アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女

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第一章 中核都市デン・ヘルダー

第六話 蜥蜴人の襲撃

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 宿屋に駆け込み、蜥蜴人リザードマンの襲撃を知らせてきた男は、荒い息でしゃがみ込む。

 ジカイラがしゃがみこんだ男に尋ねる。

「敵はどれくらいの規模だ?」

 男は息も絶え絶えにジカイラに答える。

「わ、判りません」

 ティナがジカイラに聞く。

「ジカさん、どうするつもり!?」

「オレ達も行こう!」

 そう言うとジカイラは、自分達の席の壁に立て掛けてある大盾タワーシールドを取り出す。

 ケニーが苦笑いしながら話す。

「そう言うと思ったよ」

 ジカイラが他のメンバーに告げる。

「自警団なんて、あんな素人集団じゃ、蜥蜴人リザードマンには勝てない! 自警団がやられたら、蜥蜴人リザードマンは、此処にも攻め込んでくる! 先手を打とう!!」

 ヒナもジカイラの意見に同調する。

「街中で混戦になったら厄介よ。 行きましょう!」

 ジカイラ達は武装して、宿屋から大通りへ出る。




 ジカイラ達が大通りへ出ると、街の入口の方で戦闘が始まっており、小走りで戦闘している場所へ向かう。

 蜥蜴人リザードマンと自警団の戦闘は、4:6から3:7の割合で蜥蜴人リザードマン側が優勢であった。

 ジカイラは自警団のリーダーらしき男に話し掛ける。

「あんたが自警団のリーダーか? ここはオレたちに任せて、仲間を下がらせろ!!」

 リーダーの男は怪訝な顔をする。

「なんだ? お前ら?? 冒険者か?」

 ジカイラはリーダーの男を一喝する。

「早くしろ!! 全滅するぞ!!」

 リーダーの男は、ジカイラに気圧され、撤退を命令する。

「・・・判った。 みんな、引け! 撤退だ!!」

 リーダーの男の命令で、自警団はジカイラ達の後ろに下がった。






 自警団の撤退を見届けたジカイラは、自分の後ろにいるヒナに指示する。

「ヒナ! やれ!!」

「任せて!!」

 ヒナが両手を蜥蜴人リザードマン達の集団にかざし、魔法の詠唱を始めると、ヒナの足元に一つ、両手の先に魔法陣が等間隔で4つ現れる。

氷結フロスト暴風・ストーム!!」

 4つの魔法陣から大通りに陣取る蜥蜴人リザードマン達の集団に向けて、一直線に激しい凍気が噴き出し、蜥蜴人リザードマン達の集団を凍らせていき、凍死した蜥蜴人リザードマンが次々と倒れていく。

 自警団のリーダーの男が驚く。

「ま、魔法陣が4つも!?」

 ジカイラは、驚く自警団のリーダーの男を一瞥すると、呟く。

「さて、オレたちの出番だな」

 ジカイラの言葉を合図に、ティナが仲間達に強化魔法を掛ける。

 ジカイラはヒナの前に出ると、斧槍ハルバードを大きく二度、振り回した後、正眼に構えて名乗りを上げる。

「帝国無宿人、ジカイラ推参!!」

 名乗りを上げたジカイラは、腰を落として深く息を吸い込み、貯めの姿勢を取る。

 三体の蜥蜴人リザードマンがジカイラに襲い掛かる。

(  いちせん!!)

