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第五章 霊樹の森
第九十一話 陰謀
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--新大陸 ダークエルフ達の居城
シグマ達、三人のダークエルフは、突如、転移した。
シグマがアレクに斬られた顔の右側を押さえながら周囲を見回す。
薄暗い半球状の大きな部屋に十二本の魔力水晶が円周状に立ち並ぶ魔法陣の中央に居る事が判る。
ジグマが呟く。
「・・・ここは?」
「戻ったか」
シグマは、女の声がした方角を見上げる。
女は、褐色の肌に尖った耳、長く美しいプラチナブロンドの髪で、黒革でできた水着のビキニとコルセットのような服を着ており、両肩にはケープのような薄布を羽織っている妖艶な美女であった。
ダークエルフ達の魔導王国エスペランサを統べるドロテア女王であった。
ドロテア女王は、半球状の大きな部屋の内壁に沿って造られた階段を降りてくる。
「「女王陛下!!」」
シグマ達、三人のダークエルフは、その場に跪いて女王が降りてくるのを待つ。
三人の元に来た女王が口を開く。
「遠視の鏡でうぬらの戦いぶりを見ておった。危ないところであったな。まずは手当てを」
そう言うと女王はシグマの顔に手をかざして魔法を唱える。
「治癒」
アレクに斬られたシグマの顔の傷からの出血が止まる。
シグマが女王に礼を言う。
「・・・感謝致します」
女王がシグマに尋ねる。
「傷跡はどうする? 消すこともできるが」
シグマは、出血の止まった傷を指先でなぞりながら答える。
「この傷を忘れないためにも、どうか、このままで」
続けてシグマが女王に謝罪する。
「・・・女王陛下よりお預かりした霊樹の森の半数と鼠人、ゴブリン、食人鬼の軍勢を失いました。面目次第もございません」
女王が続ける。
「相手が『神殺しの竜王』と『皇帝』では、致し方あるまい。相手が悪い」
三人のダークエルフ達は、女王の言葉に畏まる。
「ははっ」
女王が続ける。
「うぬらが戻って何よりじゃ。霊樹の森は、植えれば良い。妖魔の軍勢は、集めれば良い。だが、うぬらは、そうはいかんのでな。我等ダークエルフの血は、貴いのじゃ」
シグマは、女王の言葉に感激する。
「・・・陛下」
ダークエルフは、強さと快楽を至上として、極端な血統主義、快楽主義を取っており、弱い種族を奴隷程度にしか考えていない。
女王が続ける。
「うぬらを呼び戻すのに、貴重な『転移の宝珠』を使った。そう簡単に手に入るものではない。その分は働いて返せ」
三人のダークエルフが答える。
「ははっ!」
女王は、シグマを見詰めて詰問する。
「シグマ」
「はっ!」
「人間の皇帝は、どうであった?」
シグマは、女王からの質問の意味を把握しかねていた。
「どう、と言いますと?」
女王は、ラインハルトに興味を持っていた。
「戦った感想じゃ。皇帝の一族は、『人の子の、最も優れし者』と聞く。どうであった?」
「はっ。・・・皇帝は、マスタークラスの上級騎士であり、近接戦におけるその強さは、尋常ではありませんでした」
「うぬら三人掛かりでも、勝てなかったようだな」
「・・・おっしゃる通りです」
女王は、上機嫌で自分の下腹部、子宮の位置を摩りながら呟く。
「ふふふ。・・・『人の子の、最も優れし者』である皇帝と、ダークエルフ最強の一族である我が目合ひ、吾子を孕めば、産まれてくる子は、一体、どれほどのものになるか・・・ふふふ」
女王が続ける。
「・・・人でも、亜人でも、人外でも構わない。我等より強き者であるならば。我等の目的のためには、数の少ない我等には、強さと力が必要なのじゃ」
女王の呟きにシグマは驚く。
「・・・陛下。恐れながら、皇帝を誘拐するなど、とても無理です」
「なら、我が直接、皇帝に求婚してみようかの?」
女王はそう口にすると、自分の右手の中指と薬指を揃えて立て、男性器に見立てて根元まで口で咥えて見せる。
シグマは俯いて答える。
「・・・お戯れを」
女王が告げる。
「ふふふ。次の手を考えねばなるまい。奴隷と生贄は、いくらあっても良い。・・・何も『大帝の生まれ変わり』と称される当代の皇帝でなくとも良い。皇帝の一族の男子であるならば」
女王は、半球状の部屋の天井を眺めながら呟く。
「強き者の血は、必ず覚醒する。・・・その時が来るのを待てば良い。時は我等に味方する。我等に寿命は無いのだから」
