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第三章 中核都市エームスハーヴェン
第六十話 一騎打ち
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中核都市エームスハーヴェンを攻略するべく十万人のカスパニア王国軍が迫る中、ジカイラはその軍勢の前で地面に魔剣シグルドリーヴァを突き立て、仁王立ちして対峙する。
ヒナは馬に乗ったまま、ジカイラを見守る。
程なくカスパニア王国軍の中から、一組の男女がジカイラ達の前にやってくる。
カスパニア王国軍を率いる将軍ロビンと宮廷魔導師ナオ・レンジャーであった。
二人は、ジカイラ達の前で馬から降りて対峙する。
ロビンが口を開く。
「貴様か! ジカイラというのは! 一騎打ちを望むというその勝負、受けてやる!!」
一方のナオ・レンジャーは、ジカイラに見惚れ、目を細める。
(鍛え抜いた肉体といい、精悍な顔立ちといい、良い男ね!)
ジカイラが口を開く。
「オレが勝ったら、軍を退け! 良いな?」
ロビンが答える。
「何を馬鹿な事を・・・」
そこまで言いかけたロビンの言葉をナオ・レンジャーが遮り、答える。
「良いわよ! その条件で!! ・・・もちろん、勝つわよね? ロビン!」
一瞬、躊躇したものの、ロビンは答える。
「お、おう! 当たり前だ!!」
そう言うと、ロビンは武器を取り出して身構える。
ロビンの武器は、右手に持つ柄の先に長い鉄鎖がついており、鉄鎖の先には人の頭ほどの鉄球が着いていた。
ロビンは、右手で柄を振り上げると、鉄球を振り回し始める。
ジカイラも地面に突き立てていた魔剣シグルドリーヴァを引き抜くと、ロビンに対して剣先を向け、構える。
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身から妖しい光が立ち上る。
ロビンが口を開く。
「勝負だ! 黒い剣士!!」
ジカイラも口を開く。
「行くぜ!!」
ヒナとナオ・レンジャーが立ち会い、中核都市エームスハーヴェンの市民達が見守り、十万のカスパニア王国軍の兵士達の目前で、ジカイラとロビンは一騎打ちを始める。
「ウォオオオ!!」
雄叫びを上げながら、ロビンは振り回している鉄球をジカイラに投げつける。
ジカイラは大きく身を反らして鉄球を避ける。
二度、三度とロビンは鉄球を振り回し、ジカイラに投げつけるが、いずれもジカイラは避ける。
ジカイラは、ロビンを観察していた。
(腕力はあるようだが、攻撃は大振りなうえ、トロい。・・・少し出方を見るか)
攻撃を避けてばかりのジカイラに対して、ロビンは煽り始める。
「おらおらぁ~。どうした? 黒い剣士! 避けてばかりかぁ? あぁん?」
一見、ロビンが優勢に見えるため、カスパニア軍の兵士達が歓声を上げ始める。
ヒナは、一騎打ちで戦うジカイラを見詰めて祈るように呟く。
「ジカさん・・・」
ジカイラは冷静にロビンの攻撃を分析する。
(此奴は右側からしか攻撃してこない!)
ジカイラが反撃に転じる。
ジカイラは、ロビンが投げつけてきた鉄球を魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が響き渡る。
投げた鉄球を打ち返された事にロビンが驚く。
「う、打ち返しただと!?」
二人の一騎打ちを離れて見ているエームスハーヴェンの市民達や、カスパニア軍の兵士達も驚き、ざわめき出す。
ロビンは、更に激しく鉄球の投げ付けを繰り返す。
「クソッ!! ウラァアアア!!」
ジカイラは、繰り返し投げつけられる鉄球を、全て魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が何度も戦場に響き渡る。
ナオ・レンジャーはジカイラの戦い振りに、ますます見惚れる。
(・・・凄い。まだまだ余裕がありそうね)
意を決したジカイラは、魔剣を低く構え、腰を落とすと深く息を吸い、渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァでロビンが投げつけてきた鉄球を打つ。
ジカイラの豪腕で振り上げられた魔剣シグルドリーヴァがロビンが投げつけてきた鉄球を砕く。
ロビンを含む、それを見ていた者達が驚愕する。
「剣で鉄球を打ち砕いただと!?」
ジカイラは魔剣を低く構え、大きく間合いを踏み込むと、再び渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァを振り上げる。
魔剣シグルドリーヴァの峰がロビンの側頭部を捕える。
「ごあっ!?」
鈍い音と短い嗚咽と共にロビンは意識を失い、白目を剥いて後ろに倒れる。
気絶して倒れたロビンは、仰向けにひっくり返った蛙のように、手足をピクピクと痙攣させていた。
ジカイラは、右手に魔剣シグルドリーヴァを持つと、高く掲げる。
(勝った!!)
