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北方動乱
第六十七話 リベ夜戦 スベリエ軍vsカスパニア軍
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スベリエ軍を率いるオクセンシェルナ伯爵は、ブナレスの北に軍勢を上陸させた。
しかし、スベリエ軍が上陸した軍勢の陣立てを整えている間に、カスパニアはブナレスを放棄して南部の都市リベに向けて海路で撤退。アレク達教導大隊が放棄されたブナレスを占領し、ハロルド王率いるゴズフレズ軍がブナレスに進駐していた。
一日掛かりで陣立てを整えたスベリエ軍は、ブナレスに向けて斥候を走らせたが、ブナレスには既にゴズフレズ軍が進駐して城門にはゴズフレズ国旗が翻っており、スベリエ軍はブナレスを攻撃する事もできず、完全に梯子を外された形になっていた。
スベリエ軍本陣の天幕で、斥候から報告を受けたオクセンシェルナ伯爵は、憤慨して手に持っていたワイングラスを床に投げつける。
「何という事だ! 精強なる我がスベリエ軍が、寡兵のゴズフレズ軍に先を越されるとは! これでは我が軍は、ただの間抜けではないか! 何たる屈辱! 何という恥辱! ぐぬぬぬ!!」
憤慨するオクセンシェルナ伯爵の天幕に、スベリエ本国の王都ガムラ・スタンから伝令がやって来る。
「失礼致します。ガムラ・スタンから陛下の王命をお届けに上がりました」
「フェルディナント陛下が!?」
伝令は、恭しくフェルディナント国王の王命が書かれた羊皮紙の巻物二つをオクセンシェルナ伯爵に手渡す。
オクセンシェルナ伯爵は、手に取った二つの巻物の封印を切り、羊皮紙に綴られた王命に目を通す。
届けられた王命の一巻目は、スベリエ王国が置かれた状況と方針であった。
ジークとカリンが婚約してゴズフレズがスベリエへの従属から離れることと、それによってスベリエがゴズフレズ海峡を失うこと。スベリエ王国は、カスパニア軍を排除してゴズフレズを実効支配し、それから帝国と交渉するという方針が綴られていた。
王命の二巻目は、フェルディナント国王の名前で書かれたカスパニア王国への宣戦布告文と、オクセンシェルナ伯爵に直ちにカスパニア軍を攻撃するように命じる命令書であった。
王命を読んだオクセンシェルナ伯爵は、含み笑いを漏らす。
「くっくっくっ。フェルディナント陛下は、そのようにお考えであるか。・・・承知した」
オクセンシェルナ伯爵が周囲に居る将校達に命令を出す。
「王命である! 全軍、直ちに乗船せよ! リベに集結しつつあるカスパニア軍を急襲する! 急げ!!」
王命が下されたスベリエ軍は、素早く行動を始める。
夕刻には、乗船して渡洋した第一陣がリベ北部に上陸。日没と同時にリベ近郊に集結中のカスパニア軍に対して攻撃を開始する。
その後、スベリエ軍は夜半に第二陣、第三陣と続々とリベ北部に上陸。集結中のカスパニア軍と中世の様式で大規模な戦闘を繰り広げる。
自国の旗を掲げた歩兵、槍兵、騎兵、弓兵が隊列を整えて陣形を組んで突撃し、牛曳き又は馬曳きの大砲は、列を作るように並べて置かれ、次々と砲火を噴き、丸い鋳鉄の砲丸を撃ち込む。
カスパニア軍は、元々、シロヒゲ将軍率いる北部のA軍集団、イナ・トモ将軍率いる中部のB軍集団、アルシエ・ベルサード将軍率いる南部のC軍集団と、三つの軍集団が南部の都市リベに集結して再編中であった。
A軍集団は、ティティスで将軍のシロヒゲがルイーゼに暗殺され、指揮官不在であったことが夜半の急襲による混乱に拍車をかける。
スベリエ軍による夜間の急襲によって当初は混乱したカスパニア軍であったが、王太子カロカロの補佐官であるカスパニア王国王立騎士団の騎士レイドリックが指揮官不在のA軍集団を指揮してカスパニア軍の混乱を立て直すと、両軍の熾烈な戦闘は拮抗する。
