9 / 114
第二章 士官学校
第九話 飛空艇
しおりを挟む
士官学校での授業は、一般教養から剣術、騎乗、魔法、歩兵戦闘など必修科目と選択科目で幅広く行われた。
ラインハルトは全科目でトップの成績であり、次いでナナイだった。
ジカイラとヒナは実技は得意だが座学が苦手なタイプで、ハリッシュは反対に実技は苦手だが座学は得意なタイプであった。
ティナとクリシュナは「中の上」くらい。ケニーは平均的な成績であった。
今日は飛空艇の操縦訓練であった。
練習用飛空艇「コンプテタ」
魔導発動機二機搭載
複座式ティルトローター機
この世界の飛空艇は、重力を浮遊水晶(フローティングクリスタル)による魔法の浮力によって相殺し、プロペラの推力によって飛行する。
操縦はパイロットとナビゲーターの二人一組で行い、状況によって交代することが一般的であった。
教官が大声を張り上げる。
「今日は共和国科学の結晶である飛空艇の飛行訓練だ。」
ジカイラが教官の説明を聞き、ラインハルトに耳打ちする。
「共和国科学じゃなくて帝国科学だろ? アイツら帝国が開発したものをパクって、とぼけているんだぜ。」
ジカイラの批判は正しかった。
軍事大国であったバレンシュテット帝国は、魔法科学を発展させアスカニア大陸において「頭一つ飛び抜けた存在」となり、中世レベルの文明しか持たない諸外国を圧倒していた。
革命後、革命政府は共に革命を主導した知識階級の者たちを粛清、自分たちの権力基盤を強固にすることに執心。革命を嫌った帝国の優秀な技術者たちは野に下ってしまった。
その結果、革命政府支配圏の文明レベルは、中世に逆戻りしつつあった。
ラインハルトとナナイは飛空艇に乗り込んだ。
「座学どおりやれば大丈夫だよ。」
「ええ。」
ラインハルトは緊張気味のナナイを気遣って声を掛けた。
「発動機始動!」
ラインハルトは掛け声と共にエンジンの起動ボタンを押した。
エンジンの音が響く。
ナナイが続く。
「飛行前点検、開始(スタート)!」
ナナイは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ナナイからの報告を受け、ラインハルトは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン01、離陸!」
ラインハルトの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「発進!」
ラインハルトは掛け声の後、クラッチをゆっくりと繋ぎスロットルを徐々に開ける。
プロペラの回転数が上がり風切り音が大きくなると、機体は徐々に上昇し始めた。
ナナイは地上を見た。
思わず感嘆の声が漏れる。
「綺麗。」
眼下には士官学校と、その周囲の田園風景。
遠くに港があり、海が広がっていた。
「視界、良好。西北西、微風。異常無し。」
ラインハルトの声が伝声管を伝って聞こえてくる。
僅かな風がナナイの顔を撫でる。
ナナイは空を見上げた。
太陽。
そして、はるか上空を小さな雲が流れていく。
(空がこんなに広いなんて。)
空にナナイを縛りつけるものは何も無い。
ラインハルトと一緒に何処までも飛べる気がした。
ラインハルトは全科目でトップの成績であり、次いでナナイだった。
ジカイラとヒナは実技は得意だが座学が苦手なタイプで、ハリッシュは反対に実技は苦手だが座学は得意なタイプであった。
ティナとクリシュナは「中の上」くらい。ケニーは平均的な成績であった。
今日は飛空艇の操縦訓練であった。
練習用飛空艇「コンプテタ」
魔導発動機二機搭載
複座式ティルトローター機
この世界の飛空艇は、重力を浮遊水晶(フローティングクリスタル)による魔法の浮力によって相殺し、プロペラの推力によって飛行する。
操縦はパイロットとナビゲーターの二人一組で行い、状況によって交代することが一般的であった。
教官が大声を張り上げる。
「今日は共和国科学の結晶である飛空艇の飛行訓練だ。」
ジカイラが教官の説明を聞き、ラインハルトに耳打ちする。
「共和国科学じゃなくて帝国科学だろ? アイツら帝国が開発したものをパクって、とぼけているんだぜ。」
ジカイラの批判は正しかった。
軍事大国であったバレンシュテット帝国は、魔法科学を発展させアスカニア大陸において「頭一つ飛び抜けた存在」となり、中世レベルの文明しか持たない諸外国を圧倒していた。
革命後、革命政府は共に革命を主導した知識階級の者たちを粛清、自分たちの権力基盤を強固にすることに執心。革命を嫌った帝国の優秀な技術者たちは野に下ってしまった。
その結果、革命政府支配圏の文明レベルは、中世に逆戻りしつつあった。
ラインハルトとナナイは飛空艇に乗り込んだ。
「座学どおりやれば大丈夫だよ。」
「ええ。」
ラインハルトは緊張気味のナナイを気遣って声を掛けた。
「発動機始動!」
ラインハルトは掛け声と共にエンジンの起動ボタンを押した。
エンジンの音が響く。
ナナイが続く。
「飛行前点検、開始(スタート)!」
ナナイは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ナナイからの報告を受け、ラインハルトは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン01、離陸!」
ラインハルトの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「発進!」
ラインハルトは掛け声の後、クラッチをゆっくりと繋ぎスロットルを徐々に開ける。
プロペラの回転数が上がり風切り音が大きくなると、機体は徐々に上昇し始めた。
ナナイは地上を見た。
思わず感嘆の声が漏れる。
「綺麗。」
眼下には士官学校と、その周囲の田園風景。
遠くに港があり、海が広がっていた。
「視界、良好。西北西、微風。異常無し。」
ラインハルトの声が伝声管を伝って聞こえてくる。
僅かな風がナナイの顔を撫でる。
ナナイは空を見上げた。
太陽。
そして、はるか上空を小さな雲が流れていく。
(空がこんなに広いなんて。)
空にナナイを縛りつけるものは何も無い。
ラインハルトと一緒に何処までも飛べる気がした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
54
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる