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第六章 敗走
第五十五話 老兵出撃
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--ルードシュタット侯爵領 ルードシュタット
ナナイの実家であるルードシュタット家は、広大な領地を持つ帝国最大にして最高位の貴族である。
代々の侯爵が住居にするその居城は、皇宮に匹敵する大きさと荘厳さを持つ宮殿であった。
荘厳な宮殿の廊下を足早に老執事が歩いていく。
老執事は、ルードシュタット家に仕える家臣達の控え室に入ると、大声で怒鳴り散らした。
「お前達!お嬢様が行方不明になったことを、何故、儂に報告せんのだ!?」
メイドや使用人達が怯えるように老執事を見る中、若い執事が老執事に答える。
「だって、パーシヴァル様に知らせたら、絶対に『お嬢様を探しに行く』って、言い出して聞かないじゃないですか」
老執事パーシヴァルは、若い執事に大声で言い返した。
「当然だ!!」
若い執事が言い訳する。
「お嬢様達の部隊と列兵団は、十万の大軍に攻撃されて壊滅したという話ですよ? けど、お嬢様は聖騎士ですから、そう簡単にやられたりはしないでしょうし・・・」
「だったら、尚更、救出に行くべきだろう!! この大馬鹿者が!! ・・・どうして、お前はいつもそうなのだ? ヤマタン!?」
ヤマタンと呼ばれた若い執事は、渋々、了承する。
「判りました」
パーシヴァルはヤマタンに指示を出した。
「直ぐにメオスへ飛ぶぞ! 飛空艇を用意しろ! お前も来い!!」
「ええっ!? 僕も行くんですか!?」
「当然だ!」
「・・・判りました」
パーシヴァルとヤマタンは格納庫へ向かう。
格納庫には、黒と銀に塗装され、曲面を多用した流線型の飛空艇があった。
試製迎撃飛空艇「戦闘隼」
魔導発動機 四機搭載
複座式 X翼機
主砲 カロネード砲 四門搭載
戦闘隼は、帝都防空のため『一撃離脱』という設計思想で開発された試作迎撃飛空艇である。
翼にX翼を採用しているため高い機動性を誇るが、そのトリッキーな飛行性能のため、パーシヴァル以外に乗りこなせるパイロットがおらず、一機だけ試作された迎撃用飛空艇である。
機首に装備された四門のカロネード砲は、それぞれ一発だけ炸裂弾を装填しており、並の飛空艇や飛行船ならば一斉射で撃沈できるほどの火力を持っていた。
パーシヴァルが帝国軍を定年で退役した時に、帝国軍から記念に贈られた機体であった。
パーシヴァルは機体を第二の勤め先であるルードシュタット家の格納庫に置いていた。
機体のノーズには、黒地に白銀の戦乙女の紋章、ルードシュタット家の紋章が大きく描かれている。
飛行服に着替えたパーシヴァルとヤマタンが飛空艇に乗り込む。
パーシヴァルはついて来た使用人に言伝する。
「くれぐれもお館様を頼んだぞ」
「判りました」
使用人はパーシヴァルに深く一礼する。
パーシヴァルは掛け声と共にエンジンの起動ボタンを押した。
「発動機始動!」
エンジンの音が響く
ヤマタンがパーシヴァルに答える。
「は~い。全部、オッケーですよー」
横着するヤマタンをパーシヴァルが叱り飛ばす。
「真面目にやらんか!!!」
「すみません」
ヤマタンは謝ると、両手で自分の頬を二回ほど叩き、真面目な表情になった。
「飛行前点検、開始!」
ヤマタンは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ヤマタンからの報告を受け、パーシヴァルは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「試製迎撃機 戦闘隼、 離陸!!」
パーシヴァルの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
ヤマタンがレバーを倒す。
「戦闘拡張翼、展開!!」
機械音と共に機体の拡張翼が開き、翼がX字の形に開く。
「発進! 出力全開!!」
パーシヴァルは掛け声の後、クラッチを繋ぎスロットルを全開にする。
四機のプロペラは甲高い風切り音を上げ、機体は急発進し、格納庫から滑走路の上を這うように飛び始めた。
やがて、パーシヴァルとヤマタンの乗る戦闘隼は、飛行機雲を作りながら急上昇し、メオス王国を目指して虚空へと消えて行った。
(お嬢様! 待っていて下され!! 今、この老骨がお迎えにあがります!!)
