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北方動乱

第十二話 人狩りとの戦闘

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 ナタリーの魔法で仲間が火達磨になった人狩りの集団が狼狽える。

「何だ? あのガキども??」

「二人やられたぞ!!」

「魔導師が居るのか?」

 アレクは、狼狽える人狩りの一人に向かって、大上段から長剣ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを振り下ろす。

 淡く青白く輝く魔力が込められた刀身は、人狩りの一人を左の肩口から右の脇腹まで容易く一刀両断する。

 アレクは返す刀でもう一人の人狩りに斬り付けると、その首を斬り飛ばした。

 皮鎧ごと人間を容易く切り裂くゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの切れ味にアレクは驚く。

(凄い! まるで藁の束を斬っているようだ!!) 

 三人目の人狩りが手にしている棍棒でアレクに殴り掛る。

 アレクには、必死の形相で殴り掛って来る三人目の人狩りの動きが、非常にゆっくりしたものに見える。

(これが父上や兄上に『』。上級騎士パラディンのスキル『見切り』の力! ・・・まるで『コマ送りの寸劇』を見ているようだ)

 アレクは、振り下ろされてきた棍棒の一撃を避けると、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーで人狩りの首を斬り飛ばす。

 アレクは、近接戦最強と言われる上級職である上級騎士パラディンになった自分の力と、父ラインハルトから贈られたゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの力を改めて認識する。

(いける! いけるぞ! 相手が何人居ようと、全く負ける気がしない!!)

 新手の人狩りが物陰から現れ、アレクの後ろに回り込むと、ルイーゼがその前に立ち塞がる。

 アレクの背中は、ルイーゼが守っていた。

 突然、目の前に現れたルイーゼに人狩りが驚愕する。

「なっ!?」

 両手に手甲を装備しているルイーゼは、右手の手甲の爪を人狩りの顔に突き立てると、一気に腹まで右手を振り下ろす。

 ルイーゼの手甲から伸びる四本のミスリルの刃が人狩りの顔から胴体まで、縦四列に血飛沫を上げながら切り裂く。

 アレクとルイーゼは、次々と人狩り達を斬り伏せて突き進み、ユニコーン小隊の面々が先陣を切るアレクに続く。
 
「うぉおおお!!」

 アルは雄たけびを上げながら斧槍ハルバードを水平に振るい、二人の人狩りを斬り伏せると、傍らでトゥルムも三叉槍トライデントで人狩りを倒していた。 

「おりゃあああ!!」

 エルザも両手剣を振るい、ナディアもレイピアの派手な立ち回りで人狩り達を次々と斬り伏せていく。

 人狩りの集団がビキニアーマーで肌の露出の多いエルザと、クロース・アーマーのスリットから太腿が見え、裾をはだけて黒の下着をチラつかせながら戦うナディアに目を止める。
 