ゴズフレズ南部の都市リベ近郊で行われた列強同士の夜戦は、スベリエ軍六万とカスパニア軍九万の軍勢が激突し、明け方まで死闘を繰り広げるが、翌日の日の出には戦闘は小康状態となった。
--リベ北部海岸 スベリエ軍 本陣
スベリエ軍は、上陸したリベ北部の海岸に橋頭保を築いて本陣を設営。
本陣の天幕でスベリエ軍を率いるオクセンシェルナ伯爵は、伝令達から戦況の報告を受けていた。
寄せられる報告に対し、軍人であるオクセンシェルナ伯爵は、ワイングラスを片手に不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふっふ。開戦の初日は、我が方が優勢だったようだな」
スベリエ軍を率いるオクセンシェルナ伯爵は、初戦の優勢と勝利の美酒に酔っていた。
--南部の都市 リベ 市庁舎 カスパニア軍 本陣
市長室にカスパニアの王太子カロカロと三つの軍集団を率いる司令官が集まっていた。
カロカロは、市長室で三つの軍集団からの報告を苦々しく聞いていた。
「スベリエめ。・・・まさか上陸してくるとはな」
A軍集団を率いるレイドリックが口を開く。
「・・・スベリエ軍の急襲で被害を受けたのは、幸いにも雇入れた傭兵団がほとんどです。正規軍の被害は軽微です」
B軍集団を率いるイナ・トモ将軍も口を開く。
「殿下。レイドリックの言う通りです。魔獣大隊の補給と補充が済めば、上陸してきたスベリエ軍など恐れるに足りません」
C軍集団を率いるアルシエ・ベルサード将軍も口を開く。
「御二方の言う通りです。上陸したスベリエ軍の兵力は、およそ六万。対して、こちらは三個軍集団九万です。それに、先日、殿下が手配したカスパニアが誇る無敵艦隊がこちらへ向かっております。陸でも、海でも、我が方が兵力に余裕があります」
カロカロが答える。
「この戦は、国民も父上も見ておるのだ。これ以上、醜態を晒すような事は、あってはならんぞ」
「「ははっ!」」
奴隷貿易と麻薬貿易を生業とするカスパニア王国は、奴隷の獲得と大陸北方での覇権確立のため、小国であるゴズフレズ王国を侵略していた。
しかし、スベリエ軍が上陸した軍勢の陣立てを整えている間に、カスパニアはブナレスを放棄して南部の都市リベに向けて海路で撤退。アレク達教導大隊が放棄されたブナレスを占領し、ハロルド王率いるゴズフレズ軍がブナレスに進駐していた。
一日掛かりで陣立てを整えたスベリエ軍は、ブナレスに向けて斥候を走らせたが、ブナレスには既にゴズフレズ軍が進駐して城門にはゴズフレズ国旗が翻っており、スベリエ軍はブナレスを攻撃する事もできず、完全に梯子を外された形になっていた。
スベリエ軍本陣の天幕で、斥候から報告を受けたオクセンシェルナ伯爵は、憤慨して手に持っていたワイングラスを床に投げつける。
「何という事だ! 精強なる我がスベリエ軍が、寡兵のゴズフレズ軍に先を越されるとは! これでは我が軍は、ただの間抜けではないか! 何たる屈辱! 何という恥辱! ぐぬぬぬ!!」
憤慨するオクセンシェルナ伯爵の天幕に、スベリエ本国の王都ガムラ・スタンから伝令がやって来る。
「失礼致します。ガムラ・スタンから陛下の王命をお届けに上がりました」
「フェルディナント陛下が!?」
伝令は、恭しくフェルディナント国王の王命が書かれた羊皮紙の巻物二つをオクセンシェルナ伯爵に手渡す。
オクセンシェルナ伯爵は、手に取った二つの巻物の封印を切り、羊皮紙に綴られた王命に目を通す。
届けられた王命の一巻目は、スベリエ王国が置かれた状況と方針であった。
ジークとカリンが婚約してゴズフレズがスベリエへの従属から離れることと、それによってスベリエがゴズフレズ海峡を失うこと。スベリエ王国は、カスパニア軍を排除してゴズフレズを実効支配し、それから帝国と交渉するという方針が綴られていた。
