アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女

StarFox

文字の大きさ
上 下
6 / 64
第一章 中核都市デン・ヘルダー

第六話 蜥蜴人の襲撃

しおりを挟む
 宿屋に駆け込み、蜥蜴人リザードマンの襲撃を知らせてきた男は、荒い息でしゃがみ込む。

 ジカイラがしゃがみこんだ男に尋ねる。

「敵はどれくらいの規模だ?」

 男は息も絶え絶えにジカイラに答える。

「わ、判りません」

 ティナがジカイラに聞く。

「ジカさん、どうするつもり!?」

「オレ達も行こう!」

 そう言うとジカイラは、自分達の席の壁に立て掛けてある大盾タワーシールドを取り出す。

 ケニーが苦笑いしながら話す。

「そう言うと思ったよ」

 ジカイラが他のメンバーに告げる。

「自警団なんて、あんな素人集団じゃ、蜥蜴人リザードマンには勝てない! 自警団がやられたら、蜥蜴人リザードマンは、此処にも攻め込んでくる! 先手を打とう!!」

 ヒナもジカイラの意見に同調する。

「街中で混戦になったら厄介よ。 行きましょう!」

 ジカイラ達は武装して、宿屋から大通りへ出る。




 ジカイラ達が大通りへ出ると、街の入口の方で戦闘が始まっており、小走りで戦闘している場所へ向かう。

 蜥蜴人リザードマンと自警団の戦闘は、4:6から3:7の割合で蜥蜴人リザードマン側が優勢であった。

 ジカイラは自警団のリーダーらしき男に話し掛ける。

「あんたが自警団のリーダーか? ここはオレたちに任せて、仲間を下がらせろ!!」

 リーダーの男は怪訝な顔をする。

「なんだ? お前ら?? 冒険者か?」

 ジカイラはリーダーの男を一喝する。

「早くしろ!! 全滅するぞ!!」

 リーダーの男は、ジカイラに気圧され、撤退を命令する。

「・・・判った。 みんな、引け! 撤退だ!!」

 リーダーの男の命令で、自警団はジカイラ達の後ろに下がった。






 自警団の撤退を見届けたジカイラは、自分の後ろにいるヒナに指示する。

「ヒナ! やれ!!」

「任せて!!」

 ヒナが両手を蜥蜴人リザードマン達の集団にかざし、魔法の詠唱を始めると、ヒナの足元に一つ、両手の先に魔法陣が等間隔で4つ現れる。

氷結フロスト暴風・ストーム!!」

 4つの魔法陣から大通りに陣取る蜥蜴人リザードマン達の集団に向けて、一直線に激しい凍気が噴き出し、蜥蜴人リザードマン達の集団を凍らせていき、凍死した蜥蜴人リザードマンが次々と倒れていく。

 自警団のリーダーの男が驚く。

「ま、魔法陣が4つも!?」

 ジカイラは、驚く自警団のリーダーの男を一瞥すると、呟く。

「さて、オレたちの出番だな」

 ジカイラの言葉を合図に、ティナが仲間達に強化魔法を掛ける。

 ジカイラはヒナの前に出ると、斧槍ハルバードを大きく二度、振り回した後、正眼に構えて名乗りを上げる。

「帝国無宿人、ジカイラ推参!!」

 名乗りを上げたジカイラは、腰を落として深く息を吸い込み、貯めの姿勢を取る。

 三体の蜥蜴人リザードマンがジカイラに襲い掛かる。

(  いちせん!!)

