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第三章 辺境派遣軍

第四十四話 キスマーク、御褒美

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--翌日。

 ユニコーン小隊の女の子達四人は、連れ立って、入浴するために浴場に向かう。

 脱衣場で、ルイーゼが湯槽に髪をつけないようにセミロングの髪を結い上げ、服を脱いでいると、ルイーゼを見たエルザが目を見開いて叫ぶ。

「ああっ!!」

 エルザの叫び声を聞いたナディアが、ふと、叫んだエルザの視線の先に居るルイーゼの方へ目をやると、ナディアもルイーゼを見て驚き、目を見開いて叫び声を上げる。

「ああっ!!」

 ルイーゼを見て驚くエルザとナディアに対して、ルイーゼとナタリーの二人はキョトンとした顔で、訳が分からずにいると、エルザとナディアがルイーゼの元にやってくる。

 腰に両手を当てて、エルザがルイーゼに話し掛ける。

「ルイ~ゼ~。・・・昨日、私達を出し抜いて、アレクと良い事していたでしょ?」

 図星であった。

 ルイーゼが驚いてエルザに尋ねる。

「どうして、そう判るの??」

 エルザが得意満面の笑みを浮かべて、ルイーゼの首筋を指で突っ突く。

「ホラ、ここ。キスマークがある。アレクにキスされたんでしょ?」

 ルイーゼは、昨夜、アレクにキスマークを付けられていた事に気付いておらず、エルザからの指摘に驚く。

「えっ!?」

 ルイーゼが脱衣場の鏡で自分の首を見ると、エルザの指摘通り、首にキスマークが付いていた。

 ナディアもニヤニヤと笑みを浮かべながら、ルイーゼの胸を突っ突く。

「胸のココと、ココにも。もぅ・・・二人で良い事していたのね?」

 アレクとの昨夜の行為を言い当てる二人の追求に、みるみるルイーゼは赤面して耳まで赤くなる。

 ルイーゼは、恥ずかしそうに頷く。

「・・・うん」

 服を脱ぎ終えた四人は浴場に入り、体を流して湯槽に浸かる。

 ルイーゼは、他の三人に昨夜のアレクとのデートの話をする。

 ルイーゼの話に一番驚いていたのは、ナタリーであった。

 エルザが口を開く。

「ルイーゼ、良いなぁ~。アレクと二人で大人の階段を登ったんだ」

 ナディアは両手で自分の両肩を掴むと体をくねらせながら、叙事詩のように語り始める。

「遠い異郷の地。噴水の傍らで。愛し合う二人は、星空を見上げながら、永遠の愛を語らっていたのね」

 ナタリーは、エルザとナディアの話に苦笑いしながらルイーゼに尋ねる。

「デート、楽しかった?」

 ルイーゼは笑顔で答える。

「うん!」

 エルザが、興味津々にルイーゼに尋ねる。

「アレク、どうだった?」

「どうって?」

「キスとか、えっちとか」

 ルイーゼが恥ずかしそうに答える。

「アレクは、優しくしてくれたわ。キスも、えっちも」
 
 エルザが「思ったとおりだ」と言わんばかりに口を開く。

「やっぱり! エルザちゃんの目は正しかったわ! アレクは『理想の彼氏』よ!!」

 ナタリーがエルザに尋ねる。

「そうなの?」

 エルザが身振り手振りを交えて解説し始める。

「そうよ! アレクは、いきなり中堅職の騎士になれるほど強くて、女の子みたいな綺麗な顔の美形で、気持ちは優しくて。実家はお金持ちで、メイドが居て。・・・結婚後を想像してみると良いわ。・・・炊事や掃除は全部、メイドがやってくれる。昼間は、友人とお茶会やったり、趣味に興じたり。・・・そして夜は、毎晩抱かれて、毎晩あの立派なオチ●●ンで突かれて、イカされまくって、子作りに励む。・・・まさに理想的よ!!」

 ナタリーは苦笑いしながら答える。

「それがエルザの理想なのね」

 ナディアもエルザに近い考えであった。

「エルザの言うとおりよ。今は軍隊に居て汗と埃まみれになっても、良い男を捕まえて、将来は『奥様』と呼ばれたいわぁ~」

 エルザとナディアは、互いに目配せすると、二人で寸劇を始める。

 エルザが召使い役でナディアが奥様役であった。

 ナディアが口を開く。

「ただいま」

「お帰りなさいませ。奥様。お茶の用意ができております」

「今日のお茶は何処のかしら?」

「新大陸から取り寄せたものです」

「スィーツは?」

「港湾自治都市群に初物のマンゴーが入荷したので取り寄せました。奥様の好物だと、御主人様より伺っておりましたので」

「頂くわ」

 寸劇を終えた二人は、大きなため息を吐く。

「「はぁ・・・」」

 エルザが口を開く。

「ルイーゼは、アレクと一緒になったら、将来こういう暮らしができるのよ。良いなぁ~」

 ナディアも続く。

「羨ましい・・・」

 アレクの実家である『バレンシュテット帝室』は、エルザやナディアの想像を遥かに超えた、世界一広大で豪華な宮殿『皇宮』に住んでいる世界一の大富豪であった。

 ルイーゼは、その事を知っていたが口に出すことはせず、エルザやナディアの話に微笑んで答えていた。
 

-----

 帝国辺境派遣軍の主なメンバーは、飛行空母の艦橋に集まっていた。

 ジークが口を開く。

「ソフィア。先日の「業火と鋼鉄の鉄槌作戦」において、お前の指揮する航空部隊の働きは、実に見事であった。おかげで敵の主力と思われる部隊を殲滅することができた」

 ソフィアは畏まってジークに答える。

「ジーク様からお褒め頂き、恐縮です」

 ジークが続ける。

「お前の献身的な働きに対して、褒美を与える。・・・これへ」

 ソフィアは、ジークに近寄る。

「はい」

 ジークは、更にソフィアを手招きする。

「もっと近くへ」

「・・・はい?」

 ソフィアは、怪訝な表情をしてジークの傍らまで近寄る。

 ジークは、ソフィアの耳元まで顔を近づけると、そっとソフィアに耳打ちする。

「ソフィア。・・・私の寝室に入ることを許す」

 アストリッドはジークの寝室に入る事も許されていたが、ソフィアには許されていなかった。

 ソフィアが驚いて大声で叫ぶ。

「ええっ!? 私がジーク様の寝室に!! 入っても良いんですか!?」

 さすがのジークも赤面して、大声を出すソフィアを嗜める。

「シーッ! ソフィア! 声が大きい!!」

 ジークからの御褒美に、ソフィアは周囲を憚ること無く、小躍りして大喜びする。

 ソフィアの叫び声を聞いていた周囲の諸将が含み笑いを漏らす。

 皇太子であるジークと皇太子正妃となるソフィア、ジークと皇太子第二妃となるアストリッドは、いわば、それぞれの親同士が決めた婚約者フィアンセであり、当事者同士で肉体関係を持っても、誰も咎める者など居なかった。

 むしろ周囲は、

 律儀な性格のジークが世間体を気にして、一線を超える事を踏み止まっていたに過ぎなかった。

 ジークがソフィアに寝室に入る事を許していなかったのは、気が強く、プライドが高く、気性の激しいソフィアを寝室に入れると、眠っているジークの上にソフィアが全裸で跨って乗り、強引に性交する懸念があったためであった。

 しかし、ジークは、自分に献身的に尽くしてくれるソフィアに応えてやることにした。

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