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第二章 士官学校

第二十一話 小隊メンバーの装備

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-- 一週間後。

 休日。

 丸一日、士官学校の授業が休みであるため、多くの士官学校の学生達は、平民組も貴族組も帝都へ繰り出した。

 アレク達も軍用列車に乗り、帝都へと向かった。

 アルがアレクに話し掛ける。

「模擬戦があるみたいだし、みんなで装備一式を見繕いに行こうぜ」

「そうだな」

 軍用列車から帝都の駅のホームを降りたアレクは、感慨深げに駅の構内を見回す。

(母上やミランダは、元気にしているだろうか・・・)

 帝都に着いたアレク達は、装備品を扱う店に向かう。

 武器や防具などの装備は一応、士官学校で用意してくれるが、自分用の装備が欲しいのは、どの学生も一緒であった。

 金銭的に余裕がある貴族組などは、魔力が付加された豪華な装備を持っていた。

 店に入ったアレク達は、それぞれ自分の職業にあった武器や防具を手にとって見る。

 騎士であるアレクが目に止めたのは、帝国軍の帝国騎士ライヒスリッターの装備であった。

「まずはここからだな。騎士剣に騎士盾、騎士鎧、籠手に兜っと・・・」

 アレクは、自分の体に合うサイズのものを探して見繕う。

 アレクが一通り見繕った頃、アルの声がアレクの耳に聞こえる。

「あった!! コレだ!!」

 アレクがアルに尋ねる。

「何があったんだ?」

 アルは、笑顔で答える。

「コイツさ!」

 アルは、見つけた武器をアレクに見せる。

 二人の近くにいたトゥルムも、その武器に興味を示して口を開く。

「ずいぶん、変わった形の槍だな」

 アルがトゥルムに答える。

「コイツは『槍』じゃない!『斧槍ハルバード』っていうのさ!!」

 それは、鋭い槍の穂先の傍らに斧の刃が付いた長い柄の武器であった。

 アレクが呟く。

斧槍ハルバードか」

 アルが自慢気に周囲に話す。

「そうさ! 武器はデカけりゃあ良いってモノじゃない! デカくて良いのは、チン●だけさ! これなら、突くも、斬るも良し! 長さもある! オレの父さんも斧槍ハルバードを使っていたんだ!!」

 アレクが口を開く。

「そうなんだ」

 トゥルムは、アルの話に頷く。

「なるほどな。アル、私も良い武器だと思う。・・・では、私はこの武器にしよう」

 トゥルムが手にしたのは、三叉槍トライデントであった。

 アルが唸る。

「おおっ!? トゥルム、三叉槍トライデントを選ぶとは、やるねぇ!!」

 トゥルムが答える。

「うむ。これなら相手の攻撃を受ける事も出来るし、突く事も出来る。防具は鱗鎧と盾だ」

 槍術士である蜥蜴人リザードマンのトゥルムは、重装甲で中距離武器を装備に選んでいた。

 アルがアレクに話し掛け、店主に注文する。

「アレク、ちょっと待ってて! ・・・店主、この鎖帷子や胸当てなんかを真っ黒に塗装してくれ!!」

 店主が尋ねる。

艶消しフラット・黒色ブラック・塗装コーティングですか?」

「そう! それそれ!!」

 アルは楽しそうであった。

 トゥルムが口を開く。

「アルは、結構、こだわりがあるんだな」

 アレクがトゥルムに答える。

「アルの父は、革命戦役の英雄で『黒い剣士』と呼ばれていたから」

「なるほど」

 戦士のアルも重装甲で中距離武器を選んでいたが、武器は複数持っていた。

 武器や防具を見繕うアレク、アル、トゥルムの三人の元にエルザがやってくる。

「どう? コレ? 試着してみたんだけど、似合ってるでしょ?」

 エルザが身に付けていたのは、水着のような形状のビキニアーマーと呼ばれる防具であった。

 アレクが口を開く。

「それ、肌の露出が多いんじゃ・・・?」

 アルも口を開く。

「水着みたいだな・・・」

 トゥルムも口を開く。

「動き安そうなのは判るが・・・」

 エルザは、猫のような獣耳を立て、尻尾をフリフリしながら、満面の笑みを浮かべて三人に答える。

「でしょ? エルザちゃんの見事なプロポーションに萌え死にしそうでしょ? コレなら、どんな男もイチコロよ!」

 アレクが苦笑いしながら答える。

「何か・・・、装備を選んだ動機が不純だな・・・」

 アレクの言葉にアルも同意する。

「・・・オレもそう思う」

 トゥルムがエルザに尋ねる。

「・・・それでエルザ、武器は何を?」

「コイツよ! それと、集団戦用の盾ね」

 エルザが選んだのは、両手剣であった。

 アレクが呟く。

「なるほどなぁ・・・」

 エルザの職業は剣士であり、獣人ビーストマンの素早さと筋力を生かして、軽い防具で素早く動き、両手剣で強力な一撃を加えるスタイルの装備であった。小隊の集団戦の時だけ盾を持つ。