王命の二巻目は、フェルディナント国王の名前で書かれたカスパニア王国への宣戦布告文と、オクセンシェルナ伯爵に直ちにカスパニア軍を攻撃するように命じる命令書であった。
王命を読んだオクセンシェルナ伯爵は、含み笑いを漏らす。
「くっくっくっ。フェルディナント陛下は、そのようにお考えであるか。・・・承知した」
オクセンシェルナ伯爵が周囲に居る将校達に命令を出す。
「王命である! 全軍、直ちに乗船せよ! リベに集結しつつあるカスパニア軍を急襲する! 急げ!!」
王命が下されたスベリエ軍は、素早く行動を始める。
夕刻には、乗船して渡洋した第一陣がリベ北部に上陸。日没と同時にリベ近郊に集結中のカスパニア軍に対して攻撃を開始する。
その後、スベリエ軍は夜半に第二陣、第三陣と続々とリベ北部に上陸。集結中のカスパニア軍と中世の様式で大規模な戦闘を繰り広げる。
自国の旗を掲げた歩兵、槍兵、騎兵、弓兵が隊列を整えて陣形を組んで突撃し、牛曳き又は馬曳きの大砲は、列を作るように並べて置かれ、次々と砲火を噴き、丸い鋳鉄の砲丸を撃ち込む。
カスパニア軍は、元々、シロヒゲ将軍率いる北部のA軍集団、イナ・トモ将軍率いる中部のB軍集団、アルシエ・ベルサード将軍率いる南部のC軍集団と、三つの軍集団が南部の都市リベに集結して再編中であった。
A軍集団は、ティティスで将軍のシロヒゲがルイーゼに暗殺され、指揮官不在であったことが夜半の急襲による混乱に拍車をかける。
スベリエ軍による夜間の急襲によって当初は混乱したカスパニア軍であったが、王太子カロカロの補佐官であるカスパニア王国王立騎士団の騎士レイドリックが指揮官不在のA軍集団を指揮してカスパニア軍の混乱を立て直すと、両軍の熾烈な戦闘は拮抗する。
ゴズフレズ南部の都市リベ近郊で行われた列強同士の夜戦は、スベリエ軍六万とカスパニア軍九万の軍勢が激突し、明け方まで死闘を繰り広げるが、翌日の日の出には戦闘は小康状態となった。
--リベ北部海岸 スベリエ軍 本陣
スベリエ軍は、上陸したリベ北部の海岸に橋頭保を築いて本陣を設営。
本陣の天幕でスベリエ軍を率いるオクセンシェルナ伯爵は、伝令達から戦況の報告を受けていた。
寄せられる報告に対し、軍人であるオクセンシェルナ伯爵は、ワイングラスを片手に不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふっふ。開戦の初日は、我が方が優勢だったようだな」
スベリエ軍を率いるオクセンシェルナ伯爵は、初戦の優勢と勝利の美酒に酔っていた。
--南部の都市 リベ 市庁舎 カスパニア軍 本陣
市長室にカスパニアの王太子カロカロと三つの軍集団を率いる司令官が集まっていた。
カロカロは、市長室で三つの軍集団からの報告を苦々しく聞いていた。
「スベリエめ。・・・まさか上陸してくるとはな」
A軍集団を率いるレイドリックが口を開く。
「・・・スベリエ軍の急襲で被害を受けたのは、幸いにも雇入れた傭兵団がほとんどです。正規軍の被害は軽微です」
B軍集団を率いるイナ・トモ将軍も口を開く。
「殿下。レイドリックの言う通りです。魔獣大隊の補給と補充が済めば、上陸してきたスベリエ軍など恐れるに足りません」
C軍集団を率いるアルシエ・ベルサード将軍も口を開く。
「御二方の言う通りです。上陸したスベリエ軍の兵力は、およそ六万。対して、こちらは三個軍集団九万です。それに、先日、殿下が手配したカスパニアが誇る無敵艦隊がこちらへ向かっております。陸でも、海でも、我が方が兵力に余裕があります」
カロカロが答える。
「この戦は、国民も父上も見ておるのだ。これ以上、醜態を晒すような事は、あってはならんぞ」
「「ははっ!」」
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