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第五章 霊樹の森

第八十話 鼠人の巣穴

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ーー翌朝

 朝食を済ませたアレク達ユニコーン小隊は、夜営を片付けて再び捜索を始める。

 帝国軍の装備は、ほぼミスリル製であり、ほとんど重さを意識することは無かったが、背嚢の水や食糧、夜具などは、結構な重量であり、平地ならまだしも、それらを背負って山岳地帯の森林を進むことは、それなりに大変であった。

 森の中を歩きながらアルがアレクに尋ねる。

「なぁ、アレク。どこまで捜索するんだ?」

「・・・携行食糧は七日分。片道三日半までが行動限界だよ。行けるところまで、行こう」

 ルイーゼも口を開く。

「食糧を現地調達できれば良いのだけど・・・。兎や栗鼠といった小動物はおろか、木の実も無いわね」

 トゥルムも口を開く。

「おそらく、鼠人スケーブンが食べ尽くしたのだろう」

 ドミトリーも口を開く。

「水の補給も重要だ。既に一日が過ぎている。行動できるのは、残り二日半か」




 アレク達が森の中を進んでいると、ルイーゼが森の異変に気付く。 

 森の下草や藪に、何者かが通った後のように分かれ目が出来ている。

 ルイーゼが呟く。

「これは・・・? 獣道??」

 ルイーゼは、アレクを呼び止めると、下草を掻き分けて地面を確認する。

「待って、アレク! ・・・見て、足跡がたくさん。・・・どれも人のものじゃない」

 ルイーゼは、中堅職の暗殺者アサシンであり、盗賊や斥候のスキルを持っていた。

 アレクも地面の足跡を確かめるルイーゼの傍に来て見分する。

 アレクが口を開く。
 
「・・・これは、鼠人スケーブンの足跡?」

 ユニコーン小隊は、ルイーゼを先頭に獣道の足跡を辿って行く。

 しばらく歩くと、樹齢千年は越えているであろう巨木の根元まで足跡が続いていた。

 アレク達が巨木の根元の下草を掻き分けると、人が入れるほどの大きな穴があり、その中に足跡は続いていた。

 アレクが口を開く。

「木の根元に穴? ・・・洞窟??」

 ルイーゼが穴の壁を指先で触れて調べる。

 壁には、爪のようなもので掘り進んだ跡があった。

「・・・自然に出来たものではないわ。・・・ホラ、ココ。掘った爪痕がある。」

 ルイーゼが指し示す爪痕を見たアルが軽口を叩く。

「随分とデカい爪痕だな。・・・どんな化物だ? それとも怪物か何かか?」

 トゥルムがアルに答える。

「化物と怪物のどちらにしろ、どちらとも会いたくないな」

 穴の入り口を見たエルザが口を開く。

「・・・これ、鼠人スケーブンの巣穴じゃない? 奴等、地面に穴掘って住んでるみたいよ。村の長老が言ってた」

 ナディアも口を開く。

「・・・鼠の巣って、お世辞にもきれいな所じゃないわよね。・・・中に入るのは、あまり気乗りしないわ」

 ナタリーも呟く。

「・・・怖い」

 アレクが結論を出す。

「・・・とにかく、中に入って調べてみよう。鼠人の巣穴なら、此処が『霊樹の森』だという事だし、今の時点じゃ、此処が『霊樹の森』かどうか、確証が無い」

 アレクの言葉を聞いたルイーゼが中に入って行く。

「行きましょう」

 アレク達ユニコーン小隊は、松明を片手に穴の中に入って行く。







 穴は、傾斜の付いた坂が五メートルほど続くと、広い地下道に出る。

 地下道は、2.5メートルほどの広いものであった。

 アレクの顔を生暖かい空気が撫で、松明の炎も風になびく。

 アレクが口を開く。

「・・・風が吹いてる。 どこかに続いているみたいだ」

 アルが軽口を叩く。

「通路って事か。・・・敵さんがウヨウヨ居るかもしれないぞ?」

 アレクが答える。

「万が一に備えて、陣形を組んで進もう」

 小隊は二列縦隊を組み、地下道を進む。

 先頭は、盾を持ち、装甲の厚いアルとアレク。

 二列目が三又槍トライデントを持つトゥルムと暗殺者アサシンで飛び道具と盗賊系スキルを持つルイーゼ。

 三列目が魔導師のナタリーと修道僧のドミトリー。

 最後尾は、後ろからの攻撃に備えて、剣士のエルザと近接戦もできるナディアが並ぶ。

 アレク達は陣形を組んで、傾斜の付いた地下道を歩き、地下深くへ降りて行く。

 小一時間ほど地下道を進むと、暗い地下道から急に明るい広大な空間に出る。

 空間を照らしている青白い光がアレク達の目を眩ませる。
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