 ジカイラの渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃が剛腕から放たれる。

 ジカイラの斧槍ハルバードが一撃で三体の蜥蜴人リザードマンを薙ぎ払う。

 蜥蜴人リザードマン三体のうち、二体は胴体が半分にちぎれて飛ぶ。

 ジカイラの斧槍ハルバードの一撃を見た蜥蜴人リザードマン達が怯む。

 自警団のリーダーの男も驚愕する。

「す、凄い・・・」

 ケニーとルナがジカイラの両脇を走り抜け、蜥蜴人リザードマン達に斬り込む。

 ケニーは、走りながら腰の鞘から愛用の二本のショートソード「ケニー・スペシャル」を抜いて構える。

 ルナは、怯んでいる蜥蜴人リザードマンの胸を剣で貫く。

 ケニーも蜥蜴人リザードマンの喉と顎を剣で下から突き上げて倒す。

 ケニーとルナの戦いぶりを見ていたジカイラも、雄叫びを上げながら蜥蜴人リザードマン達に斬り込む。

「ウォオオオオオ!!」

 ジカイラは、斧槍ハルバードで正面に居た蜥蜴人リザードマンの腹を突き刺すと、そのまま斧槍ハルバードを立てて、蜥蜴人リザードマンを持ち上げ、後ろに投げ捨てる。

 ジカイラ達の攻撃によって、残り少なくなった蜥蜴人リザードマン達は逃げ出した。






 ジカイラは、斧槍ハルバードを肩に担ぎ、傍らのケニーとルナに話し掛ける。

「奴等、引き上げていくぞ」

 ケニーは笑顔で答える。

「勝ったね」

 ルナも笑顔で答える。

「やったぁ!」

 蜥蜴人リザードマン達を蹴散らしたジカイラ達の元へ、自警団のリーダーがやってくる。

「あんたら、凄いな。一体、何者なんだ?」

 ジカイラは咄嗟に作り話をでっち上げる。

「オレ達は、巡礼者の一行さ。あとの処理は、お前ら自警団に任せる。詳しい話は、宿屋で話そう」

 そう言うと、自警団のリーダーの男と共に宿屋へ向かった。







 ジカイラ達は、宿屋の酒場で自警団のリーダーの男から詳しい事情を聞く。

 自警団のリーダーの男によると、二ヶ月ほど前から断続的に蜥蜴人リザードマン達が襲ってくるようになったという。

 ジカイラがリーダーの男に尋ねる。

蜥蜴人リザードマンは、生命を脅かしたり、生息地の集落を侵したりしなければ、人間に敵対することは少ない。何か心当たりがあるんじゃないのか?」

 リーダーの男が答える。

「判らない。我々に心当たりはない」

 ヒナがリーダーの男に尋ねる。

「他の街から助けは来ないの?」

 リーダーの男が答える。

「この街の領主様が、中核都市のデン・ヘルダーに援軍の派遣を依頼したんだが、デン・ヘルダーの領主が『デン・ヘルダーの助けが欲しければ、ツバキ姫を差し出せ』と言って、援軍を渋っているんだ」

 ティナが尋ねる。

「ツバキ姫?」

 リーダーの男が答える。

「そうだ。この街の領主様の息女のツバキ姫様さ。年頃の美人で、帝国の貴族からも縁談が申し込まれるくらいの評判なんだ。良縁なら、この街の領主様も『援軍の対価』として、この話を受けるだろう。しかし、デン・ヘルダーの領主は、既婚者であるうえ、中年の漁色家で悪名高いから、この街の領主様は悩んでいるとのことだ」

 ケニーが両肩を竦めて話す。

「相手が奥さんの居る既婚者で、悪名高い中年の漁色家なら、親は悩むだろうね」

 ルナが皆に尋ねる。

「姫様を人質にするということですか?」

 ジカイラが答える。

「『人質 兼 性奴隷』ってところだ。『助けが欲しければ、愛人にするから娘を差し出せ』ってことさ」

 ジカイラの言葉にティナ、ヒナ、ルナの女の子三人が恥じらいを見せる。

「「『性奴隷』って・・・」」

 リーダーの男が口を開く。

「・・・我々、この街の者は、姫様には幸せになって貰いたい。だから、及ばずながら自分達で自警団を作り、蜥蜴人リザードマン相手に戦っているんだ」

 納得したようにジカイラが答える。

「なるほどなぁ・・・」

 リーダーの男が続ける。 

「さっきの戦いぶりを見たが、あんた達は強い。どうか、この街のために力を貸して貰えないだろうか? 是非、明日、領主様に会って欲しい」

 ジカイラは他のメンバーに話し掛ける。

「乗り掛けた船ってヤツだ。この街の領主に会ってみるか?」

 ヒナが口を開く。

「会ってみましょう。領主からも話を聞いてみる必要があるわね」

 ティナも賛同する。

「どんな領主なのか、会ってみたいわね」

 ケニーもルナも賛同する。

「異議なし。会ってみよう」

 


 ジカイラ達は、自警団の紹介で、明日、デン・ホールンの領主に会うこととなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...