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第四章 トラキア連邦
第六十一話 軍法会議
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アレク達ユニコーン小隊とルドルフのグリフォン小隊は、飛行空母に帰投した。
偵察に出ていた各小隊の飛空艇が、次々と四隻の飛行空母に帰投、着艦していた。
任務を終えたアレク達は、乗ってきた飛空艇と共にエレベーターで飛行甲板から格納庫に降りると、自分達を出迎えるジカイラとヒナに偵察の結果を報告する。
アレクは、トラキアでは黒死病が流行している事、飛行空母の航路上にある村が救護を必要としている事など報告し、ルドルフは、トラキア連邦軍は鼠人と交戦している事、キャスパー達バジリスク小隊から砲撃された事などを報告した。
ジカイラは、二人からの報告を聞き、少し考えると口を開く。
「一緒に殿下のところに行くぞ。お前達の口から直接、殿下に伝えたほうが良いだろう」
アレクとルイーゼ、ルドルフの三人は、ジカイラとヒナに連れられて皇太子であるジークの元へ向かった。
ジカイラとアレク達はノックして貴賓室に入る。
「失礼します」
ジークはソファーに座り、護衛である二人の美女ソフィアとアストリッドと共に貴賓室に居た。
傍らにはヒマジン伯爵が立っている。
ジークが部屋を訪れた五人に尋ねる。
「・・・どうした?」
ジカイラが口を開く。
「殿下。強行偵察の結果報告です。二人から直接、殿下に報告したほうが良いと思いまして」
アレクとルドルフは、ジカイラにした報告と同じ話をジークにも話した。
報告を受けたジークの表情は深刻なものになり、傍らに立つヒマジンと顔を見合わせる。
ジークが口を開く。
「・・・トラキア連邦領内では黒死病が流行しているとは。それに、連邦軍と鼠人が交戦しているなら、奴等が組んでいる可能性は低そうだな」
ヒマジンも口を開く。
「『前線の連邦軍部隊は、帝国と連邦の開戦を知らなかった』とルドルフ中尉の報告にあったが、連邦政府も連邦軍も、黒死病と鼠人で、相当、混乱しているようだな」
アレクがヒマジンに追従する。
「黒死病と鼠人で、トラキア連邦は、帝国に構っている余裕は無いといった感じでした」
ジークが答える。
「・・・なら、好都合だ。混乱に乗じて、我が軍は一気に敵首都を叩く。それで連邦との決着は着くだろう」
ヒマジンが口を開く。
「トラキアも、鼠人も、我ら帝国軍とは格が違う。敵ではなかったな。・・・それよりも『味方から撃たれる』事のほうが、深刻だ」
ジカイラが口を開く。
「敵の指揮官と隊長が話すこと自体は、問題無いでしょう?」
ジークが答える。
「問題無い。その戦域だけで一時休戦しても、相手の投降を受け入れても、構わない」
ヒマジンが尋ねる。
「殿下。バジリスク小隊とキャスパーの件は、いかがなさいますか?」
ジークが答える。
「『故意』であれ、『過失』であれ、自軍に重傷者二名、軽症者六名の被害を出したのだ。・・・軍法会議で、それなりの処罰をするしかない」
アレクが口を開く。
「殿下」
ジークはアレクの兄だが、アレクは時と場所を考え、この場はジークを敬称で呼ぶ。
ジークが答える。
「ん?」
「人間同士が争っている場合では、無いのでは?」
ルドルフは、傍らでアレクが自分と同じ考えであることに驚く。
「それは私も同感だ。だが、トラキア連邦は、陛下からの、帝国からの通達を無視した。・・・帝国の臣民に鼠人による被害が出ている以上、座視する訳に行くまい?」
「ですが・・・」
「原始的な鼠人より、組織的に抵抗する人間のほうが厄介なのだ」
「はい」
「それに、『トラキア連邦との開戦』は、陛下からの勅命だ。お前が気に病む事はない。首都を押さえれば直ぐに片付くだろう。戦火は、最低限に留めるつもりだ」
「判りました」
「中尉、ご苦労だった。二人共、下がって良い」
アレクとルイーゼ、ルドルフは、貴賓室を後にする。
ーー夜。
キャスパーの軍法会議が開かれた。
キャスパーは「捕虜になった仲間を助けた」と主張したが、「飛空艇に乗り空を飛ぶグリフォン小隊が、装備や錬度に劣るトラキア連邦の地上部隊の捕虜になる訳が無い」と軍法会議はキャスパーの主張を一蹴。
皇太子ジークフリートの名前でバジリスク小隊の処分が決められた。
