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第三章 辺境派遣軍

第三十二話 全体の戦況

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 アレク達ユニコーン小隊とルドルフのグリフォン小隊は、飛行空母に帰投した。

 アレクは、飛空艇から飛行甲板に降り立つと空を見上げる。

 偵察に出ていた各小隊の飛空艇が、次々と四隻の飛行空母に帰投、着艦していた。





 任務を終えたアレク達は、乗ってきた飛空艇と共にエレベーターで飛行甲板から格納庫に降りると、自分達を出迎えるジカイラとヒナに偵察と戦闘の結果を報告する。

 また、鼠人スケーブンとの戦闘で鹵獲した鼠人スケーブン達の武器や道具をジカイラ達に見せた。

 ジカイラとヒナは、アレク達の報告をじっと聞き、最後に「良くやった」とアレク達を褒めた。




 報告を終えたアレク達ユニコーン小隊は、飛行空母のラウンジに集まり休憩する。

 アレク達ユニコーン小隊は、初戦で鼠人スケーブンとの戦闘に勝利し、追われていた姉妹を助けることに成功したものの、その表情は、皆、一様に暗かった。

 鼠人スケーブンの大軍勢から開拓村の住人たちを救えなかった事がアレク達の表情を暗いものにしていた。

 暗い顔をしているアレク達の元に、小隊が助けた姉妹がやってくる。 

 姉妹の姉がアレク達にお辞儀をしてお礼を言う。

「皆さん、助けて下さって、ありがとうございました」

 姉に続いて、幼い妹もお辞儀をしてお礼を言う。

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう」

 エルザが姉妹の心配をする。

「二人とも、お腹空いてない? お姉ちゃんが食べる物を持ってきてあげる」

 ナディアもエルザに続く。

「スイーツもあるわよ。フルーツパフェなんてどう?」

 助けた姉妹にお礼を言われたことで、ユニコーン小隊のメンバーは笑顔を取り戻すことができた。

 アレク達は、姉妹と共に昼食を取る。

 アルが口を開く。

「・・・しかし、ここの領主は、どうしたんだ? 領民が鼠人スケーブンに殺されているのに何やってんだ?」

 アレクが答える。

「領主のヨーイチ男爵家は、屋敷のある町に立て籠もって出てこないらしい」

 ナタリーも口を開く。

「『貴族の義務』を果たさない貴族なんて・・・」

 ルイーゼが答える。

「それでも貴族なの・・・」

 トゥルムが皆を諌める。

「我々が戦わない領主を批判しても仕方あるまい。考えるべきは『鼠人スケーブンをどう倒すか?』だろう」

 アレクもトゥルムの意見に同意する。

「そうだな・・・」

 エルザとナディアは、二人の姉妹の面倒を見ていた。

 エルザが微笑みながら二人の姉妹に話し掛ける。

「どう? ここのフルーツパフェ。美味しいでしょ?」

「「うん!!」」

 貧しい開拓村で生まれ育った姉妹は、初めて食べるフルーツパフェを美味しそうに食べていた。




 アレク達が昼食を終えた頃、ジカイラがラウンジにやってくる。

 ジカイラが口を開く。

「アレク、昼食は終わったか?」 

「はい」

「アレク、ルイーゼ。皇太子殿下が鼠人スケーブンと直接戦ったお前達から話を聞きたいらしい」

「判りました」

 アレクとルイーゼは、ジカイラに連れられて皇太子である兄ジークの元へ向かった。

 




 ジカイラとアレク達はノックして貴賓室に入る。

「失礼します」

 皇太子である兄ジークは、ソファーに座り、護衛である二人の美女ソフィアとアストリッドと共に貴賓室に居た。 

 傍らにはヒマジン伯爵が立っていた。

 貴賓室のテーブルには、アレク達が鹵獲した鼠人スケーブンの鉈と木槍が置いてあった。

 ジークが口を開く。

「ここに居る者達は、皆、お前達の素性を知っている。遠慮するな。まぁ、座れ」

「はい」

 アレクとルイーゼは、貴賓室のソファーに座り、ジカイラは二人の側に立つ。

 ジークが続ける。

「お前達、直接、鼠人スケーブンと戦ったようだが、どうだった? あいつらの個体戦力は?」

 アレクが答える。

「『武器を持った素人』といった感じでした」

「そうか。『鉈と木槍』、それに弓か。原始的だな」

「はい」

「お前達が鹵獲したこの武器は、『戦利品』として皇宮に送る。父上も母上も、お前達の活躍をさぞ御喜びになるだろう」

 そこまで言うとジークは立ち上がり、壁に張り出した地図の前に歩いていく。

「お前達が偵察し、初戦で勝利を収めた意義は大きい。二人の領民を救い、こうして敵の武器を鹵獲して、敵軍に関する情報も得られた」

 ジークは、地図を指し示して続ける。

「だが、全体の戦況は芳しくない。お前達、教導大隊が偵察して得た情報を分析すると、既にヨーイチ男爵領の東側は、鼠人スケーブン達の手に落ちたようだ」

 ジークが指し示す地図は、東側の多くが青線で囲われ、その枠内には沢山の青い斜線が引かれていた。

 それは『敵に占領された地域』を意味していた。



 アレクが口を開く。

「では、兄上。東側の領民達は!?」

「恐らく、もう、生きてはいまい」

 ジークは、苦々しく答えた。

 アレクが呟く。

「そんな・・・」

鼠人スケーブン達の手に落ちた』。アレク達が開拓者村で見た地獄絵図が、ヨーイチ男爵領の東側、『青線で囲われ斜線が引かれた地域の全て』で繰り広げられているという事であった。

 ジークが口を開く。

「帝国機甲兵団の十万、帝国東部方面軍と合わせた総兵力二十五万の地上軍が、鉄道も街道も無い、この辺境に到着するには、もう少し時間が掛かる。・・・しかし、我々とて、手をこまねいて見ている訳ではない。その間、我々は飛行空母群、飛行戦艦群で鼠人スケーブンに反撃するつもりだ」

 ジークが続ける。

「アレク、ルイーゼ。お前達は良くやった。次の出撃まで休め。下がって良いぞ」

「はい。失礼します」

 アレクとルイーゼは、立ち上がってジークに一礼すると、貴賓室を後にした。

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