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第三章 中核都市エームスハーヴェン

第四十ニ話 ダークエルフ

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 ジカイラは、新たに現れた敵を観察する。

 闇の中から姿を表したダークエルフは、意匠を凝らしたミスリルの鎧を着込んでおり、その身分の高さが伺い知れた。

 レイピアを腰から下げ、盾を持たない事から、魔法剣士か魔法騎士だと思われた。

 ダークエルフがジカイラ達に話し掛ける。

「人間にしては、なかなかやるじゃないか」
 
 不敵な笑みに口元を歪めつつそう言うと、ダークエルフはレイピアを抜いて構える。

 ルナがジカイラの左脇を駆け抜けて、ダークエルフに斬り掛かる。

「やぁあああっ!!」

 ジカイラが口を開く。

「待て! 此奴は手強いぞ!!」

 ダークエルフは、次々と斬り掛かるルナの全ての剣戟をレイピアで受け止める。

 ダークエルフは、薄ら笑みを浮かべたまま、ルナに話し掛ける。

獣人ビーストマンの剣士? いや、軽戦士フェンサーか? だが、所詮は基本職だな」

 ダークエルフは、剣戟の隙きを突いて、ルナを蹴り倒す。

「きゃあっ!!」

「ルナちゃん!!」

 蹴り倒されたルナを庇うようにケニーがダークエルフに斬り掛かる。

 ケニーは、ルナとダークエルフの間に割って入り、両手に持つ二本のショートソードで次々と剣戟を繰り出す。

 しかし、ダークエルフは、次々と繰り出すケニーの全ての剣戟をレイピアで受け止める。

 ダークエルフは、ケニーに話し掛ける。

「今度は忍者か? 私の動きについて来られるとは、なかなかやる」

 ジカイラが叫ぶ。

「下がれ! ケニー!!」

 ジカイラの声を聞いたケニーがルナを抱えて、その場から大きく飛び退く。

 ジカイラは腰を落として深く息を吸い込み、貯めの姿勢を取っていた。

いちせん!!)

 ジカイラの渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃が剛腕から放たれる。

 ダークエルフは、その身を大きく後ろに反らし、ジカイラの斧槍ハルバードの一撃を避ける。

( そいつは想定済さ! せん!!) 

 ジカイラは身を翻すと、もう一度、渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃をダークエルフに加える。

 ダークエルフは大きく後ろに飛び退いて、ジカイラの斧槍ハルバードの一撃を避ける。

 ダークエルフの顔から笑みが消え、真顔で口を開く。

「これは・・・危ないな」

(避けやがった!?)

 ジカイラは、頭上で斧槍ハルバードを二回ほど回すと、ダークエルフに向けて、大きく振り下ろす。

 ダークエルフは、高く飛び跳ねてジカイラの斧槍ハルバードの一撃を避けると、斧槍ハルバードの上に着地する。

 ダークエルフは、ジカイラが振り下ろした斧槍ハルバードの上に立っていた。

 ダークエルフが呟く。

「当たれば、タダでは済まないだろうな」

 驚いたジカイラが思わず口を開く。

「なん・・・だと!?」 

 ダークエルフは、斧槍ハルバードの上からジカイラの肩を踏み台にして、ジカイラを飛び越え、後ろに進む。

(しまった!!)

 そう思ったジカイラの後ろには、ヒナとティナが居た。

 後衛の二人に接近戦でダークエルフの相手は無理であった。

 ジカイラは斧槍ハルバードを手放すと、左手に大盾タワーシールドを持ち、右手で腰から海賊剣カトラスを抜いて振り向く。

 ジカイラを飛び越えたダークエルフの正面にはヒナが居た。

 ヒナは素早くダークエルフに向けて手をかざして魔法を唱える。

氷結水晶槍クリスタル・ランス!!」

 ダークエルフもヒナに向けて手をかざして魔法を唱える。

呪いのカースド・雷撃ライトニング!!」

 ダークエルフのかざした手の先から雷撃が現れ、ヒナを捕える。

 ヒナがかざした手の先に氷の槍が作られ、氷の槍はダークエルフめがけて飛んでいく。

 ダークエルフは氷結水晶槍クリスタル・ランスを避けた。

「きゃあああ!!」
 
 魔法の雷撃を受けたヒナは、その場に倒れ込む。 

「ヒナちゃん!!」

 ティナはそう叫ぶと、ヒナに回復魔法を掛ける。

治癒ヒール!!」 

 回復魔法を掛けたティナの目の前にダークエルフが現れる。

 突然、至近距離に現れた敵に、ティナは目を見開いて杖を構えたまま、立ちすくむ。

「・・・!!」

 ダークエルフは侮蔑した目線でティナを見下す。

「女の僧侶プリーストか」

 そう言うと、ダークエルフはティナが被っている帽子を手で払い飛ばした。

「小賢しい。コレをくれてやる」

 ダークエルフは、懐から細い鎖でできたアイテムを取り出すと、ティナの頭にそれを被せた。

「きゃあああっ!!」

 頭にアイテムを被せられたティナは、悲鳴を上げて失神する。

 ジカイラが雄叫びを上げながらダークエルフに迫る。

「クソがぁ!!!」

 ダークエルフは、海賊剣カトラスで斬り掛かってくるジカイラの剣戟をレイピアで受け止める。

 ダークエルフは真顔でジカイラを評価する。

「ほう? 貴様は剣技もなかなかだな」

「ほざけぇ!!」

 ジカイラは大盾タワーシールドを構えると、そのままダークエルフ目掛けて突進する。

「なっ!?」

 ジカイラの大盾タワーシールドはダークエルフを捕らえ、鈍い音と共に衝撃がジカイラの腕に伝わる。

 ダークエルフは、大盾タワーシールドの一撃を受け、よろめく。

「ぐぅっ!!」

 ジカイラが悪態を突く。

「戦じゃ盾はこうやって使うんだ! 覚えておけ!!」

 ダークエルフは、よろけた体勢を立て直すとジカイラに話し掛ける。

「まさか、この私に攻撃を当てられる人間が居るとは。貴様、名は何という?」

 名前を尋ねられたジカイラは、正直に答える。

「帝国無宿人、ジカイラ」

 ジカイラの名前を聞いたダークエルフは、レイピアを腰の鞘に収める。

「我が名は、シグマ・アイゼナハト。そこの忍者と貴様は一流の戦士だ。この私が認めてやる。黒い剣士ジカイラか。覚えておこう」

 そう告げるとシグマは、夜の闇の中に姿を消した。
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