ジカイラとロビンの一騎打ちの結果に、エームスハーヴェンの市民達が歓声を上げ、カスパニア軍の兵士達は落胆の声を漏らす。
ヒナが乗っていた馬から降りて、ジカイラのところへ走り出す。
「ジカさん!!」
そう叫ぶと、ジカイラの元に駆け寄ったヒナは、その首に抱きついてキスする。
二人の一騎打ちの結果にナオ・レンジャーは高笑いして、ジカイラに歩み寄る。
「あーはっはっは! ・・・男だねぇ!!」
ナオ・レンジャーはヒナを無視して、両手を前で合わせると、二の腕で胸を押し寄せ、谷間を強調する姿勢を取り、うっとりとジカイラの顔を見上げる。
「どうだ? その貧相な小娘から乗り換えて、『私の男』にならないか?」
露骨にジカイラを誘惑するナオ・レンジャーに対して、ヒナが敵意を剥き出しにして睨み付ける。
ジカイラが口を開く。
「ワリィな。オレはコイツの彼処の締り具合が気に入ってるんでな」
ヒナが赤面してジカイラを小突く。
「彼処の締まり具合って! 沢山の人が聞いてるのよ!!」
ナオ・レンジャーは不敵な笑みを浮かべる。
「なら、腕ずくで私の男にしてやる!!」
ヒナが、ジカイラとナオ・レンジャーの間に割って入る。
「彼処がガバガバの年増女は、お呼びじゃないわ!!」
ジカイラは苦笑いしながら呟く。
「彼処がガバガバって・・・」
ヒナに侮辱された怒りで、ナオ・レンジャーの額に血管が浮き出る。
「この私が・・・。私が年増だと!? 殺してやる!! 小娘が!!!」
ヒナがジカイラの方を振り向いて告げる。
「ジカさんは、下がってて!」
「・・・判ったよ」
ジカイラは、数歩、後ろに下がる。
ヒナとナオ・レンジャーが互いに睨み合って対峙する。
バレンシュテット帝国の『氷の魔女』と、カスパニア王国の『宮廷魔導師』の一騎打ちが始まろうとしていた。
ヒナは馬に乗ったまま、ジカイラを見守る。
程なくカスパニア王国軍の中から、一組の男女がジカイラ達の前にやってくる。
カスパニア王国軍を率いる将軍ロビンと宮廷魔導師ナオ・レンジャーであった。
二人は、ジカイラ達の前で馬から降りて対峙する。
ロビンが口を開く。
「貴様か! ジカイラというのは! 一騎打ちを望むというその勝負、受けてやる!!」
一方のナオ・レンジャーは、ジカイラに見惚れ、目を細める。
(鍛え抜いた肉体といい、精悍な顔立ちといい、良い男ね!)
ジカイラが口を開く。
「オレが勝ったら、軍を退け! 良いな?」
ロビンが答える。
「何を馬鹿な事を・・・」
そこまで言いかけたロビンの言葉をナオ・レンジャーが遮り、答える。
「良いわよ! その条件で!! ・・・もちろん、勝つわよね? ロビン!」
一瞬、躊躇したものの、ロビンは答える。
「お、おう! 当たり前だ!!」
そう言うと、ロビンは武器を取り出して身構える。
ロビンの武器は、右手に持つ柄の先に長い鉄鎖がついており、鉄鎖の先には人の頭ほどの鉄球が着いていた。
ロビンは、右手で柄を振り上げると、鉄球を振り回し始める。
ジカイラも地面に突き立てていた魔剣シグルドリーヴァを引き抜くと、ロビンに対して剣先を向け、構える。
魔剣シグルドリーヴァの漆黒の刀身から妖しい光が立ち上る。
ロビンが口を開く。
「勝負だ! 黒い剣士!!」
ジカイラも口を開く。
「行くぜ!!」
ヒナとナオ・レンジャーが立ち会い、中核都市エームスハーヴェンの市民達が見守り、十万のカスパニア王国軍の兵士達の目前で、ジカイラとロビンは一騎打ちを始める。
「ウォオオオ!!」
雄叫びを上げながら、ロビンは振り回している鉄球をジカイラに投げつける。
ジカイラは大きく身を反らして鉄球を避ける。
二度、三度とロビンは鉄球を振り回し、ジカイラに投げつけるが、いずれもジカイラは避ける。
ジカイラは、ロビンを観察していた。
(腕力はあるようだが、攻撃は大振りなうえ、トロい。・・・少し出方を見るか)
攻撃を避けてばかりのジカイラに対して、ロビンは煽り始める。
「おらおらぁ~。どうした? 黒い剣士! 避けてばかりかぁ? あぁん?」
一見、ロビンが優勢に見えるため、カスパニア軍の兵士達が歓声を上げ始める。
ヒナは、一騎打ちで戦うジカイラを見詰めて祈るように呟く。
「ジカさん・・・」
ジカイラは冷静にロビンの攻撃を分析する。
(此奴は右側からしか攻撃してこない!)