 ジカイラの渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃が剛腕から放たれる。

 ジカイラの斧槍ハルバードが一撃で三体の蜥蜴人リザードマンを薙ぎ払う。

 蜥蜴人リザードマン三体のうち、二体は胴体が半分にちぎれて飛ぶ。

 ジカイラの斧槍ハルバードの一撃を見た蜥蜴人リザードマン達が怯む。

 自警団のリーダーの男も驚愕する。

「す、凄い・・・」

 ケニーとルナがジカイラの両脇を走り抜け、蜥蜴人リザードマン達に斬り込む。

 ケニーは、走りながら腰の鞘から愛用の二本のショートソード「ケニー・スペシャル」を抜いて構える。

 ルナは、怯んでいる蜥蜴人リザードマンの胸を剣で貫く。

 ケニーも蜥蜴人リザードマンの喉と顎を剣で下から突き上げて倒す。

 ケニーとルナの戦いぶりを見ていたジカイラも、雄叫びを上げながら蜥蜴人リザードマン達に斬り込む。

「ウォオオオオオ!!」

 ジカイラは、斧槍ハルバードで正面に居た蜥蜴人リザードマンの腹を突き刺すと、そのまま斧槍ハルバードを立てて、蜥蜴人リザードマンを持ち上げ、後ろに投げ捨てる。

 ジカイラ達の攻撃によって、残り少なくなった蜥蜴人リザードマン達は逃げ出した。






 ジカイラは、斧槍ハルバードを肩に担ぎ、傍らのケニーとルナに話し掛ける。

「奴等、引き上げていくぞ」

 ケニーは笑顔で答える。

「勝ったね」

 ルナも笑顔で答える。

「やったぁ!」

 蜥蜴人リザードマン達を蹴散らしたジカイラ達の元へ、自警団のリーダーがやってくる。

「あんたら、凄いな。一体、何者なんだ?」

 ジカイラは咄嗟に作り話をでっち上げる。

「オレ達は、巡礼者の一行さ。あとの処理は、お前ら自警団に任せる。詳しい話は、宿屋で話そう」

 そう言うと、自警団のリーダーの男と共に宿屋へ向かった。







 ジカイラ達は、宿屋の酒場で自警団のリーダーの男から詳しい事情を聞く。

 自警団のリーダーの男によると、二ヶ月ほど前から断続的に蜥蜴人リザードマン達が襲ってくるようになったという。

 ジカイラがリーダーの男に尋ねる。

蜥蜴人リザードマンは、生命を脅かしたり、生息地の集落を侵したりしなければ、人間に敵対することは少ない。何か心当たりがあるんじゃないのか?」

 リーダーの男が答える。

「判らない。我々に心当たりはない」

 ヒナがリーダーの男に尋ねる。

「他の街から助けは来ないの?」

 リーダーの男が答える。

「この街の領主様が、中核都市のデン・ヘルダーに援軍の派遣を依頼したんだが、デン・ヘルダーの領主が『デン・ヘルダーの助けが欲しければ、ツバキ姫を差し出せ』と言って、援軍を渋っているんだ」

 ティナが尋ねる。

「ツバキ姫?」

 リーダーの男が答える。

「そうだ。この街の領主様の息女のツバキ姫様さ。年頃の美人で、帝国の貴族からも縁談が申し込まれるくらいの評判なんだ。良縁なら、この街の領主様も『援軍の対価』として、この話を受けるだろう。しかし、デン・ヘルダーの領主は、既婚者であるうえ、中年の漁色家で悪名高いから、この街の領主様は悩んでいるとのことだ」

 ケニーが両肩を竦めて話す。

「相手が奥さんの居る既婚者で、悪名高い中年の漁色家なら、親は悩むだろうね」

 ルナが皆に尋ねる。

「姫様を人質にするということですか?」

 ジカイラが答える。

「『人質 兼 性奴隷』ってところだ。『助けが欲しければ、愛人にするから娘を差し出せ』ってことさ」

 ジカイラの言葉にティナ、ヒナ、ルナの女の子三人が恥じらいを見せる。

「「『性奴隷』って・・・」」

 リーダーの男が口を開く。

「・・・我々、この街の者は、姫様には幸せになって貰いたい。だから、及ばずながら自分達で自警団を作り、蜥蜴人リザードマン相手に戦っているんだ」

 納得したようにジカイラが答える。

「なるほどなぁ・・・」

 リーダーの男が続ける。 

「さっきの戦いぶりを見たが、あんた達は強い。どうか、この街のために力を貸して貰えないだろうか? 是非、明日、領主様に会って欲しい」

 ジカイラは他のメンバーに話し掛ける。

「乗り掛けた船ってヤツだ。この街の領主に会ってみるか?」

 ヒナが口を開く。

「会ってみましょう。領主からも話を聞いてみる必要があるわね」

 ティナも賛同する。

「どんな領主なのか、会ってみたいわね」

 ケニーもルナも賛同する。

「異議なし。会ってみよう」

 


 ジカイラ達は、自警団の紹介で、明日、デン・ホールンの領主に会うこととなった。
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