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第ニ章 中核都市エンクホイゼン
第三十一話 荒んだ目
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ジカイラが煙幕が晴れた、商店街の路地裏を見回して口を開く。
「・・・消えた?」
ルナが獣耳を動かして、周囲を探る。
ルナは、ハッと気がついたように建物の屋根を見上げる。
「ケニーたん! 屋根の上!!」
ルナの言葉にジカイラ達は、一斉に屋根の上を見上げる。
建物の屋根の上に登ったキラーコマンド達は、屋根伝いに走って逃走中であった。
「行くよ! ルナちゃん!!」
「ええ!」
ケニーとルナは、素早く雨樋を伝って建物の屋根の上に登ると、キラーコマンド達を追う。
路地裏から屋根の上に登った二人を見上げるジカイラが叫ぶ。
「ケニー! ルナ! 深追いするなよ!」
ジカイラの元にティナとヒナが歩み寄る。
ヒナが口を開く。
「キラーコマンドって、子供の盗賊団なの!?」
ティナは、哀れんだ表情で呟く。
「・・・そんな」
ジカイラは、歪んだ笑みを浮かべて呟く。
「ガキ共が、粋がりやがって。・・・麻薬組織をナメ過ぎだぞ」
ミランダ率いるキラーコマンド達は、商店街の屋根伝いに走ってジカイラ達から逃げていた。
途中で別れた、路地裏を荷車を押しているヒロ、マギー、クリスの三人と合流するためでもあった。
キラーコマンドの一人が口を開く。
「ミランダ! 二人、追って来る!!」
ミランダは振り返り、ケニーとルナの二人が、屋根伝いに自分たちを追って来る事を確認する。
「クッ!! みんな、先にヒロ達と合流しな!!」
そう言うとミランダは、ショートソードを抜いて、追って来るケニーに斬り掛かる。
ケニーは、両手で二本のショートソードを抜いて、屋根の上でミランダを斬り結ぶ。
下弦の月夜の元、商店街の屋根の上で甲高い金属音を上げながら、ケニーとミランダは剣戟を繰り返す。
基本職であるスカウト初心者のミランダと、上級職である忍者のケニーとでは、圧倒的に力量差がある。
ケニーが本気を出そうと剣の構えを変えたとき、ルナがケニーの近くまで駆け寄って叫ぶ。
「ダメ!! ケニーたん!! その子は、ミランダ! 彼らは孤児院の子達よ!!」
ルナの声にケニーは、驚いて相手の顔を見る。
銀仮面越しにミランダの荒んだ目とケニーの真摯な目が合う。
ミランダもルナの声でケニー達に気が付く。
「お前達は、昼間の!?」
ケニーは、ミランダと剣を交えて剣戟を繰り返しながら、話し掛ける。
「ミランダ! 僕達は敵じゃない! 話を聞いてくれ!!」
「うるさい!!」
「孤児院も、院長先生も、シンジケートも、僕達が何とかする!! 信じてくれ!!」
「関係無い! お節介なんだよ!!」
ルナは、ケニーとミランダを挟む位置に回り込み、剣を構える。
ルナの位置取りを見たケニーは、本気を出す。
ケニーは、右手のショートソードの柄、十手のように湾曲した部分でミランダの剣を絡め取ると、身を翻して左手のショートソードの剣先をミランダの喉元に突き付ける。
「うっ!?」
ルナとケニーに挟まれ、喉元に剣先を突き付けられたミランダは、動きを止める。
ミランダは、観念して剣を屋根の上に捨てると、口を開く。
「好きにしな。・・・何者なんだ? お前達は??」
ケニーは、両手の剣を鞘に収めると、ミランダに話し掛ける。
「明日の昼、キラーコマンドのみんなで宿屋の食堂に来て欲しい。そこで話そう」
ミランダは、諦めたように答える。
「判った。・・・ただし、説教なら聞かないよ!」
そう言うと、ミランダは、二人の元から走り去って行った。
キラーコマンドの三人、ヒロ、クリス、マギーの三人は、深夜の貧民街の通りで荷車を押して居た。
ヒロとクリスが荷車を動かして貧民街の通りを進み、マギーは荷車の上で金貨の入った箱を開け、小袋に金貨を少し入れると、貧民街の家々に金貨の入った小袋を投げ込んでいく。
金貨を配る三人の元に他のキラーコマンドのメンバー達が駆け寄ってくる。
ヒロが口を開く。
「今日も上手くいったな。・・・ミランダは?」
ロブが答える。
「新手の二人が屋根の上まで追い掛けて来て、ケツ持ちに」
「そうか。ま、ミランダなら大丈夫だろう」
金貨を配り終えたマギーがヒロに話し掛ける。
「ヒロ、配り終わったわ。残りはこれだけ」
僅かな金貨がキラーコマンド達の手元に残っていた。
ヒロが答える。
「残りは、銅貨に両替してから院長先生に「寄付だ」と言って渡すんだぞ。金貨のまま、渡したらダメだからな」
「判ってるわ」
そう答えたマギーは、荷車の上で下弦の月を見上げながら、ヒロに話し掛ける。
