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第七章 帝国軍
第七十五話 亡者へ捧ぐ冥界の晩餐
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--時間を少し戻した 東南戦線
『転移門』を通過したエリシスとリリーは、夜空から戦場を眺めていた。
満天の星空には、満月が浮かんでいる。
革命軍と獣人の戦闘は、戦力に劣る革命軍が壊滅し、総崩れとなって敗走していた。
エリシスが呆れたようにリリーに話す。
「革命軍のお百姓さん達が獣人に追い散らされているわね」
「当然ですよ。彼らは戦士でも騎士でもありません。鋤や鍬で畑を耕す百姓なのですから」
革命軍と獣人の戦闘は収束し、獣人は敗走する革命軍への追撃を止め、あちこちで勝利の雄叫びを揚げ始めた。
エリシスは魔法を使う機会が来るのを待っていた。
「・・・そろそろね。リリー、久々に私の魔法を見せてあげる」
「はい」
エリシスは両手を広げ、魔法の詠唱を始めた。
「Против Божьего пути, На дне подземного мираГолодать вечноРасскажи душу погибшим」
(神の道に背き冥府の底で永遠に餓え苦しむ亡者の魂に告げる)
エリシスの足元に一つ、そして頭上に一定間隔で巨大な魔法陣が10個現れる。
リリーが驚いて口に出す。
「ま、魔法陣が十個!? 」
エリシスは詠唱を続ける。
「Я завернут в сыновней издевательстве,В ловушке во тьме преступного мира,Мертвые души」
(穢れし瘴気に包まれ、冥府の闇に囚われし、亡者の魂達よ)
更にエリシスの四方に縦の魔法陣が現れる。
それを見たリリーは驚愕する。
「これは!? 積層型立体魔法陣!! それもこんなに大きなものを!」
エリシスは詠唱を続ける。
「Я помилую тебя, Жертва」
(我、汝等を憐れみ、贄を捧ぐ者なり)
リリーが周囲を見渡す。
「星が消えた? 月が??」
夜空から星が消えていき、満月は月食のように段々と欠けていく。
エリシスは詠唱を続ける。
「В обмен на ужин предлагается, Ответить на мой вызов」
(捧ぐ晩餐と引き換えに、我が召喚に応えよ)
リリーが気が付いたように呟く。
「これは! 次元牢獄!?」
エリシスは詠唱を続ける。
「Заказ привратника на основании договора с Hades」
(冥王との契約に基づき、門番に命ずる)
「открытый! ! Врата ада! !」
(開け!! 地獄の門!!)
「Dicata mortuorum Cenam inferis!!」
(亡者へ捧ぐ冥界の晩餐!!)
エリシスが魔法の詠唱を終えると、最上位の魔法陣が紫色の光を放つ。
エリシスの四方の魔法陣が東西南北それぞれの方向へかなりの距離を飛び、それらは停止すると、同じように紫色の光を放つ。
四方の魔法陣は、それぞれ巨大な結界を作り、エリシスの頭上の最上位の魔法陣と箱状に繋がる。
五つの魔法陣は、『次元牢獄』と呼ばれる巨大な四角い結界空間を作りあげた。
『次元牢獄』の中は、星の光は無く、天井には満月の中に黒い穴が開いているように見える月があり、僅かな明かりとして暗黒の地表を照らしている。
地上には、『次元牢獄』により大勢の獣人が捕らえられていた。
驚いているリリーにエリシスが微笑み掛ける。
「これからよ」
地面に無数の黒い穴が空く。
黒い穴からは、地獄の瘴気と共に沢山の餓鬼魂が現れた。
口だけがある、黒い大きなナメクジのような姿の餓鬼魂は、手当たり次第に何でも食べ始める。
獣人も、草も、木も、人も、獣も、虫も。
『次元牢獄』の中は、餓鬼魂の餌場となった。
獣人達が断末魔の悲鳴を上げながら餓鬼魂に食べられていく様子を、エリシスはサディスティックな微笑みを浮かべて、リリーは無表情に空から眺めていた。
エリシスがリリーに話し掛ける。
「これは『次元牢獄』を作り、その中を地獄と繋いで、捕らえたもの全てを餓鬼魂に食べさせるという魔法よ」
「強烈ですね」
「餓鬼魂が纏う地獄の瘴気が大地を汚染させるのと、次元の歪みから混沌が出来るので『禁呪』とされているの」
「『禁呪』なのですね・・・」
「そろそろね」
そう言うとエリシスは、胸の前で両手を合わせるように叩くと、両手で何かを下に下げる仕草をする。
すると巨大な『次元牢獄』の空間は、ゆっくりと真っ黒な地面に吸い込まれていった。
『次元牢獄』が全て消え去った後、地表には何も残っていなかった。
所々に煙のように地獄の瘴気が立ち上っているだけであった。
エリシスとリリーは、空から地面に降り立つ。
リリーが唖然として思わず言葉にする。
「凄い・・・。まさか、軍隊一つを丸ごと消滅させるとは・・・」
エリシスは屈託なく笑う。
「凄いでしょ? 綺麗サッパリ片付いたわ」
リリーが右手を顎に当て、考える仕草をしてエリシスに尋ねる。
「ところで、エリシス。何もかも餓鬼魂に食べさせてしまって、どうやって獣人の毛皮を入手するのですか? 獣人の肉どころか、骨も皮も残っていないようですが」
エリシスはハッとして、気不味そうにリリーに答える。
「リリー。そういう事は早く言わなくてはダメよ」
「はい」
