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第八章 首都攻略戦

第八十九話 首都攻略戦(三)

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 秘密警察本部の建物から現れた秘密警察の戦闘員達が駆け寄るジカイラ達を見つけて襲い掛かって来る。

「来やがったな! 雑魚ども!!」 

 ジカイラは斧槍ハルバードを大きく二度、振り回した後、正眼に構えて名乗りを上げる。

「帝国無宿人、ジカイラ推参!!」

 ジカイラはそう言うと腰を落として深く息を吸い込み、貯めの姿勢を取る。

いちせん!!)

 ジカイラの渾身の力を込めた斧槍ハルバードの一撃が剛腕から放たれる。

 斧槍ハルバードによって襲い掛かって来た三人の戦闘員の胴体がちぎれ飛ぶ。

 ジカイラの攻撃によって胴体が半分にちぎれた三人の戦闘員のうち、二人は体が半分になっても、襲い掛かろうと、まだ動いていた。

 ジカイラはそのまま戦闘員達の中に斬り込んでいき、次々と戦闘員をなぎ倒していく。

(これが上級職の、暗黒騎士の能力か・・・。)

(基本職から中堅職に上がった時もそうだったが、能力が一桁上がったみたいだな)

(・・・どおりでラインハルトとナナイ、あの二人は強いはずだ)
 
拡大ワイド・アンチ・不死者アンデッド防御殻コクーン!!」

 より広範囲になったティナの対不死者アンデッド防御魔法がティナ、クリシュナ、ヒナの三人を囲う。

戦乙女のヴァルキリーズ戦槍ジャベリン!!」

氷結水晶クリスタルランス!!」

 ティナの神聖魔法をすり抜けてきた人間の戦闘員をクリシュナとヒナが魔法で倒して行く。

 ジカイラ達が秘密警察本部前で派手に戦闘していると、武装した集団が横から秘密警察の戦闘員達に襲い掛かる。

 ジカイラが叫ぶ。

「何処の連中だ?」

 武装集団の一人が答える。

「ラインハルト大佐の手の者か? 助太刀に来たぞ!! オレ達は冒険者ギルドだ!!」

 地下に潜伏していた冒険者ギルドが、宣伝プロパガンダビラの内容を知り、ジカイラ達による秘密警察本部への襲撃に加勢に来たのだった。





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 首都ハーヴェルベルクの東側に足の早い東部方面軍が到着。

 飛行戦艦四隻、飛行空母四隻、飛行巡洋艦など艦艇多数からなる大艦隊が陣形を組んで首都の東側に停泊し、革命政府を威圧する。

 次いで北部方面軍が首都の北側に到着。

 シュタインベルガーや飛竜達は地上に降り、北部方面軍は陣地を設営して休息する。

 地上に降り立っていても、古代エンシェントドラゴンシュタインベルガーの存在は圧巻であり首都の城壁からも、その巨大な姿を目視できた。

 ジカイラ達が秘密警察本部を襲撃、破壊したことにより、首都の治安維持は完全に麻痺する。

 帝国の東部方面軍と北部方面軍が首都に肉迫して威圧したことと、恐怖と抑圧の象徴であった秘密警察本部が破壊されたこと、カマッチ達が上空から宣伝プロパガンダビラを撒いた事で、首都の市民達は『反革命』を掲げて武装蜂起する。

 宣伝プロパガンダビラには、以下のように書かれていた。

<<ガレアス艦隊を撃破して帝都ハーヴェルベルクを守った英雄ラインハルト大佐が革命政府打倒のため帝国軍を率いて帝都を解放しに来る! 心ある市民は決起せよ!!>>

「「帝国、万歳ジーク・ライヒ!!」

 武装蜂起した市民達は革命宮殿に押し寄せ、革命軍の敗残兵と宮殿前の広場で衝突した。






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 あちこちから黒煙が立ち上る市街地上空を低空飛行していたラインハルト達は、宮殿前広場で衝突している革命軍敗残兵と武装市民の様子を目にする。

 ナナイがラインハルトに話し掛ける。

「革命政府が首都から逃げ出すのは、時間の問題ね」

「そうだな」

 ラインハルト達の飛空艇は、六本の結界塔に囲まれた漆黒の黒光りする石でできた石造りの塔にたどり着く。

 帝国魔法科学省。

 ヴァレンシュテットの魔法科学知識を集約する研究施設であったが、現在は、革命によって閉鎖されいた。

 ラインハルト達の飛空艇は妨害を受けることなく人の気配の無い中庭に着陸し、降り立つ。

 ラインハルトがナナイに話す。

「ジカイラ達の陽動が上手くいっているようだな」

「そうね」

 ハリッシュが二人に話し掛ける。

「今のうちです。中へ急ぎましょう!」

 ラインハルト達は中庭から建物の入口に向かう。

 ケニーが入口の扉の鍵を開ける。

「開いたよ。行こう!」

 ラインハルト達は廊下を走り抜け、階段のある踊り場を目指す。

 踊り場に出ると魔法科学省の中央部は吹き抜けになっており、塔の大きさ壮麗さが伺えた。

「ここで会ったのが百年目と云うやつだな! 謀反人ども!!」

 聞き覚えのある甲高い声がした方向を、ラインハルト達は踊り場から上層階へと連なる階段を見上げる。

 階段から踊り場へ降りてくる集団。

 その先頭の男にラインハルト達は、確かに見覚えがあった。

 オカッパ頭、瓶底眼鏡びんぞこめがね、出っ歯で小柄のネズミのような、神経質そうな小男。

「久しぶりだな! 殿
 




 革命政府の命令により帝国魔法科学省を警備していたのは、キャスパー男爵率いる『バジリスク小隊』であった。
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