「ねぇ、ヒロ。・・・私達、いつまで、こんな事続けるの?」
ヒロは、苦しそうにマギーに答える。
「・・・判らない。こんな暮らしから、抜け出せるようになるまでさ!!」
「・・・消えた?」
ルナが獣耳を動かして、周囲を探る。
ルナは、ハッと気がついたように建物の屋根を見上げる。
「ケニーたん! 屋根の上!!」
ルナの言葉にジカイラ達は、一斉に屋根の上を見上げる。
建物の屋根の上に登ったキラーコマンド達は、屋根伝いに走って逃走中であった。
「行くよ! ルナちゃん!!」
「ええ!」
ケニーとルナは、素早く雨樋を伝って建物の屋根の上に登ると、キラーコマンド達を追う。
路地裏から屋根の上に登った二人を見上げるジカイラが叫ぶ。
「ケニー! ルナ! 深追いするなよ!」
ジカイラの元にティナとヒナが歩み寄る。
ヒナが口を開く。
「キラーコマンドって、子供の盗賊団なの!?」
ティナは、哀れんだ表情で呟く。
「・・・そんな」
ジカイラは、歪んだ笑みを浮かべて呟く。
「ガキ共が、粋がりやがって。・・・麻薬組織をナメ過ぎだぞ」
ミランダ率いるキラーコマンド達は、商店街の屋根伝いに走ってジカイラ達から逃げていた。
途中で別れた、路地裏を荷車を押しているヒロ、マギー、クリスの三人と合流するためでもあった。
キラーコマンドの一人が口を開く。
「ミランダ! 二人、追って来る!!」
ミランダは振り返り、ケニーとルナの二人が、屋根伝いに自分たちを追って来る事を確認する。
「クッ!! みんな、先にヒロ達と合流しな!!」
そう言うとミランダは、ショートソードを抜いて、追って来るケニーに斬り掛かる。
ケニーは、両手で二本のショートソードを抜いて、屋根の上でミランダを斬り結ぶ。
下弦の月夜の元、商店街の屋根の上で甲高い金属音を上げながら、ケニーとミランダは剣戟を繰り返す。
基本職であるスカウト初心者のミランダと、上級職である忍者のケニーとでは、圧倒的に力量差がある。
ケニーが本気を出そうと剣の構えを変えたとき、ルナがケニーの近くまで駆け寄って叫ぶ。
「ダメ!! ケニーたん!! その子は、ミランダ! 彼らは孤児院の子達よ!!」
ルナの声にケニーは、驚いて相手の顔を見る。
銀仮面越しにミランダの荒んだ目とケニーの真摯な目が合う。
ミランダもルナの声でケニー達に気が付く。
「お前達は、昼間の!?」
ケニーは、ミランダと剣を交えて剣戟を繰り返しながら、話し掛ける。
「ミランダ! 僕達は敵じゃない! 話を聞いてくれ!!」
「うるさい!!」
「孤児院も、院長先生も、シンジケートも、僕達が何とかする!! 信じてくれ!!」
「関係無い! お節介なんだよ!!」
ルナは、ケニーとミランダを挟む位置に回り込み、剣を構える。
ルナの位置取りを見たケニーは、本気を出す。
ケニーは、右手のショートソードの柄、十手のように湾曲した部分でミランダの剣を絡め取ると、身を翻して左手のショートソードの剣先をミランダの喉元に突き付ける。
「うっ!?」
ルナとケニーに挟まれ、喉元に剣先を突き付けられたミランダは、動きを止める。
ミランダは、観念して剣を屋根の上に捨てると、口を開く。
「好きにしな。・・・何者なんだ? お前達は??」
ケニーは、両手の剣を鞘に収めると、ミランダに話し掛ける。
「明日の昼、キラーコマンドのみんなで宿屋の食堂に来て欲しい。そこで話そう」
ミランダは、諦めたように答える。
「判った。・・・ただし、説教なら聞かないよ!」
そう言うと、ミランダは、二人の元から走り去って行った。
キラーコマンドの三人、ヒロ、クリス、マギーの三人は、深夜の貧民街の通りで荷車を押して居た。
ヒロとクリスが荷車を動かして貧民街の通りを進み、マギーは荷車の上で金貨の入った箱を開け、小袋に金貨を少し入れると、貧民街の家々に金貨の入った小袋を投げ込んでいく。
金貨を配る三人の元に他のキラーコマンドのメンバー達が駆け寄ってくる。
ヒロが口を開く。
「今日も上手くいったな。・・・ミランダは?」
ロブが答える。
「新手の二人が屋根の上まで追い掛けて来て、ケツ持ちに」
「そうか。ま、ミランダなら大丈夫だろう」
金貨を配り終えたマギーがヒロに話し掛ける。
「ヒロ、配り終わったわ。残りはこれだけ」
僅かな金貨がキラーコマンド達の手元に残っていた。
ヒロが答える。
「残りは、銅貨に両替してから院長先生に「寄付だ」と言って渡すんだぞ。金貨のまま、渡したらダメだからな」
「判ってるわ」
そう答えたマギーは、荷車の上で下弦の月を見上げながら、ヒロに話し掛ける。
「ねぇ、ヒロ。・・・私達、いつまで、こんな事続けるの?」
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