バジリスク小隊 隊長 キャスパー・ヨーイチ男爵 中尉相当官 営倉入り 二週間
他隊員 謹慎
となった。
偵察に出ていた各小隊の飛空艇が、次々と四隻の飛行空母に帰投、着艦していた。
任務を終えたアレク達は、乗ってきた飛空艇と共にエレベーターで飛行甲板から格納庫に降りると、自分達を出迎えるジカイラとヒナに偵察の結果を報告する。
アレクは、トラキアでは黒死病が流行している事、飛行空母の航路上にある村が救護を必要としている事など報告し、ルドルフは、トラキア連邦軍は鼠人と交戦している事、キャスパー達バジリスク小隊から砲撃された事などを報告した。
ジカイラは、二人からの報告を聞き、少し考えると口を開く。
「一緒に殿下のところに行くぞ。お前達の口から直接、殿下に伝えたほうが良いだろう」
アレクとルイーゼ、ルドルフの三人は、ジカイラとヒナに連れられて皇太子であるジークの元へ向かった。
ジカイラとアレク達はノックして貴賓室に入る。
「失礼します」
ジークはソファーに座り、護衛である二人の美女ソフィアとアストリッドと共に貴賓室に居た。
傍らにはヒマジン伯爵が立っている。
ジークが部屋を訪れた五人に尋ねる。
「・・・どうした?」
ジカイラが口を開く。
「殿下。強行偵察の結果報告です。二人から直接、殿下に報告したほうが良いと思いまして」
アレクとルドルフは、ジカイラにした報告と同じ話をジークにも話した。
報告を受けたジークの表情は深刻なものになり、傍らに立つヒマジンと顔を見合わせる。
ジークが口を開く。
「・・・トラキア連邦領内では黒死病が流行しているとは。それに、連邦軍と鼠人が交戦しているなら、奴等が組んでいる可能性は低そうだな」
ヒマジンも口を開く。
「『前線の連邦軍部隊は、帝国と連邦の開戦を知らなかった』とルドルフ中尉の報告にあったが、連邦政府も連邦軍も、黒死病と鼠人で、相当、混乱しているようだな」
アレクがヒマジンに追従する。
「黒死病と鼠人で、トラキア連邦は、帝国に構っている余裕は無いといった感じでした」
ジークが答える。
「・・・なら、好都合だ。混乱に乗じて、我が軍は一気に敵首都を叩く。それで連邦との決着は着くだろう」
ヒマジンが口を開く。
「トラキアも、鼠人も、我ら帝国軍とは格が違う。敵ではなかったな。・・・それよりも『味方から撃たれる』事のほうが、深刻だ」
ジカイラが口を開く。
「敵の指揮官と隊長が話すこと自体は、問題無いでしょう?」
ジークが答える。
「問題無い。その戦域だけで一時休戦しても、相手の投降を受け入れても、構わない」
ヒマジンが尋ねる。
「殿下。バジリスク小隊とキャスパーの件は、いかがなさいますか?」
ジークが答える。
「『故意』であれ、『過失』であれ、自軍に重傷者二名、軽症者六名の被害を出したのだ。・・・軍法会議で、それなりの処罰をするしかない」
アレクが口を開く。
「殿下」
ジークはアレクの兄だが、アレクは時と場所を考え、この場はジークを敬称で呼ぶ。
ジークが答える。
「ん?」
「人間同士が争っている場合では、無いのでは?」
ルドルフは、傍らでアレクが自分と同じ考えであることに驚く。
「それは私も同感だ。だが、トラキア連邦は、陛下からの、帝国からの通達を無視した。・・・帝国の臣民に鼠人による被害が出ている以上、座視する訳に行くまい?」
「ですが・・・」
「原始的な鼠人より、組織的に抵抗する人間のほうが厄介なのだ」
「はい」
「それに、『トラキア連邦との開戦』は、陛下からの勅命だ。お前が気に病む事はない。首都を押さえれば直ぐに片付くだろう。戦火は、最低限に留めるつもりだ」
「判りました」
「中尉、ご苦労だった。二人共、下がって良い」
アレクとルイーゼ、ルドルフは、貴賓室を後にする。
ーー夜。
キャスパーの軍法会議が開かれた。
キャスパーは「捕虜になった仲間を助けた」と主張したが、「飛空艇に乗り空を飛ぶグリフォン小隊が、装備や錬度に劣るトラキア連邦の地上部隊の捕虜になる訳が無い」と軍法会議はキャスパーの主張を一蹴。
皇太子ジークフリートの名前でバジリスク小隊の処分が決められた。
バジリスク小隊 隊長 キャスパー・ヨーイチ男爵 中尉相当官 営倉入り 二週間
他隊員 謹慎
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