「獣人の巣穴に行ってみましょう。一匹くらい残っているでしょ」
「判りました」
二人は獣人の巣穴へと向かって行った。
『転移門』を通過したエリシスとリリーは、夜空から戦場を眺めていた。
満天の星空には、満月が浮かんでいる。
革命軍と獣人の戦闘は、戦力に劣る革命軍が壊滅し、総崩れとなって敗走していた。
エリシスが呆れたようにリリーに話す。
「革命軍のお百姓さん達が獣人に追い散らされているわね」
「当然ですよ。彼らは戦士でも騎士でもありません。鋤や鍬で畑を耕す百姓なのですから」
革命軍と獣人の戦闘は収束し、獣人は敗走する革命軍への追撃を止め、あちこちで勝利の雄叫びを揚げ始めた。
エリシスは魔法を使う機会が来るのを待っていた。
「・・・そろそろね。リリー、久々に私の魔法を見せてあげる」
「はい」
エリシスは両手を広げ、魔法の詠唱を始めた。
「Против Божьего пути, На дне подземного мираГолодать вечноРасскажи душу погибшим」
(神の道に背き冥府の底で永遠に餓え苦しむ亡者の魂に告げる)
エリシスの足元に一つ、そして頭上に一定間隔で巨大な魔法陣が10個現れる。
リリーが驚いて口に出す。
「ま、魔法陣が十個!? 」
エリシスは詠唱を続ける。
「Я завернут в сыновней издевательстве,В ловушке во тьме преступного мира,Мертвые души」
(穢れし瘴気に包まれ、冥府の闇に囚われし、亡者の魂達よ)
更にエリシスの四方に縦の魔法陣が現れる。
それを見たリリーは驚愕する。
「これは!? 積層型立体魔法陣!! それもこんなに大きなものを!」
エリシスは詠唱を続ける。
「Я помилую тебя, Жертва」
(我、汝等を憐れみ、贄を捧ぐ者なり)
リリーが周囲を見渡す。
「星が消えた? 月が??」
夜空から星が消えていき、満月は月食のように段々と欠けていく。
エリシスは詠唱を続ける。
「В обмен на ужин предлагается, Ответить на мой вызов」
(捧ぐ晩餐と引き換えに、我が召喚に応えよ)
リリーが気が付いたように呟く。
「これは! 次元牢獄!?」
エリシスは詠唱を続ける。
「Заказ привратника на основании договора с Hades」
(冥王との契約に基づき、門番に命ずる)
「открытый! ! Врата ада! !」
(開け!! 地獄の門!!)
「Dicata mortuorum Cenam inferis!!」
(亡者へ捧ぐ冥界の晩餐!!)
エリシスが魔法の詠唱を終えると、最上位の魔法陣が紫色の光を放つ。
エリシスの四方の魔法陣が東西南北それぞれの方向へかなりの距離を飛び、それらは停止すると、同じように紫色の光を放つ。
四方の魔法陣は、それぞれ巨大な結界を作り、エリシスの頭上の最上位の魔法陣と箱状に繋がる。
五つの魔法陣は、『次元牢獄』と呼ばれる巨大な四角い結界空間を作りあげた。
『次元牢獄』の中は、星の光は無く、天井には満月の中に黒い穴が開いているように見える月があり、僅かな明かりとして暗黒の地表を照らしている。
地上には、『次元牢獄』により大勢の獣人が捕らえられていた。
驚いているリリーにエリシスが微笑み掛ける。
「これからよ」
地面に無数の黒い穴が空く。
黒い穴からは、地獄の瘴気と共に沢山の餓鬼魂が現れた。
口だけがある、黒い大きなナメクジのような姿の餓鬼魂は、手当たり次第に何でも食べ始める。
獣人も、草も、木も、人も、獣も、虫も。
『次元牢獄』の中は、餓鬼魂の餌場となった。
獣人達が断末魔の悲鳴を上げながら餓鬼魂に食べられていく様子を、エリシスはサディスティックな微笑みを浮かべて、リリーは無表情に空から眺めていた。
エリシスがリリーに話し掛ける。
「これは『次元牢獄』を作り、その中を地獄と繋いで、捕らえたもの全てを餓鬼魂に食べさせるという魔法よ」
「強烈ですね」
「餓鬼魂が纏う地獄の瘴気が大地を汚染させるのと、次元の歪みから混沌が出来るので『禁呪』とされているの」
「『禁呪』なのですね・・・」
「そろそろね」
そう言うとエリシスは、胸の前で両手を合わせるように叩くと、両手で何かを下に下げる仕草をする。
すると巨大な『次元牢獄』の空間は、ゆっくりと真っ黒な地面に吸い込まれていった。
『次元牢獄』が全て消え去った後、地表には何も残っていなかった。
所々に煙のように地獄の瘴気が立ち上っているだけであった。
エリシスとリリーは、空から地面に降り立つ。
リリーが唖然として思わず言葉にする。
「凄い・・・。まさか、軍隊一つを丸ごと消滅させるとは・・・」
エリシスは屈託なく笑う。
「凄いでしょ? 綺麗サッパリ片付いたわ」
リリーが右手を顎に当て、考える仕草をしてエリシスに尋ねる。
「ところで、エリシス。何もかも餓鬼魂に食べさせてしまって、どうやって獣人の毛皮を入手するのですか? 獣人の肉どころか、骨も皮も残っていないようですが」
エリシスはハッとして、気不味そうにリリーに答える。
「リリー。そういう事は早く言わなくてはダメよ」
「はい」
「獣人の巣穴に行ってみましょう。一匹くらい残っているでしょ」
「判りました」
二人は獣人の巣穴へと向かって行った。
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