「女!?」

「女だ!!」

「へへ・・・。獣人ビーストマンの猫女とエルフの女だ! 捕まえろ!」

「捕まえたら、オレが最初だぞ!!」

「咥えさせるか? 突っ込むか?」

「早い者勝ちさ!!」

 下卑た笑みを顔に浮かべた人狩りの集団がエルザとナディアに群がって来る。

 戦いながらエルザがナディアに話し掛ける。

「ちょっと! なんでコイツら、私達に群がって来るの!?」

「私と貴女あなたのファンだからでしょ! ・・・エルザ、コイツらに捕まったら犯されるわよ! 本気出しなさい!!」

「ユニコーンの獣耳けもみみアイドル・エルザちゃんの、身も心もおっ●いもアレクのものよ! お前らなんて、夜のオカズにもなってあげないんだから!!」

 ナディアが人狩りに手をかざして精霊魔法を唱える。

戦乙女のヴァルキリーズ・戦槍ジャベリン!!」

 ナディアの掌の先に三つの光の玉が現れると、それらは光の矢に形を変え、人狩りの胸を貫く。

「キェエエエ!!」

 ドミトリーが連続で旋風脚を放ち、エルザとナディアに群がる人狩り達をなぎ倒していく。

「婦女子を狙うとは、卑怯千万! 拙僧の鉄拳で成敗してくれるわ!!」

 アレク達の最後尾を進むナタリーに、物陰に潜んでいた二人の人狩り達が襲い掛かる。

「おっと! 上玉が居るじゃねぇか!!」

「へへ。裸に剥いて楽しもうぜ」

「きゃあ!」

 ナタリーの悲鳴を聞いたアルは、ナタリーに襲い掛かる人狩りに向けて斧槍ハルバートを持ち替えて投擲すると、海賊剣カトラスを抜いてナタリーの元に駆け寄る。

「ナタリー!!」

 アルが投擲した斧槍ハルバートが人狩りの一人の胸に深々と突き刺さる。

 アルは、ナタリーを背に庇うように人狩りとナタリーの間に割って入ると、手にしている海賊剣カトラスで人狩りに斬り付ける。

「テメェ!!」

 人狩りは、アルの海賊剣カトラスを剣で受け止める。

「ガキが! 邪魔だ!!」

 アルが傍に来たことで気を取り直したナタリーは、人狩りに向けて手をかざすと、魔法を唱える。

火炎球ファイヤー・ボール!!」

 ナタリーの火炎球ファイヤー・ボールが人狩りを直撃し、人狩りは炎に包まれる。

「がぁああああ!!」

 アルが炎に包まれた人狩りの胴体に海賊剣カトラスを突き刺して止めを刺す。

 人狩りを倒したアルは、ナタリーを小脇に抱き抱えると、その身を案じる。

「ナタリー、大丈夫かい?」

「ありがとう、アル。大丈夫」

 アルとナタリーの様子を見たナディアとエルザが文句を言う。

 群がって来る人狩りと剣戟を行いながらナディアが口を開く。

「ちょっと! 二人とも!!」

 ナディアと同じようにエルザも群がって来る人狩りと剣戟を行いながら口を開く。

「乳繰り合ってないで、こっち手伝ってよ!!」




 民家を略奪していた人狩りの一人が、アレク達が戦闘している屋外の騒音を聞きつけ、家屋から出てきて仲間に尋ねる。

「何だ? 何かあったのか?」

「襲撃らしい」

「ゴズフレズ軍か!?」

 くだんの人狩りが戦闘しているアレク達を見て驚く。

 次々に彼らの仲間の人狩りを斬り伏せる先頭の騎士は、淡い青白い光を放つ魔法の長剣を振るい、ミスリルの騎士鎧を着こんでいる。

「ミスリルの騎士鎧に魔法の長剣だと!? 貧乏臭いゴズフレズの軍じゃない! あれは帝国軍の部隊じゃないのか??」

「帝国軍!?」

 バレンシュテット帝国皇帝ラインハルトは、帝国内の奴隷制度を廃止して奴隷貿易を禁止し、違反者は容赦無く死刑にしていた。

 帝国軍は、その皇帝の手先であった。

 人狩りや奴隷商人たちにとって、皇帝と帝国軍は恐怖の対象であり、最悪の相手であった。

 彼ら『人狩り』は奴隷貿易によって、そこらの野盗より金回りが良い分、質の良い装備をしており、野盗より戦力的に強力ではあるが、軍隊の装備や練度、戦力には全く及ばないものであった。




 アレク達が帝国軍の部隊だという話が村を襲っている人狩り達の間に広がり、人狩り達は浮き足立ち、我先に村から逃げ出し始める。

 アレクは、両腕を切り落とした人狩りの一人を捕まえると尋問する。

「お前達の首領はどこだ!? どこに居る? 捕まえた人々を解放しろ!!」

「首領は村の酒場だ! 頼む! 助けてくれ!!」

 アレクは捕まえた人狩りの喉に長剣を突き立てると、胴体を蹴り倒して人狩りの死体から長剣を引き抜く。 

 アレクが小隊に号令を掛ける。

「人狩りの首領は、村の酒場だ! みんな、行くぞ!!」

「「おおっ!!」

 


 村の酒場の入り口前にアレク達が集まる。

 アルがエルザとナディアに向かって軽口を叩く。

「お前ら、随分と人狩りの奴らにモテていたんじゃないの?」

 アルの軽口にナディアが不満気に答える。

「あんな連中、私のタイプじゃないわ!」

 エルザもナディアに続く。

「私だってそうよ! 私は、アレクと『』はするけど、不特定多数と『』はしないの!!」

 アルがエルザをからかう。

「お前、いつも発情しているのに。そうなのか?」

 エルザがムキになって答える。

「私は、清純派の獣耳けもみみアイドルなの! あんなにたくさん相手にしたら、あそこがガバガバになっちゃうじゃない!!」

 アルとエルザのやり取りを聞いていたアレクが二人をたしなめる。

「作戦中だ。その辺にしておけよ。・・・酒場の中に踏み込むぞ!!」

 アレク達ユニコーン小隊は、アレクを先頭に村の酒場の入り口から中に踏み込む。






 夕暮れが近くなった薄暮時の酒場の中は、薄暗くなっており、アレク達の耳に女の悲鳴とすすり泣きが聞こえてくる。

 酒場の中には、人狩りの首領と幹部達が数人おり、捕まえた村の若い女の子達を全裸にして性的暴行を加えていた最中であった。

 酒場の片隅には、既に彼等によって『用済み』となった女の子達が集められ、うずくまって泣いていたり、愕然として両腕で胸を隠す様に自分の両腕を掴んだまま、床の上に座り込んでいた。

 反対側には、これから彼等によって犯されるあろう女の子達が集められ、床の上に座らされていた。
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