 エルザが装備を自慢していると、ナディアがやってくる。

「フフフ。エルザ、甘いわね。肌を露出すれば良いってものじゃないのよ!」

 エルフの精霊使いシャーマンであるナディアが選んだのは、胸元が大きく開き、腰から両太腿の横に大きなスリットが入っているクロース・アーマーであった。

 ナディアが続ける。

「『良い男が居たら、チラッと見せて誘う!』、コレが大人の女よ!!」

 アルが額に手を当てて呆れる。

「・・・お前ら」

 苦笑いしながら、アレクがナディアに尋ねる。

「それで。ナディアは、どんな武器にしたんだ?」

「これよ」

 ナディアは、腰に下げているレイピアの柄に手を掛けて、アレクに示す。

「それと、一応、これも・・・」

 ナディアは、腰の後ろに下げたメイスを指差してアレクに教える。

 エルフ特有の華奢な体格のナディアは、重装甲を避けて、軽いレイピアと重いメイスの、二通りの武器を選んでいた。

 アレクが屈んでナディアの腰の後ろのメイスを覗き込んでいると、ナディアは自分の太腿の横にあるスリットを指で後ろに捲り、アレクにパンツを見せる。

 驚くアレクに、ナディアは片目を瞑って呟く。

「チラッとね。・・・チョットだけなら、触っても良いのよ?」

「ナディア!!」

 ルイーゼの叫び声と共に店の奥からルイーゼとナタリーがアレク達の元にやってくる。

「ナディア、ダメよ。アレクは・・・」

 ルイーゼは、ナディアにそこまで言うと口籠る。

 アレク達は、ルイーゼを見て驚く。 

「「ルイーゼ!?」」

 暗殺者アサシンのルイーゼは、身体の線が浮き出る程、ぴったりと体に密着した黒皮の服を着て、肩当てを付けていた。

 遠目に見ても、ルイーゼの胸の形や腰のくびれ、お尻の丸みを帯びた形がハッキリと判る。

 赤面してナディアが呟く。

「ルイーゼ!? ・・・エロい! エロいわ!!」 

 エルザも舌打ちして呟く。

「チッ! ・・・その手があったか!!」

 アルは呆れて、エルザとナディアにツッコミを入れる。

「・・・お前らは、一体、何を競っているんだ?」

 アレクがルイーゼに話し掛ける。

「・・・ルイーゼ」

 皆の反応に生真面目なルイーゼは、頬を赤らめて上目遣いにアレクに尋ねる。

「アレク。私、そんなにイヤらしい格好してるかな・・・? 音がしなくて、良いと思ったんだけど・・・」

 アレクは、ルイーゼの選んだ装備をフォローする。

「軽くて動いても音がしないから、暗殺者のルイーゼに向いていると思うけど、身体の線が浮き出ているから、戦闘時以外は、何か上に羽織ったほうが良いね」

 アレクに認められて、ルイーゼは嬉しそうに答える。

「うん! そうする!」

「武器は?」

「ショートソードと弓を」

「そうか」

 アレクは、ルイーゼの傍らのナタリーを見る。

 ナタリーは、魔導師用の上品なローブと魔力水晶マナ・クリスタルの付いた杖を装備していた。

 アルがナタリーの装備を褒める。

「ナタリー、似合ってるよ」

 ナタリーは、アルに微笑みながら答える。

「ありがとう」

 アレクがハッとして口を開く。

「そう言えば、ドミトリーは?」

 アルも追従する。

「あいつ、何処に行ったんだ?」

「拙僧なら、ここにおりますぞ!!」

 物陰からドミトリーが出てくる。

 修道僧モンクのドミトリーは、東洋風の白い法衣の上に墨染の直綴じきとつを羽織り、首から大きな数珠を下げ、両手には手甲を付けていた。

 アルがドミトリーを茶化す。

「・・・なんか、一気に坊さんみたくなったな」

 ドミトリーは、ツルツルな自分の頭を撫でながら答える。

「拙僧は、修道僧モンクですから」

 アレクがドミトリーに尋ねる。

「武器は無いのか?」

 ドミトリーは、握った拳を見せて、小隊の皆に力説する。

修道僧モンクは、この鍛え上げた肉体こそが武器!! 男の全身、これ、武器なり!! ・・・武器として装備しているのは、この手甲だけです」

「「はは・・・」」

 ドミトリーの力説に小隊の皆は苦笑いしていた。

  
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