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第二章 士官学校

第九話 飛空艇

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 士官学校での授業は、一般教養から剣術、騎乗、魔法、歩兵戦闘など必修科目と選択科目で幅広く行われた。

 ラインハルトは全科目でトップの成績であり、次いでナナイだった。

 ジカイラとヒナは実技は得意だが座学が苦手なタイプで、ハリッシュは反対に実技は苦手だが座学は得意なタイプであった。

 ティナとクリシュナは「中の上」くらい。ケニーは平均的な成績であった。

 今日は飛空艇の操縦訓練であった。

練習用飛空艇「コンプテタ」
魔導発動機二機搭載
複座式ティルトローター機

 この世界の飛空艇は、重力を浮遊水晶(フローティングクリスタル)による魔法の浮力によって相殺し、プロペラの推力によって飛行する。

 操縦はパイロットとナビゲーターの二人一組で行い、状況によって交代することが一般的であった。

 教官が大声を張り上げる。

「今日はの結晶である飛空艇の飛行訓練だ。」

 ジカイラが教官の説明を聞き、ラインハルトに耳打ちする。

じゃなくてだろ? アイツら帝国が開発したものをパクって、とぼけているんだぜ。」

 ジカイラの批判は正しかった。

 軍事大国であったバレンシュテット帝国は、魔法科学を発展させアスカニア大陸において「頭一つ飛び抜けた存在」となり、中世レベルの文明しか持たない諸外国を圧倒していた。

 革命後、革命政府は共に革命を主導した知識階級の者たちを粛清、自分たちの権力基盤を強固にすることに執心。革命を嫌った帝国の優秀な技術者たちは野に下ってしまった。

 その結果、革命政府支配圏の文明レベルは、中世に逆戻りしつつあった。

 ラインハルトとナナイは飛空艇に乗り込んだ。

「座学どおりやれば大丈夫だよ。」

「ええ。」

 ラインハルトは緊張気味のナナイを気遣って声を掛けた。

発動機始動モータリングスタート!」

 ラインハルトは掛け声と共にエンジンの起動ボタンを押した。

 エンジンの音が響く。

 ナナイが続く。

飛行前点検プリフライトチェック、開始(スタート)!」

 ナナイは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。

発動機エンジン航法計器エアーデータ浮遊水晶クリスタル降着装置ギア昇降舵フラップ全て異常無しオールグリーン!」

 ナナイからの報告を受け、ラインハルトは浮遊フローティング水晶クリスタルに魔力を加えるバルブを開く。

「ユニコーン01ゼロワン離陸テイクオフ!」

 ラインハルトの声の後、大きな団扇うちわを扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。

発進ゴー!」

 ラインハルトは掛け声の後、クラッチをゆっくりと繋ぎスロットルを徐々に開ける。

 プロペラの回転数が上がり風切り音が大きくなると、機体は徐々に上昇し始めた。 







 ナナイは地上を見た。

  思わず感嘆の声が漏れる。

「綺麗。」

 眼下には士官学校と、その周囲の田園風景。

 遠くに港があり、海が広がっていた。

「視界、良好。西北西、微風。異常無し。」

  ラインハルトの声が伝声管を伝って聞こえてくる。

  僅かな風がナナイの顔を撫でる。

 ナナイは空を見上げた。

 太陽。

 そして、はるか上空を小さな雲が流れていく。

 (空がこんなに広いなんて。)

 空にナナイを縛りつけるものは何も無い。

 ラインハルトと一緒に何処までも飛べる気がした。

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