
ナナシもヒマジンを諭す。
「そのとおりだ。『新皇帝の帝国は、辺境の些事も見逃さず、本気で事に当たる』と、帝国内外に示す絶好の機会だ」
三人が話していると、エリシスが上機嫌でラウンジにやって来る。
アキックスがエリシスに話し掛ける。
「どうした? エリシス。随分とご機嫌だな」
エリシスが微笑む。
「ルナに彼氏ができたのよ」
アキックスも目を細めて微笑む。
「ほう? あの娘も青春しているようだな」
ヒマジンがエリシスに尋ねる。
「その彼氏って、誰なんだ?」
エリシスが答える。
「陛下の御友人よ。同じ小隊だった小柄なスカウトの」
ヒマジンが思い出したように話す。
「ああ。アイツか」
エリシスがアキックスに話し掛ける。
「皇妃様が陛下と一緒になった時の、あの時の、貴方の気持ちが良く判るわ」
アキックスが微笑む。
「そうか。『親心』というやつだな」
エリシスも微笑み返す。
「可愛がっていた子が、伴侶の元へ行くというのは、嬉しくもあり、寂しくもあるわね」
アキックスが答える。
「そうだな」
ナナシが口を開く。
「『人の営み』というやつだ。生業で身を立て、伴侶を見つけ、子を産み育てる」
エリシスがナナシに答える。
「あの娘の子は、どんな子供になるかしら?」
ヒマジンが口を開く。
「獣人三世と人間の子か。八分の一の混血だと、ほとんど人間に近くなるだろうな」
エリシスがヒマジンに答える。
「どんな子が産まれるのか、今から楽しみだわ」
昼食を終えたジカイラ達は、総旗艦ニーベルンゲンから、デン・ホールンの宿屋へ戻った。
皇帝ラインハルトは、帝国四魔将と軍勢を引き連れ、デン・ヘルダーへと向かう。
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