奴隷と生贄、そして帝室の血を狙い、闇の眷属であるダークエルフ達は、次の陰謀を企てていた。
シグマ達、三人のダークエルフは、突如、転移した。
シグマがアレクに斬られた顔の右側を押さえながら周囲を見回す。
薄暗い半球状の大きな部屋に十二本の魔力水晶が円周状に立ち並ぶ魔法陣の中央に居る事が判る。
ジグマが呟く。
「・・・ここは?」
「戻ったか」
シグマは、女の声がした方角を見上げる。
女は、褐色の肌に尖った耳、長く美しいプラチナブロンドの髪で、黒革でできた水着のビキニとコルセットのような服を着ており、両肩にはケープのような薄布を羽織っている妖艶な美女であった。
ダークエルフ達の魔導王国エスペランサを統べるドロテア女王であった。
ドロテア女王は、半球状の大きな部屋の内壁に沿って造られた階段を降りてくる。
「「女王陛下!!」」
シグマ達、三人のダークエルフは、その場に跪いて女王が降りてくるのを待つ。
三人の元に来た女王が口を開く。
「遠視の鏡でうぬらの戦いぶりを見ておった。危ないところであったな。まずは手当てを」
そう言うと女王はシグマの顔に手をかざして魔法を唱える。
「治癒」
アレクに斬られたシグマの顔の傷からの出血が止まる。
シグマが女王に礼を言う。
「・・・感謝致します」
女王がシグマに尋ねる。
「傷跡はどうする? 消すこともできるが」
シグマは、出血の止まった傷を指先でなぞりながら答える。
「この傷を忘れないためにも、どうか、このままで」
続けてシグマが女王に謝罪する。
「・・・女王陛下よりお預かりした霊樹の森の半数と鼠人、ゴブリン、食人鬼の軍勢を失いました。面目次第もございません」
女王が続ける。
「相手が『神殺しの竜王』と『皇帝』では、致し方あるまい。相手が悪い」
三人のダークエルフ達は、女王の言葉に畏まる。
「ははっ」
女王が続ける。
「うぬらが戻って何よりじゃ。霊樹の森は、植えれば良い。妖魔の軍勢は、集めれば良い。だが、うぬらは、そうはいかんのでな。我等ダークエルフの血は、貴いのじゃ」
シグマは、女王の言葉に感激する。
「・・・陛下」
ダークエルフは、強さと快楽を至上として、極端な血統主義、快楽主義を取っており、弱い種族を奴隷程度にしか考えていない。
女王が続ける。
「うぬらを呼び戻すのに、貴重な『転移の宝珠』を使った。そう簡単に手に入るものではない。その分は働いて返せ」
三人のダークエルフが答える。
「ははっ!」
女王は、シグマを見詰めて詰問する。
「シグマ」
「はっ!」
「人間の皇帝は、どうであった?」
シグマは、女王からの質問の意味を把握しかねていた。
「どう、と言いますと?」
女王は、ラインハルトに興味を持っていた。
「戦った感想じゃ。皇帝の一族は、『人の子の、最も優れし者』と聞く。どうであった?」
「はっ。・・・皇帝は、マスタークラスの上級騎士であり、近接戦におけるその強さは、尋常ではありませんでした」
「うぬら三人掛かりでも、勝てなかったようだな」
「・・・おっしゃる通りです」
女王は、上機嫌で自分の下腹部、子宮の位置を摩りながら呟く。
「ふふふ。・・・『人の子の、最も優れし者』である皇帝と、ダークエルフ最強の一族である我が目合ひ、吾子を孕めば、産まれてくる子は、一体、どれほどのものになるか・・・ふふふ」
女王が続ける。
「・・・人でも、亜人でも、人外でも構わない。我等より強き者であるならば。我等の目的のためには、数の少ない我等には、強さと力が必要なのじゃ」
女王の呟きにシグマは驚く。
「・・・陛下。恐れながら、皇帝を誘拐するなど、とても無理です」
「なら、我が直接、皇帝に求婚してみようかの?」
女王はそう口にすると、自分の右手の中指と薬指を揃えて立て、男性器に見立てて根元まで口で咥えて見せる。
シグマは俯いて答える。
「・・・お戯れを」
女王が告げる。
「ふふふ。次の手を考えねばなるまい。奴隷と生贄は、いくらあっても良い。・・・何も『大帝の生まれ変わり』と称される当代の皇帝でなくとも良い。皇帝の一族の男子であるならば」
女王は、半球状の部屋の天井を眺めながら呟く。
「強き者の血は、必ず覚醒する。・・・その時が来るのを待てば良い。時は我等に味方する。我等に寿命は無いのだから」
奴隷と生贄、そして帝室の血を狙い、闇の眷属であるダークエルフ達は、次の陰謀を企てていた。
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