ナナイの実家であるルードシュタット家は、広大な領地を持つ帝国最大にして最高位の貴族である。
代々の侯爵が住居にするその居城は、皇宮に匹敵する大きさと荘厳さを持つ宮殿であった。
荘厳な宮殿の廊下を足早に老執事が歩いていく。
老執事は、ルードシュタット家に仕える家臣達の控え室に入ると、大声で怒鳴り散らした。
「お前達!お嬢様が行方不明になったことを、何故、儂に報告せんのだ!?」
メイドや使用人達が怯えるように老執事を見る中、若い執事が老執事に答える。
「だって、パーシヴァル様に知らせたら、絶対に『お嬢様を探しに行く』って、言い出して聞かないじゃないですか」
老執事パーシヴァルは、若い執事に大声で言い返した。
「当然だ!!」
若い執事が言い訳する。
「お嬢様達の部隊と列兵団は、十万の大軍に攻撃されて壊滅したという話ですよ? けど、お嬢様は聖騎士ですから、そう簡単にやられたりはしないでしょうし・・・」
「だったら、尚更、救出に行くべきだろう!! この大馬鹿者が!! ・・・どうして、お前はいつもそうなのだ? ヤマタン!?」
ヤマタンと呼ばれた若い執事は、渋々、了承する。
「判りました」
パーシヴァルはヤマタンに指示を出した。
「直ぐにメオスへ飛ぶぞ! 飛空艇を用意しろ! お前も来い!!」
「ええっ!? 僕も行くんですか!?」
「当然だ!」
「・・・判りました」
パーシヴァルとヤマタンは格納庫へ向かう。
格納庫には、黒と銀に塗装され、曲面を多用した流線型の飛空艇があった。
試製迎撃飛空艇「戦闘隼」
魔導発動機 四機搭載
複座式 X翼機
主砲 カロネード砲 四門搭載
戦闘隼は、帝都防空のため『一撃離脱』という設計思想で開発された試作迎撃飛空艇である。
翼にX翼を採用しているため高い機動性を誇るが、そのトリッキーな飛行性能のため、パーシヴァル以外に乗りこなせるパイロットがおらず、一機だけ試作された迎撃用飛空艇である。
機首に装備された四門のカロネード砲は、それぞれ一発だけ炸裂弾を装填しており、並の飛空艇や飛行船ならば一斉射で撃沈できるほどの火力を持っていた。
パーシヴァルが帝国軍を定年で退役した時に、帝国軍から記念に贈られた機体であった。
パーシヴァルは機体を第二の勤め先であるルードシュタット家の格納庫に置いていた。
機体のノーズには、黒地に白銀の戦乙女の紋章、ルードシュタット家の紋章が大きく描かれている。
飛行服に着替えたパーシヴァルとヤマタンが飛空艇に乗り込む。
パーシヴァルはついて来た使用人に言伝する。
「くれぐれもお館様を頼んだぞ」
「判りました」
使用人はパーシヴァルに深く一礼する。
パーシヴァルは掛け声と共にエンジンの起動ボタンを押した。
「発動機始動!」
エンジンの音が響く
ヤマタンがパーシヴァルに答える。
「は~い。全部、オッケーですよー」
横着するヤマタンをパーシヴァルが叱り飛ばす。
「真面目にやらんか!!!」
「すみません」
ヤマタンは謝ると、両手で自分の頬を二回ほど叩き、真面目な表情になった。
「飛行前点検、開始!」
ヤマタンは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ヤマタンからの報告を受け、パーシヴァルは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「試製迎撃機 戦闘隼、 離陸!!」
パーシヴァルの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
ヤマタンがレバーを倒す。
「戦闘拡張翼、展開!!」
機械音と共に機体の拡張翼が開き、翼がX字の形に開く。
「発進! 出力全開!!」
パーシヴァルは掛け声の後、クラッチを繋ぎスロットルを全開にする。
四機のプロペラは甲高い風切り音を上げ、機体は急発進し、格納庫から滑走路の上を這うように飛び始めた。
やがて、パーシヴァルとヤマタンの乗る戦闘隼は、飛行機雲を作りながら急上昇し、メオス王国を目指して虚空へと消えて行った。
(お嬢様! 待っていて下され!! 今、この老骨がお迎えにあがります!!)
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