ジカイラが反撃に転じる。
ジカイラは、ロビンが投げつけてきた鉄球を魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が響き渡る。
投げた鉄球を打ち返された事にロビンが驚く。
「う、打ち返しただと!?」
二人の一騎打ちを離れて見ているエームスハーヴェンの市民達や、カスパニア軍の兵士達も驚き、ざわめき出す。
ロビンは、更に激しく鉄球の投げ付けを繰り返す。
「クソッ!! ウラァアアア!!」
ジカイラは、繰り返し投げつけられる鉄球を、全て魔剣シグルドリーヴァで打ち返す。
鈍い金属音が何度も戦場に響き渡る。
ナオ・レンジャーはジカイラの戦い振りに、ますます見惚れる。
(・・・凄い。まだまだ余裕がありそうね)
意を決したジカイラは、魔剣を低く構え、腰を落とすと深く息を吸い、渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァでロビンが投げつけてきた鉄球を打つ。
ジカイラの豪腕で振り上げられた魔剣シグルドリーヴァがロビンが投げつけてきた鉄球を砕く。
ロビンを含む、それを見ていた者達が驚愕する。
「剣で鉄球を打ち砕いただと!?」
ジカイラは魔剣を低く構え、大きく間合いを踏み込むと、再び渾身の力を込めて魔剣シグルドリーヴァを振り上げる。
魔剣シグルドリーヴァの峰がロビンの側頭部を捕える。
「ごあっ!?」
鈍い音と短い嗚咽と共にロビンは意識を失い、白目を剥いて後ろに倒れる。
気絶して倒れたロビンは、仰向けにひっくり返った蛙のように、手足をピクピクと痙攣させていた。
ジカイラは、右手に魔剣シグルドリーヴァを持つと、高く掲げる。
(勝った!!)
ジカイラとロビンの一騎打ちの結果に、エームスハーヴェンの市民達が歓声を上げ、カスパニア軍の兵士達は落胆の声を漏らす。
ヒナが乗っていた馬から降りて、ジカイラのところへ走り出す。
「ジカさん!!」
そう叫ぶと、ジカイラの元に駆け寄ったヒナは、その首に抱きついてキスする。
二人の一騎打ちの結果にナオ・レンジャーは高笑いして、ジカイラに歩み寄る。
「あーはっはっは! ・・・男だねぇ!!」
ナオ・レンジャーはヒナを無視して、両手を前で合わせると、二の腕で胸を押し寄せ、谷間を強調する姿勢を取り、うっとりとジカイラの顔を見上げる。
「どうだ? その貧相な小娘から乗り換えて、『私の男』にならないか?」
露骨にジカイラを誘惑するナオ・レンジャーに対して、ヒナが敵意を剥き出しにして睨み付ける。
ジカイラが口を開く。
「ワリィな。オレはコイツの彼処の締り具合が気に入ってるんでな」
ヒナが赤面してジカイラを小突く。
「彼処の締まり具合って! 沢山の人が聞いてるのよ!!」
ナオ・レンジャーは不敵な笑みを浮かべる。
「なら、腕ずくで私の男にしてやる!!」
ヒナが、ジカイラとナオ・レンジャーの間に割って入る。
「彼処がガバガバの年増女は、お呼びじゃないわ!!」
ジカイラは苦笑いしながら呟く。
「彼処がガバガバって・・・」
ヒナに侮辱された怒りで、ナオ・レンジャーの額に血管が浮き出る。
「この私が・・・。私が年増だと!? 殺してやる!! 小娘が!!!」
ヒナがジカイラの方を振り向いて告げる。
「ジカさんは、下がってて!」
「・・・判ったよ」
ジカイラは、数歩、後ろに下がる。
ヒナとナオ・レンジャーが互いに睨み合って対峙する。
バレンシュテット帝国の『氷の魔女』と、カスパニア王国の『宮廷魔導師』の一騎打ちが始まろうとしていた。
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