冥界の愛

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クロノスの予言

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 ミノスのタバコ休憩


 「なぁに、ほんの前の話じゃよ」
カロンの爺さんが昔話をする時は、決まってこのセリフだ。
 どれだけ、長生きするのか、神は生死の域を超えているとは言うが、まさか永遠に不滅な訳はない。
 ハデス様の事も幼子の様に語る時もあるぐらいだから。

それが面白くて、カロンの爺さんがタバコをのんでいると、ついついお相伴に与る。

鬼のいない間に、コッソリと“幼子のハデス君の秘密の部屋”に入った俺は、そのモニターに映るペルセフォーネ様とコレーのママ様の親子の姿を観ながら、カロン爺さんの『ほんの前の話』を思い出していた。




 むかしむかしのはなし


 天界を支配する主は、全ての神の中の王となり、偉大な力とあまた多くの愛を得るだろう。そして、あらゆる多くの子どもを持つだろう。その子孫ゆえに、力を保ち長らえて、幾多の地とあらゆる時代に、その天界の神名と神力を轟かせる事になるだろう。

 反対に、

 冥界の主には、全ての生きている者の最後の主となり、恐ろしい力と、生涯たった一つの愛をだろう。唯一のそれのみを持ち続けていくだろうと。そして、あらゆる地と時代においても、恐れられ忌み嫌われ、荒ぶる凄まじい神力と、神の名は語ることさえ避けられるだろう。



 ある日、クロノスの予言がたった。

まだ世界が混沌としていた頃に、突然にその予言はクロノスの沈黙の口から産まれでた。

何をいつどういう事を示すのか、クロノスの予言はサッパリ意味不明だか、必ず、必ず、当たる。100%だ。それはもはや予言ではなく、先を視てきた者が言う事のようだった。

 クロノスは、時を自在に操ると思われている。だか、俺はそれは違うと思っている。俺が偶然に彼の方と遭遇してしまい、図らずもチカラを分け与えられた形になってしまった。
それから俺は、意思とは関係なくあちこちの時代を飛ばされている。一瞬の時もあれば人として短いも一生を終える時もあった。そんな経験をすると、あのクロノス様もここに肉体を置きながら、あらゆる時代を見て、思わずの落とした独り言が、皆から『クロノスの予言』と言い伝えられた言葉ではないか?と思っている。


その予言の中で使われた「唯一の愛」


そう『✨唯一の愛✨』何て、小っ恥ずかしく乙女な言葉だろう。
世間では、厳ついオッサンの冥界王の姿で通しているのに。あの姿絵とこんなお茶目なフレーズは似合う筈が無いよな。
いっそのこと、もう少しイケオジ系で公表しておけば良かったのに。

まぁだから、死者の国で見かけても誰もハデス様だとは思わないだろう。





興味のある方はぜひ、一度ここに来て一目ご覧下さい。お待ちしております。
もう直ぐ御盆ですから。


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